非接触ICカードを取出しやすく薄いスマホケースの発明 シェリー

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 スライドする2つのプレートから構成されたスマホケースに関する発明です。

 プレートをスライドさせることで非接触ICカードの取り出しが容易にでき、また、電波吸収体により、近くにスマホがあっても非接触ICカードが正常に動作します。また、プレートが薄いため、重量や厚みを抑え、外観の印象を向上します。

 特許第5689520号 株式会社シェリー
 出願日:2013年11月28日 登録日:2015年2月6日



 ※特許の本の紹介。
 特許の申請(出願)をする技術者や研究者が知っておかないといけない特許の知識がわかりやすくまとめられている良著です。

非接触ICカードを取り付けるられるスマホケースは重量や厚みが大きい問題

 リーダライタとの間で電波により電力及び信号を送受信する、Suicaなどの非接触ICカードが普及しています。また、これらの非接触ICカードの機能を持つスマホなどの携帯端末も普及しています。一方、非接触ICカードの機能を持たないスマホもあり、このようなスマホの背面に非接触ICカードを取り付けることで、非接触ICカードの機能を持つスマホのように使用できるようにする背面カバー(スマホケース)があります。

 非接触ICカードを背面に取り付けることができる従来のスマホケースは、重量や厚みがある、持ち運びに不便、ICカードのチャージの際に分解する必要がある、製作費が高価であるなどの問題を有しています。

スライドする2つのプレートにより薄く構成

 この発明の携帯電話機用背面カバーは、2つのプレート(第一プレート、第二プレート)で構成されています。

 第一プレートは、スマホの背面を覆う薄いプレートで、第二プレートを取り付けるための溝が形成されています。第二プレートは、電波吸収体と非接触ICカードを収納する空間とを挟んで、第一プレートの反対側に位置するプレートで、第一プレートの溝にハマる突起が形成されています。

 第二プレートは、第一プレートに対して、ある決まった長さだけスライドしてロック可能なように構成されており、このようにスライドさせることで非接触ICカードの取り出しが容易にできるようになっています。電波吸収体により、近くにスマホがあっても非接触ICカードが正常に動作します。また、プレートが薄いため、重量や厚みを抑え、外観の印象を向上します。

 なお、この発明は、非接触ICカードとリーダライタとの間の電波の伝搬に関するものなので、非接触ICカードの規格には依存しないと考えられます。

 (用語)
 非接触ICカード:リーダ・ライタから送信されるキャリアにより、電磁誘導により電力を供給され、キャリアの変調によりリーダ・ライタと通信を行うカード。通信方式としてNFCが用いられるFeliCaが採用されるのが一例。具体的には、Suica, PASMO, ICOCA, PiTaPaのような交通系ICカード、楽天Edy, WAON等の流通系ICカードがある。

【課題】
実用面、機能面、コスト面の全ての問題を解消すべく、軽量で薄く、カード類を容易に出し入れすることができ、カード類の使用の際に電波の障害なく使用でき、比較的低コストで製造できる携帯電話機用背面カバーを提供する。
【請求項1】
 裏面が携帯電話機の背面を覆うよう装着され、表面に非接触ICカードを収納可能な矩形状スペースを設けた第1プレートと、
 前記矩形状スペースに、第1プレートと前記非接触ICカードとの間に装着される電波吸収体と、
 前記第1プレートに対向するよう係合する第2プレートと、
 前記矩形状スペースの短辺に沿い、且つ前記矩形状スペースを間に挟んで前記第1プレートの前記表面に設けられた一対の溝部と、
 前記一対の溝部に対向する位置で前記第2プレートに設けられた一対の突起部と、を備え、
 前記一対の溝部と前記一対の突起部とを係合させて密閉し、前記第2プレートを前記第1プレートに対して密閉位置から前記短辺に沿って所定長だけスライドさせることにより前記非接触ICカードの着脱を可能とし、
 前記電波吸収体は、前記非接触ICカードと同一又は前記非接触ICカードよりも大きい面積を有する薄膜状の磁性体であって、前記非接触ICカードに記録された情報の読取りのために磁界が印加されたとき、携帯端末から発生する渦電流による反磁界を抑制でき、
 前記第2プレートの各辺は、前記密閉位置にて、前記第1のプレートの各辺の内側に位置することを特徴とする携帯電話機用背面カバー。

今日のみどころ

 このスマホケースは、電波吸収体を備えることでスマホと非接触ICカードとのそれぞれによる電波の送受信を正常動作するようにしながら、それぞれの利便性も損なわないようにするものです。具体的なポイントは、第一プレートと第二プレートとを係合する構造、所定長だけスライドする構造、プレートの各辺の配置などです。

 これらの特徴は、一見、従来にもありそうな構成ですが、これらの効果を上手に説明することで進歩性が認められ、特許が成立したことが審査の書類からわかります。ご興味がある方は、意見書を確認してみてください。進歩性欠如に対する反論の仕方が秀逸です。すばらしい

 この特許の技術が応用されていると思われるiPhone7、iPhone6/6sのケース、アイクレバーiPhoneケース(iPhoneカバー型パスケース) が実際に販売され人気があるようです。デザイン面でもおしゃれだと思います。