【コラム】D(ディー)を「デー」、T(ティー)を「テー」と読む人が通信業界に多いと私が思う理由

 普通は、"D"を「ディー」、"T"を「ティー」と読むことが多いですが、"D"を「デー」、"T"を「テー」と読む人が通信業界に多いと思います。エイチテーテーピー(HTTP)とか、デービー(DB)とか。

 おじさんくさい?でもなぜなのか。

 情報技術業界の動向と、その中での通信業界の動向とに基づいた、私の考えを以下で紹介します。



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昔ながらの「デー、テー」から「ディー、ティー」へ

 そもそも、科学技術などでは英語由来の外来語が多く入ってきています。昔の日本人は、このような外来語を表現するのに"D"を「デー」、"T"を「テー」と発音していました。小さい「イ」を入れる発音がそれまでなかったので、すでに大人になっていた人は「ディー、ティー」と言えなかったんでしょうね、おそらく。

 私のばあちゃんは、「テーシャツ」、「キャンデー」と言っていました。私のばあちゃんは言っていませんでしたが、女性の下着は「パンテー」だったそうです。

 そのうち、もともとの英語の発音に近い発音にすべく、"D"を「ディー」、"T"を「ティー」と発音するようになってきます。こういう動きは若い世代から始まり、おじさんたちやおじいさんたちは、古い「デー、テー」を使い続けます。

 こうなってくると、昔のように"D"を「デー」などという発音の仕方がかっこ悪い、恥ずかしいという風潮になります。おじさんくさい、じじくさい、といってもいいと思います。

「ディー」、「ティー」だと正しく伝わらない問題

 しかし、"D"を「ディー」などと発音することにすると、電話などで連絡するときに聞き間違いが起こりやすいという問題がでてきます。例えば、話し手が「ディー」と言った場合、聞き手は「イー」なのか、「ビー」なのか、「ピー」なのかわからず、うまく伝わらないということです。

 このような場合、いくら言い直しても伝わらず、例えば「エービーシーディーのディー」みたいにしてなんとか伝えることになるのですが、だいぶ面倒です。

 また、言い直しの機会があればまだましで、聞き間違えたままで受け取られると問題になります。情報が誤って伝わることになるので、ビジネス上でトラブルの原因にもなりえます。そこで、聞き間違いを極力避ける必要があります。

正しく伝えるための「デー」、「テー」

 そこで、口頭で正しく情報を伝えるために、「デー」、「テー」の発音が使われるようになっています(*1)。特に電話だと、相手の声が少しひずんだりするので、この重要性が高かったと想像します。正しく伝えるための一種のノウハウと言えます。

 このようにして、口頭で正しく伝えるために「デー」、「テー」の発音などが使われると考えられます。この問題を認識している人同士であれば恥ずかしくもなく、むしろ当然のように使うことができて便利です。

 これだけなら、通信業界に限らず、外来語が入っているさまざまな業界に共通のことです。

 このような事情に加えて、通信業界特有の事情があると、私は思います。


*1 ただし、「デー」、「テー」の発音は、あくまで電話などで間違いを起こさないための発音なので、それ以外の場面(例えば日常会話)では「ディー」などを使います。

情報技術業界では「デー」が消えかけ、通信業界では残存

 上記のような風潮がある中でも、時代が進み、どんどん若い人が社会に供給されてきます。若い人は、電話で正しく伝えるため、というようなノウハウなんかかまわずに、「ディー」、「ティー」の発音を使い始めます。また、ビジネスシーンで外国人とのやりとりを行う人も昔より増えています。

 その結果、情報技術業界全体的には、「ディー」、「ティー」の発音が優勢になってきていると思います。

 しかし、通信業界はこの流れが遅いと思うのです。情報技術業界全体から見ると、それほど人気というわけでもない分野であるせいか、若い人の供給が少なく、またベテランの人の活躍が大きいので、新陳代謝が遅いのではないでしょうか。新しく入った人も、最初は違和感があるとは思うのですが、「デー」、「テー」と読むんだよとおじさんに教えられ、仕事上のノウハウとして語り継がれていることもあるかもしれません。

 このように、正しく伝えるための「デー」、「テー」の発音が根強く残っているのだと思います。

 "D"を「デー」、"T"を「テー」と読む人が通信業界に多いと私が思う理由はこれです。

通信業界での「デー」「テー」

 通信業界の用語で「デー」や「テー」が使われる言葉は、たくさんありますが、例えば以下のものがあります。

  • HTTP エイチテーテーピー
  • FTP エフテーピー
  • ADSL エーデーエスエル
  • DB デービー

 ちなみに、NTTは「エヌテーテー」とするより、「エヌテッテー」と発音するのがマニアックです。この読み方は、通信業界の中でも、NTTとの関連がある会社の人だけかもしれませんが。特に「ッ」がポイントです。

今日のみどころ

 ビジネスシーンではあえて日常会話と異なる言葉遣いをすることがあります。このような言葉遣いをする理由を自分なりに考えてみるのもおもしろいです。おじさんくさい言い方にも理由があったりしますからね。

コメント

  1. デー男 より:

    NTTはエヌテッテーではなく、一文字でNと言いますよね

    • hezka より:

      ありがとうございます。そうなんですね。
      N一文字は、NECをさすこともありますね。