近接無線通信を利用した来場検知でアフィリエイト報酬を加算する発明 バリューコマース

 店舗に来場するタイプのアフィリエイトで、店舗に来場したかを判定するには、システム構成が複雑化するなどの問題があります。この問題を解決する発明です。

 この発明のシステムは、非接触ICカードをリーダにかざすことと、特定のURLにアクセスすることだけで、来場したことを判定します。これにより、システム構成を複雑化せずに問題を解決します。

 特許第5210707号 バリューコマース株式会社
 出願日:2008年5月13日 登録日:2013年3月1日



 ※特許の本の紹介。
 特許の申請(出願)をする技術者や研究者が知っておかないといけない特許の知識がわかりやすくまとめられている良著です。

アフィリエイトで店舗に来場したかを判定するシステム構成が複雑化する問題

 インターネットのWebページに掲載した広告がクリックされると報酬がもらえるアフィリエイト広告システムが利用されています。

 アフィリエイトには他にもさまざまな形態があります。例えば、広告主が指定した店舗に実際にユーザが来場することで報酬が得られる形態もあります。

 このような形態のアフィリエイトでは、実際にユーザが来場したか否かを判定することが必要です。従来、ユーザが来場したかの判定は、GPSによって取得した位置情報を用いる方法がありました。しかし、システム構成が複雑化する、位置検出の精度が低いなどの問題がありました。

非接触ICカードの近接無線通信で来場を検出

 この発明では、ユーザが来場すべき場所に近接無線通信を利用した非接触ICカード(例えばFelica)の読み取り装置を配置しておきます。携帯端末には、非接触ICカード機能が搭載されています。

 そして、ユーザが端末上に表示されたWebページの広告をクリックすると、その端末が来場すべき店舗などの情報が端末に提供されます。ユーザが実際にその店舗に来場して非接触ICカードの読み取りが行われると、その店舗にユーザが実際に来場したと認識され、アフィリエイト報酬が加算されます。

 なお、実際に非接触ICカードの読み取りが行われたときには、カードのIDとリーダのIDとを含む特殊なURLが端末に通知されるなどの処理も発明の範囲に含まれています。

 これにより、ユーザは、端末(カード)をリーダにかざし、それにより通知されるURLにアクセスするだけの簡単な操作によって、実際に店舗に来場したことが検出されます。

【課題】
携帯端末ユーザがインターネット上のアフィリエイト広告に基づいて店舗等の指定場所に来場したか否かを、比較的簡単なシステム構成でもって、ユーザ側の操作手順を煩雑にすることなく、高い識別精度で確認することができる携帯アフィリエイト・トラッキングシステムを提供する
【請求項1】
 つぎの事項(11)~(16)により特定されるコンピューター情報処理の方法。
(11)インターネット上のアフィリエイトサーバーが、利用者の携帯端末、広告媒体サイト、広告主サイト、ICカード読取装置(以下、R/W)と連携して実行するコンピューター情報処理の方法であること
(12)前記R/Wは、広告主指定場所に設置されていて、利用者の携帯端末に搭載された非接触式のICカードと通信可能であること
(13)第1プロセスでは、携帯端末が広告掲載サイトにアクセスして広告バナーをクリックした際、携帯端末を広告主サイトにリダイレクトして広告主サイトから携帯端末に前記広告主指定場所に関する情報を送信させるととともに、前記携帯端末のID(以下、端末ID)を前記広告媒体サイトの識別子と前記広告主サイトの識別子およびアクセス日時と対応づけしたデータを第1プロセス記録として保存すること
(14)第2プロセスでは、前記R/Wが利用者の携帯端末のICカードと通信して当該ICカードのID(以下、カードID)を読み取った際、当該カードIDと当該R/WのID(以下、リーダID)とアクセス日時を対応づけしたデータを第2プロセス記録として保存するとともに、当該カードIDと当該リーダIDをパラメータとして付加してなる特定URLを前記R/Wから前記携帯端末に送信させること
(15)第3プロセスでは、前記特定URLを受信した携帯端末がその特定URLにアクセスした際、当該携帯端末の端末IDを前記カードIDおよび前記リーダIDとともに取得し、これら端末IDとカードIDとリーダIDとアクセス日時を対応づけしたデータを第3プロセス記録として保存すること
(16)第4プロセスでは、第3プロセス記録と第2プロセス記録を照合し、カードIDとリーダIDの組み合わせが一致する記録が存在し、かつ、第3プロセス記録のアクセス日時のほうが新しい場合、その第3プロセス記録を妥当な第3プロセス記録として抽出し、この妥当な第3プロセス記録と第1プロセス記録を照合し、当該第3アクセス記録よりアクセス日時が古くて端末IDが一致する第1プロセス記録が存在する場合、当該端末IDの携帯端末の利用者が当該第1プロセス記録中の広告媒体サイトにて前記広告バナーをクリックした後に前記広告主指定場所に来場したものと判定し、この来場判定に基づいて前記広告媒体サイトに対する広告報酬量を更新すること

今日のみどころ

 ユーザが実際に店舗に訪れることで報酬が発生するタイプのアフィリエイトに関する発明です。店舗への来場の検出を、近接無線通信により判定するのがポイントです。近距離でないと通信できないという近距離無線通信の制約を利用した発明といえます。

 いろいろな通信技術について、周波数、電力の大きさ、媒体の種別などの物理的特徴からくる通信の特性などについての利点と欠点を整理しておくといいですね。物理的特徴は自然法則そのものなので、特許性の説明にうまく使うことができます。

 なお、店舗への来場の検出方法がポイントになっています。来場の検出の部分については、以前紹介した、超音波を用いた来場検出の発明と親和性が高そうです。