特許は技術アイデアを守るもの。特許法という法律に基づいていろいろな制度が定められていますが、理解するのはなかなか難しいです。
今回は、一般の人におすすめで、しかも特許のベテランにもおすすめの特許の基本書「技術者・研究者のための 特許の知識と実務[第3版]」を紹介します。
ベテランの方にとってはあたりまえのような内容ではあるのですが、一般の人に向けて説明をする際に役立つはずです。
私は特許事務所で8年ほど仕事をしていて、特許のいろいろな状況での手続きに関する仕事はできるようになっていると思います。でも特許を扱った経験が少ない方の権利化のお手伝いをするときに説明に困ることもよくあります。そういうときに、役に立つはず。
特許のベテランになるほど、一般の人との話が通じにくくなることも
特許制度はけっこう複雑にできていて、内容も難解なので、一般の人にあまり良く知られていないと思います。
企業の研究部門、開発部門にいたりして特許に慣れている研究者は、企業での教育や、実際の仕事で特許を扱うと思います。そのため、特許がどういうものかわかっている人も多いと思います。
一方、中小企業の開発担当者や大学の研究者は、それほど知らない人もいるというのが現状だと思います。
なかなか知る機会もないですから。
一方、弁理士又は特許技術者、企業や大学の知財の仕事をしている人は、特許制度のしくみをよく知っていて、知っている人同士のやりとりはスムーズに進みます。でも、簡単な言葉で一般の人に説明するのはむずかしい。ベテランになるほど、一般の人との差が大きくなって、話が通じにくくなっていくこともあります。
一般の人からの根本的な質問に答えるのもむずかしい
例えば、特許というものはそもそも何なのか。何ができるものなのか。というような根本的な質問が一般の人から出た場合にうまく答えられないことがありませんか。私はあります。
法律の用語や、弁理士試験で答えるような回答は、一般の人向けにはあまり適していないですしね。
そういうときは、特許の基本書をうまく活用しましょう。一般の人は、厳密な正解を求めているのではなく、だいたい正しい知識を得ておきたいという感じでしょうから。
また、特許制度は、原則があって、そのうえで例外がある、という構造が重なって構成されているとも言えます。こういうのを正確に伝えようとすると、なんだか例外の話ばっかりになってなかなかうまく伝わらない。
一般の人向けには、大原則だけ伝えれば十分な場合も多いはずです。
特許の基本書
特許の基本書、初心者向けの書籍には、初心者にわかりやすいような例が挙げられています。
また、うまく例外を切り捨てて、いろいろな制度のわかりやすい部分を抽出して説明をしてくれています。
具体的に言うと、新規性や進歩性という特許の要件、特許出願、優先権、分割、早期審査、国際出願などの制度をシンプルに説明してくれています。実務で使うのに必要かつ十分なレベルでまとめられていると思います。逆にいうと特許制度全体の勉強をしようと思うと、実務にあまり関係ない部分も多くて効率が悪いです。
私は本にいろいろと書き込みたいので自分個人で本を買っていますが、特許事務所や会社に勤めている人は、複数人でシェアするとよいでしょうね。
制度の変更に対応していることも大事
特許制度は、時代の変化、国際情勢に影響されて少しずつ変化しています。最近では、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)の加入で特許法の改正がありました。
なので、新しめの書籍を情報源として持っておくのが良いと思います。
いまから何か情報源を入手しようと思う人には、『技術者・研究者のための 特許の知識と実務[第3版]』がおすすめです。2019年2月の出版です。
技術者・研究者のための 特許の知識と実務[第3版]
『技術者・研究者のための 特許の知識と実務[第3版]』の章立てを下に示しておきます。もっと詳しく知りたい場合は、以下のリンクからアマゾンや楽天へ行って確認してください。
第2章 どのような発明であれば特許をとれるのか?
第3章 ここまで知っていれば十分! 特許の知識
第4章 発明したら初めに先行技術を調査しよう
第5章 出願書類を作成して特許出願しよう
第6章 拒絶理由通知への対応
第7章 特許出願しないブラックボックス化戦略
第1章では、そもそも特許とは何かという問いに対する、一般の人向けの説明があります。
第2章では、新規性や進歩性などの特許要件についての説明があります。
第3章では、特許の制度について、ある程度くわしく説明されています。補正、分割出願、優先権、国際出願など、知っておきたいキーワードが盛り込まれていますので、特許制度を知るとっかかりとして十分な内容です。
第4章から第6章は、実際の手続の流れに従って、先行技術調査、出願、拒絶理由への対応(中間処理ともいいます)の説明があります。
第7章では、企業の特許戦略として特許を出願しない戦略もあるということについての説明があります。
これだけの内容があれば、確かに、一般の人としての特許の知識は十分だと思います。
ちなみに、コラムもあります。息抜きによいかも。
・特許がとれても独占実施できない特殊なケース
・「ニクノニ」とは?
・補正できる範囲を超えて補正すると拒絶される
・狭すぎる特許権はとったとしても意味がないのか?
・ペコちゃん人形には商標権が付与されている!
・「いきなり!ステーキ」のステーキ提供システムは発明に該当するのか?
・特許出願書類はどのような順番で作成していくべきか?
・「?を含む○○」と「?からなる○○」の違いについて
・「および、または、もしくは、ならびに」の使い分けについて
・POSCOへ営業秘密を漏洩した元従業員を新日鉄が訴え続けた理由
新しい改正に対応していることを確認/新規性喪失例外規定の適用期間が1年が反映
新しい法改正に対応しているかが気になったので確認しました。
最近の制度の改正で一般の人に影響があることとして、「新規性喪失の例外規定の適用期間が6か月から1年に変更になった(特許法30条)ことがあります。
このことは、反映されていました。
そのほかの制度は、以前からあまり変わっていませんので、大丈夫そうです。
今日のみどころ
一般の人から特許のベテランにもおすすめの特許の基本書を紹介しました。
インターネット上の情報も便利ですが、信頼できる情報源をお手元に一冊置いておくのもおすすめです。以下のリンクからどうぞ。