【特許紹介】地震発生時に入出場したICカードでも地震収束後に通行可否判断できる改札機の特許発明(東芝)

図3

 従来の自動改札機は、地震発生時にドアを開放して利用者を入場または出場させると、入場記録または出場記録がないため、地震収束後に入出場サイクルが正常でなくなる問題がありました。

 この発明の自動改札機は、地震発生時に改札情報を非接触ICカードに書き込み、収束後に改札情報を検出して通行可否を判断します。これにより、地震発生時に入出場したICカードでも地震収束後に通行可否判断できるようになります。

 特許第6147885号 株式会社東芝
 出願日:2016年3月28日(分割の原出願日2012年9月20日) 登録日:2017年5月26日



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地震発生時にドアを開放すると、入場記録がなく入出場サイクルが正常でなくなる問題

 駅の自動改札機は、Suica、Pasmo、Icoca等の非接触ICカードや磁気カードなどにより改札処理をします。利用者がICカードをかざしたり、磁気カードなどを挿入したりすると、ドアを開閉させることで利用者の通行の許可または不許可を制御します。

 従来、自動改札機は、地震などの際には、ドアを開放して利用者の通行を無条件で許可しています。利用者の避難を阻害しないようにするためです。

 しかし、このようにドアを開放するとICカードに出場記録がされないため、入出場サイクルが正常でない状態になります。このような状態になると、その後に地震が収まり自動改札機が通常動作になると、入出場サイクルが正常でないために利用者の通行の制御が適切になされないことがあるという問題がありました。

 例えば、地震が起きて避難のために改札に入場した場合、実際には改札の中にいるのに、入場記録がないという状態になります。そして、地震が収まった後に出場しようとしても入場記録がないために出場できないということが起こります。

地震発生時に緊急改札情報をICカードに書き込む

図4

 この発明では、自動改札機は、地震の発生を検知すると地震対応モードに遷移します。自身の発生の検知は、緊急地震速報の受信によってなされます。

 地震対応モードでは、自動改札機は、ドアを開放して、すべての利用者を無制限に通行できるようにします。また、ICカードがかざされると、ICカードに緊急改札情報を書き込みます。緊急改札情報というのは、通行日時、処理駅、フラグ情報などを含む、比較的小さい情報です。

 そして、地震がおさまり所定時間が経過すると、自動改札機は、通常モードに戻ります。通常モードでは、ICカードなどによって改札処理を行うモードです。

地震収束後に緊急改札情報を検出、入場記録または出場記録がなくても通行可

図9

 また、自動改札機は、通常モードで改札処理を行っているときに、緊急改札情報が書き込まれているか否かを調べます。

 そして、緊急改札情報が書き込まれている場合には、緊急改札情報を書き込んだ駅(処理駅)を乗り継ぎ駅として通行の可否を判断します。地震時にドアを開放したことによって入場記録がなされなかった場合でも、その後に出場できない事態を回避できます。

 このようにすることで、地震が起きたときに利用者の避難経路を確保しながら、地震が収まった後の利用者の利用を妨げないようにすることができます。

【課題】
地震が発生した場合に迅速に利用者を避難させることができる自動改札機および自動改札機の制御方法を提供する。
【請求項1】
 利用者の通行を制御する自動改札機において、
 利用者の通行を制御するためのドアと、
 利用者が提示する乗車券媒体を処理する媒体処理手段と、
 動作モードを通常モードあるいは地震対応モードの何れかに設定する設定手段と、
 前記設定手段により通常モードが設定されている場合、前記媒体処理手段により乗車券媒体から読み取る情報に基づいて通行の可否を判定し、判定結果に応じて前記ドアの開閉を制御する第1の処理手段と、
 前記設定手段により地震対応モードが設定されている場合、前記ドアを開放状態とし、
前記媒体処理手段により利用者が提示する乗車券媒体に処理駅を示す緊急改札情報を記録する第2の処理手段と、
 を有し、
 前記第1の処理手段は、前記媒体処理手段により乗車券媒体から緊急改札情報を読み取った場合、読み取った緊急改札情報が有効であれば、前記緊急改札情報が示す処理駅を乗り継ぎ駅として通行の可否を判定し前記乗車券媒体に記録されている前記緊急改札情報を
無効化する、
自動改札機。

今日のみどころ

 地震などの要因で安全最優先で避難しなければならないときには、自動改札機がドアを開放しますが、それにより不正になった入出場記録を正しく修正するのも大変な手間がかかりますよね。

 そういう手間を解消するのに役立ちそうな発明です。