【基本】特許/知財の初心者にオススメの本5冊セットを紹介(2020年版)

 特許事務所や企業の知財の仕事を始めるときに読むのがおすすめの本を5冊セットで紹介します。この5冊セットがあれば、当面の実務に必要な知識が得られます。

 私は特許事務所でクライアントの特許の権利化の手続き(特許出願や中間処理)のお手伝いをする仕事をして9年目になります。この5冊セットは私の職場の本棚においてあって、仕事でわからないことがあるとちょいちょい参考にしているおすすめの5冊です。

 信頼できる情報源をいつも手元においておくと、効率的に、かつ、安心して仕事ができます。

 特許事務所で特許の仕事をしている弁理士や特許技術者、企業の研究者や知財担当者に特におすすめです。特許制度の本は特許事務の担当者にもおすすめ、技術英語の本は特許翻訳者にもおすすめです。

 以下で具体的に説明します。



 ※特許の本の紹介。
 特許の申請(出願)をする技術者や研究者が知っておかないといけない特許の知識がわかりやすくまとめられている良著です。

特許の手続き全般の参考に『技術者・研究者のための 特許の知識と実務[第3版]

 『技術者・研究者のための 特許の知識と実務[第3版]』は、日本の特許の手続き全般をわかりやすく説明している本です。

 特許にはいろいろな手続きがあります。代表的な手続きには、補正、分割、拒絶理由通知がきたときの意見書や補正書の提出などがあります。

 そして手続きができる人や期限などの要件は、法律(特許法)で定められています。その要件を満たさない手続きをしてしまうと、特許庁に受理されず、結果的に特許をとることができないということになってしまいます。

 この本には、代表的な制度の説明から始まって、手続きができる期間などについてわかりやすく説明されています。この本を参考にして、間違えないように手続きをしましょう。

 あと、特許法もどんどん改正されて、新しい制度が追加されたり、要件が変わったりしていくので、弁理士のベテラン先生も本棚にいれておくとよいと思います。

物の状態や動きを表現する言葉の参考に『特許技術用語集―類語索引・使用例付

 『特許技術用語集―類語索引・使用例付』は、特許の書類(特許請求の範囲、明細書など)に使う独特の言葉を集めた用語集です。特許用語または機械用語などと呼ばれる用語です。

 特許の書面で、装置や物の構造を言葉で表現するときには、機械の動作を正確に記述できる専門用語が重宝されることがあります。例えば、特に、物の表面の状態、やわらかさ、動き、位置関係などの特徴を表現するのに便利です。

 この本では、各用語について意味と使用例が掲載されています。言葉選びに迷ったときに参考になります。

 最近では、特許特有の用語、いわゆる「特許用語」と呼ばれる用語を使わずに、なるべく平易な用語を使うのが好まれるようになってきているのですが、装置や物の構造を表現するときには特許用語や機械用語が使われているのが現状だと思います。

 ※残念ながらいまは発行されていないようで、価格が少々上がっていたり、購入できない状態になっていたりします。中古品を入手したり、知り合い経由で譲ってもらったりできるチャンスをねらうのがよいかもしれません。(高すぎる価格でつかまないように注意しましょう)

特許技術用語委員会 (編集), 大都 孝嗣 日刊工業新聞社; 第3版 (2006/8/1)

特許を権利化するまでの中間処理の参考に『特許出願 新・拒絶理由通知との対話 第2版

 特許をとるには、出願をした後、特許要件を満たすようにするための手続き(中間処理といいます)をします。中間処理では、審査官の審査の結果として通知される「拒絶理由通知」の内容を踏まえて、出願の内容を補正したり反論したりして、特許を受けられる状態にもっていきます。

 中間処理を上手にできるかどうかで、特許をとれるかどうかが変わってきます。だから中間処理はとても重要です。

 『特許出願 新・拒絶理由通知との対話 第2版』では、審査官にうまく伝わる意見書の書き方などを実例を挙げて丁寧に説明しています。

 特に進歩性を主張するときの意見書の書き方が、「スリムな意見書」として紹介されていて、とても参考になります。書くべきことだけ書いて、効率よく特許査定に導くことができるようになります。

 ※参考記事

稲葉 慶和 (著), 鈴木 伸夫 (著) エイバックズーム; 2版 (2014/3/7)

英訳のチェックの参考に『マスターしておきたい技術英語の基本-決定版-

 日本人がアメリカやヨーロッパの特許をとりたいときには、日本語で書かれた技術文書を英訳するケースがほとんどです。でも、翻訳者が技術英語や特許英語に精通していないことも多いのが現状。上手な翻訳がなされていないと、特許をとるのが難しくなってしまいます。

 そこで、英訳された文書で正しい訳語が使われているかについて、ある程度、特許技術者や知財担当者が判断する必要があります。

 『マスターしておきたい技術英語の基本-決定版-』は、日本語と英語の両方のネイティブの感覚をもった筆者が、日本語と英語の技術用語を対比しながら説明しています。イラストが多く利用されていて、感覚的にわかりやすいように説明されています。

Richard Cowell (著), しゃ錦華 (著) コロナ社; A5版 (2015/11/12)

アメリカの特許の手続きの流れの参考に『改正法対応 米国特許手続ハンドブック ~フォームを用いた解説が分かりやすい~

 『改正法対応 米国特許手続ハンドブック ~フォームを用いた解説が分かりやすい~』は、アメリカの特許制度についてわかりやすく解説している本です。

 アメリカの特許庁USPTOへの手続きをするのはアメリカの弁理士ですが、そのアメリカの弁理士に手続きの指示をするためにはアメリカの特許制度をある程度知っている必要があります。

 例えば、アメリカの特許制度では、日本の分割出願に似た制度として継続性出願と呼ばれる制度があり、一部継続出願、分割出願、継続出願の3つがあります。どの出願をすればよいか決めてアメリカの弁理士に指示するには、どの制度がどんなときに使えるか、知っている必要があります。

 この本でざっと内容を把握すれば、アメリカの弁理士への指示に必要な知識が身につけられます。

 ※アメリカの特許の手続についてはこちらの本もおすすめです。上記とどちらか1つで十分と思いますが、両方を参考にするのもよいと思います。

今日のみどころ

 インターネット上にも良い資料がたくさんあるのですが、信頼できる本を厳選して手元においておくのがオススメです。必要なときに、あそこに書いてあったなぁと思ってぱっと見て、仕事を進めることができるから。

 自分の本なら付箋をはっておいてもよいし、メモを書き込んでもよいし。本を使い倒して効率よく仕事しましょう!

 (参考)過去に紹介した本の紹介記事はこちらです。ご参考に。