今回は、商品を補充するシステムに関する発明を紹介します。オフィスグリコの発明です。
従来、「富山の置き薬」方式のような商品の補充のシステムがありましたが、その他の方法がありませんでした。
この発明では、商品ボックスの商品の補充や入れ替えの個数などを決定します。このとき商品をローテーションさせるようにしています。これにより、商品のロスを低減することができます。
「富山の置き薬」方式より他の方法がなかった
従来、「富山の置き薬」方式の商売があります。「富山の置き薬」方式では、各家庭に薬箱を配置し、家庭で薬が消費された場合にその薬の代金の回収と、その薬の補充をします。
「富山の置き薬」方式では、消費された薬と同じ薬を補充するというもので、その他の方法、例えば薬を交換するなどの方法はありませんでした。
商品ボックスの商品の補充や入れ替えの個数などを決定、商品をローテーションさせる
この発明の管理装置では、複数の場所に設置され、商品が入れられる商品ボックスの商品を管理して、商品のロスを低減することが目的です。商品ボックスが置かれる場所の一例はオフィスで、商品の一例はお菓子です。
管理装置は、複数の期間について商品をどの商品ボックスに入れておくかを定義したデータ(商品配置パターン)と、商品配置パターンのローテーションを定義したデータ(商品ローテーション計画データ)を保有しています。
また、管理装置は、販売員が複数の場所を訪問する順序を定義したデータ(訪問計画データ)を保有しています。そして、これらのデータを参照して、販売員が訪問すべき場所と訪問すべき日と、商品ボックスに配置すべき商品の種類と個数とを決定します。
管理装置が決定した商品の種類と個数にしたがって、販売員は、商品の入れ替えや補充を行います。残っている商品をずっとそこに残ったままにしておくのではなく、他の場所にローテーションするので消費される機会を増やすことにつながります。これにより、商品のロスを低減することができます。
明細書には、従業員が空腹時にわざわざ買い出しに行く必要がない便利さや、空腹をがまんして仕事を続けるより効率を上げることができる癒し効果なども記載されていておもしろいです。
置き菓子サービス「オフィスグリコ」の発明
これは、置き菓子サービスの「オフィスグリコ」の特許発明です。
商品が定期的に入れ替わっていくので、利用者はいろいろなお菓子を見て選択する機会が増えますよね。いわゆる「売れ残り」がいつまでも残ることが回避されるのもメリットですよね。
このような置き菓子のローテーションの工夫をしっかり特許として権利化しているのは上手だと思います。一見、技術アイデアだと思われなくて、特許をとる対象ではないと考えられることが多そうです。
でもこういうのがいわゆるビジネスモデル特許の典型ですね。頭やわらかくしていきましょう。
特許第3986057号 江崎グリコ株式会社
出願日:2002年9月27日 登録日:2007年7月20日
従来にないまったく新しい発想で、複数の場所に設置された複数の商品ボックスを管理する商品ボックス管理装置、商品ボックス管理システムおよびプログラムを提供する。
【請求項1】
複数の場所に設置された複数の商品ボックスを管理する商品ボックス管理装置であって、
複数の期間のそれぞれについての複数の商品配置パターンを定義し、前記複数の期間にわたって前記複数の商品配置パターンをローテーションさせることを定義するデータ構造を有する商品ローテーション計画データと、前記複数の場所を販売員が訪問する順序を定義するデータ構造を有する訪問計画データとを格納する格納手段であって、前記複数の商品配置パターンのそれぞれは、予め計画された種類の商品を予め計画された数だけ配置することを示し、前記複数の場所のそれぞれには、前記複数の商品配置パターンのいずれか1つが割り当てられている、格納手段と、
指定された日に訪問すべき場所と、前記指定された日に訪問すべき場所に対応する商品ボックスに配置すべき商品の種類と個数とを前記販売員に指示するデータ構造を有する商品配置指示データを作成する作成手段であって、
前記指定された日における前記訪問計画データを参照することによって、前記指定された日に訪問すべき場所を決定することと、
前記指定された日に訪問すべき場所のそれぞれに割り当てられた前記商品ローテーション計画データを参照することによって、前記指定された日に訪問すべき場所に対応する商品ボックスに配置すべき商品の種類と個数とを決定することと
によって、前記商品配置指示データを作成する、作成手段とを備えた、商品ボックス管理装置。
今日のみどころ
オフィスグリコの特許発明で、ビジネスモデル特許の典型と言えると思います。人間がやってもよさそうな仕事ですが、コンピュータで行う形で表現して技術アイデアとして特許をとることができます。
最近はビジネスで行うことのほとんどがコンピュータの処理されるものなので、実情にも会う形で権利化できます。
ビジネスモデル特許の請求項や明細書の書き方の参考になります。
なお、この特許は、下記のサイトの管理人のシゴクリ大橋様からのリクエストを受けて読んでみました。他のみなさまもリクエストください。できる範囲で紹介したいと思います。