【特許紹介】トンネル工事で監視カメラの動画のコマ落ちや画質低下を改善できる特許発明(日建リース)を紹介

 今回は、トンネル内の工事でのネットワークに関する特許を紹介します。今日も一緒に勉強しましょう。

 従来、トンネル工事で監視カメラの動画のコマ落ちや画質低下の問題があります。

 本発明では、トンネル工事の進捗に応じて、増設用の中継器を搭載した台車を走行させます。これにより、トンネル工事の進捗に応じてネットワークを延長し、監視カメラの動画のコマ落ちや画質低下を改善することができます



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トンネル工事で監視カメラの動画のコマ落ちや画質低下の問題

 トンネルなどの工事現場の管理(進捗状況の管理や安全管理)のために、監視カメラによる監視をすることがあります。

 監視カメラのシステムでは、ネットワークを介して接続されることが前提となっていることがあります。ネットワークは、携帯電話の通信回線やLAN(Local Area Network)が含まれます。

 その場合、ネットワークの帯域が不十分だと、監視カメラが撮影した動画のコマ落ちや解像度の低下が発生することがあります。

トンネル工事の進捗に応じて、増設用の中継器を搭載した台車を走行


 この発明のシステム(LAN拡張システム)は、携帯電話の通信回線の電波が届かない場所に設置された端末(例えば監視カメラ)にLANを拡張することができ、例えば監視カメラが撮影した動画のコマ落ちを防止することができます。

 このシステムは、ルータと中継器とを備えています。

 ルータは、インターネットに接続できる回線に接続しています。

 中継器は、ルータと端末との間でメッシュネットワーク機能による通信データを中継することができます。

 そして、工事現場の作業員が搭乗してトンネル内を走行する台車に1台の中継器が備えられていて、さらに、トンネルの進捗に応じて追加される増設用の中継器が搭載されています。

 これにより、トンネル工事が進むにつれて台車を進行させて、適当な間隔で増設用の中継器をトンネル内に設置していくことができ、トンネル工事の進捗とともにLANを延ばしていくことができます。

 特許第6766285号 日建リース工業株式会社
 出願日:2020年3月24日 登録日:2020年9月18日

【課題】
インターネットに接続するための公衆通信回線の電波が届かない場所に、無線LAN環境を構築して作業の利便性を向上する。
【請求項1】
  携帯電話通信回線の電波未達箇所にある各種端末をインターネットに接続するための、LAN拡張システムであって、
  ルータと、1台以上の中継器と、を少なくとも有し、
 前記ルータは、インターネットへの接続回線と接続し、
 前記中継器は、当該中継器の少なくとも一部が、前記電波未達箇所に設置されており、
 前記中継器は、前記ルータと前記各種端末との間をメッシュネットワーク機能でもって、無線通信によりデータを中継する機能を少なくとも有し、
 前記電波未達箇所が、人が立った状態での通行ができないトンネルの工事現場であり、
 前記1台以上の中継器が、
 作業員が搭乗したまま前記トンネル内を走行する台車に取り付けられる、台車用の中継器と、
 前記台車に搭載され、前記トンネルの進捗に応じて追加される、増設用の中継器と、
 を少なくとも含むことを特徴とする、
 LAN拡張システム。

今日のみどころ

 トンネル工事でのネットワークカメラを用いた監視のために、メッシュネットワークを延長していくことができるシステムの発明です。

 トンネル内にメッシュネットワークを設置するというだけでは、すでに先行技術があるので特許をとれないですが、そこで、台車や増設用の中継器という概念を入れて新しさを出していると思います。

 特許を検討するときに、最初は権利範囲を広くすることを考えますが、審査結果に合わせて適切に権利範囲を絞って権利をとることも大事です。これは、用途をある程度限定して、事業を保護できる特許をとった結果といえると思います。特許戦略として参考になります。