近くにあるスマホなどの携帯端末へ情報を送信する超音波通信システムに関する発明です。コンビニ等への来店を検知するスマホのアプリ「スマポ」、楽天が提供する「楽天チェック」等に使われている技術です。
ビーコン(超音波発信装置)が超音波を送信し、その超音波をスマホのような携帯端末がマイクにより受信します。ビーコンは、近接する2つの周波数の超音波信号(キャリア)によってデジタル信号を送信します。
これにより、人に認識されないように、また、さまざまな機種の携帯端末のマイクにより受信可能な信号を送信することができます。
特許第5429826号(特開2013-141054) 株式会社スポットライト
出願日:2011年12月28日 登録日:2013年12月13日
携帯端末のマイクの特性など4つの問題
店舗等の特定の領域に存在している携帯端末だけに信号を送信する技術を利用して、ユーザへの情報提供やポイント付与などのサービスが行われています。このような用途では、その場にいる端末だけに信号を受信させるために超音波が利用されます。
しかし、従来の超音波による情報送信では、携帯端末の周波数特性の影響を受けるなど、明細書内に記載された以下の制約1~4があり、実用に向けての課題がありました。
制約1:マイクがもつ周波数特性(携帯端末固有の事情に依存しないプログラム)
制約2:環境雑音、バックグラウンドノイズ(どのような周波数帯の雑音があっても影響されにくい通信の方式)
制約3:ドップラー効果(ドップラー効果を考慮した通信方式)
制約4:利用可能な周波数帯域(人間の可聴域の上限以上、携帯端末が検知できる周波数以下の周波数帯域)
近接する2つの周波数の超音波信号により解決、スマポ・楽天チェック等の来店検知アプリに利用
そこで、本発明の超音波通信システムでは、近接する2つの周波数の超音波信号(キャリア)を送信するようにし、その2つのキャリアの音量レベルの大小によってデジタル信号を送信します。
これにより、(1)マイクの周波数特性に依存せずに、(2)環境雑音に影響されにくく、(3)ドップラー効果の影響を受けにくく、(4)人に不快を感じさせずマイクに取得される、という特徴を有する通信をすることができます。
コンビニ等への来店を検知するスマホのアプリ「スマポ」や、楽天株式会社が提供する「楽天チェック」等により実際に運用されています。
個々の携帯端末のマイクがもつ周波数特性の相違を考慮し、環境雑音の影響や携帯端末自体の所在位置の移動によるドップラー効果の影響も無く、更に、携帯端末の使用者に対して不要な音の聴取による不安感を生じさせることもなく、しかも、簡略構成で優れた通信性能を発揮するようなビーコン及び携帯端末を利用する超音波通信システムを提供する。
【請求項1】
情報提供者側又は店舗側が設けた特定の区画内に設置されて超音波を発振するビーコンと、該区画内に存在する携帯端末との間で超音波による通信を行う超音波通信システムであって、
前記ビーコンは、可聴域外の近接する周波数を有して対となる音量レベルが割り当てられる二つのデジタル信号である、第1キャリア及び第2キャリアを、時間軸上で一方のキャリアが音量レベルの大きなアクティブ領域のときに他方のキャリアは音量レベルが小さい非アクティブ領域となり、第1キャリアと第2キャリアのアクティブ領域が交互となる態様で、第1キャリアと第2キャリアのいずれの非アクティブ領域の音量レベルを共に0よりも大きくして、第1キャリアの音量レベルと第2キャリアの音量レベルとの大小関係に応じて、第1キャリアの音量レベルが第2キャリアの音量レベルよりも大きいときは、0,1のうちの一方を割り当て、第2キャリアの音量レベルが第1キャリアの音量レベルよりも大きいときには、0,1のうちの他方を割り当てることによって、前記情報提供者又は前記店舗の固有識別情報を含む一つのチャンネルの発信情報を出力し、該発信情報をアナログ信号に変換した後に超音波として前記区画内に送出する手段を有し、
前記携帯端末は、携帯マイクと、前記ビーコンから送出された超音波を該携帯マイクにより受信したときに該受信した超音波を電気信号に変換し、該電気信号において第1キャリア及び第2キャリアにより構成される一つのチャンネルを特定したときには、該特定したチャンネルの第1キャリアと第2キャリアとの時間軸上の音量レベルの大小関係に応じて0,1に復調する復調処理を実行して、前記固有識別情報を含む発信情報を前記携帯端末の存在確認用として処理可能に出力する復調処理部とを有すること、
を特徴とする超音波通信システム。
今日のみどころ
スマホの普及と、スマホ向けのサービス形態の多様化に伴って、近くにあるスマホだけに確実に情報を提供する(言い換えれば、遠くのスマホには情報提供しない)技術が求められていました。比較的近距離に存在する端末だけに信号を送信することができる音波(超音波)による通信をベースにして、詳細な課題を解決することで実用に耐え得る技術を生み出したと言えると思います。
なお、この技術を用いて実際に運用されているサービスとして、スポットライト社が提供する「スマポ」、楽天が提供する「楽天チェック」などのスマホの来店検知アプリがあります。
スマホへの場所限定つきの情報提供手段の1つとして確立されていると言えます。楽天チェック等は、超音波通信等を意識せずに通常のアプリのように使えるので、楽天チェックの使い方について悩むことは少ないと思います。使ってみてください。