2番目以降の受信レベルの基地局に接続要求を送信するLTE端末の発明 NECプラットフォームズ

 LTEなどの携帯電話ネットワークで、多くの端末が一斉に移動すると接続要求が衝突したり、接続遅延が増加したりする問題を解決する発明です。

 この発明の通信端末は、受信レベルが2番目以降の所定の順位の基地局に接続要求を送信します。これにより、接続要求が1つの基地局に集中することを回避することができます。

 特許第6050108号 NECプラットフォームズ株式会社
 出願日:2012年12月25日 登録日:2016年12月2日



 ※特許の本の紹介。
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多くの端末が一斉に移動すると接続要求の衝突や接続遅延増の問題

 LTEのような携帯電話ネットワークでは、基地局が端末(スマホ、携帯電話端末など)からの接続要求を受信し、接続要求を送信した端末にUL(上り回線)などのリソースを割り当てます。接続要求の一例はRACH(Random Access Channel)で送信されるランダムアクセスプリアンブルです。

 この接続要求は、端末から基地局へ向かう上り無線リソースを使用します。鉄道車両のような列車で多くのユーザが移動する場合のように、多くの端末が一斉に移動して基地局を切り替える(ハンドオーバする)と、移動先の基地局に一斉に接続要求が送信されることになります。

 一方、上り無線リソースの量には上限があります。そのため、多くの端末が一斉に移動先の1つの基地局に接続要求を送信しようとすると、送信要求の衝突や接続遅延が増大する問題が生じます。

受信レベルが2番目以降の所定の順位の基地局に接続要求を送信

 この発明の通信端末(スマホ、携帯電話端末に相当)は、電波を受信できる基地局のうち、受信レベルが所定の閾値を超える基地局を検出します。

 そして、受信レベルが所定の基地局を超える基地局のうちの2番目以降の所定の順位の受信レベルの基地局に接続要求を送信します。ここで、接続要求の送信先を最も受信レベルが高い基地局とするのではなく、2番目以降の所定の順位の基地局にするのが特徴です。

 最も受信レベルが高い基地局は特定の1つの基地局になります。この基地局には他の通信端末からの接続要求も送信されるので送信遅延や衝突が発生する可能性があります。そこで、2番目以降の所定の順位の基地局に送信することで、接続要求の送信先が分散します。これにより、送信遅延や衝突の可能性を低減し、多くの端末が一斉に接続要求を送信することを可能にします。

 なお、接続要求が衝突したことを検出した位置をリストに保存しておき、リストを参照して、過去に接続要求が衝突した位置である場合には、2番目以降の所定の順位の基地局に接続要求を送信する技術も発明の範囲に含まれています。

【課題】
基地局側に特別な制御を必要とすることなく、端末の動作のみによって短時間で基地局に端末の位置登録を行うための技術を提供する。
【請求項1】
 移動通信ネットワークの基地局との間が無線で接続される第1の接続手段と、
 前記第1の接続手段を、受信したときの強度が2番目以降の所定の順位となる電波を放射する前記基地局に対して接続要求を行うように制御する制御部と、
を備え、
 前記第1の接続手段は、所定の条件が満たされる場合には前記受信する電波の強度が2番目以降に高い前記基地局を選択し、前記所定の条件が満たされない場合には前記受信する電波の強度が最も高い前記基地局を選択し、前記選択された前記基地局に接続することを特徴とする通信端末であって、
 さらに、位置を検出する位置検出手段と、
 前記受信したときの強度が2番目以降の所定の順位となる電波を放射する前記基地局が選択される位置が記載された第1のリストを記憶する第1の記憶手段と、を備え、
 前記第1の接続手段は、
  前記接続要求に対する応答の有無によって前記接続要求の衝突を検出し、前記衝突が検出された場合には、前記衝突が検出された位置を前記第1のリストに登録し、
  現在の前記位置が前記第1のリストに記載された位置から所定の距離内である場合には、前記受信したときの強度が2番目以降の所定の順位となる電波を放射する前記基地局を選択して前記選択された前記基地局に接続することを特徴とする、通信端末。

今日のみどころ

 この発明のポイントは、従来技術であれば最も良いものを選択して送信するところ、2番目以降の所定の順位のものを選択することで送信先を分散させることです。最も良い条件のものを積極的に外して、それ以外のものから選択するということです。

 このパターンの考えはいろいろな技術分野での特許にも応用できそうです。特許アイデアを検討している方は、発明を一歩進めるネタとして覚えておきましょう。