障害が起こっても正しく動作する性能、とか、障害に耐える度合いのような意味で「耐障害性」という言葉があります。
一方、「障害耐性」という言葉もありそうです。これらの言葉の違いを調べました。比較、使い分けについて以下で紹介します。
辞書的な意味
「耐障害性」について、デジタル大辞泉では以下のように説明されています。
⇒フォールトトレランス
「フォールトトレランス」
⇒誤動作や故障が起こっても自動的に修正して正しい動作をする機能。またはその技術。耐障害性。故障許容力。
一方、「障害耐性」という言葉は、一般的な辞書には掲載されていないようです。
Googleの検索結果の数を比較してみます。(2017年9月21日時点の検索結果です)
クォーテーションでくくった結果からは、四文字の言葉としては「障害耐性」の方が優勢のようです。
一方、クォーテーションでくくらない結果からは、「耐障害性」と「障害耐性」とが一般的にはあまり区別されていないか、または、Googleがあまり区別していないと思われる結果が得られました。
耐障害性 629,000件
"障害耐性" 19,800件
障害耐性 607,000件
また、Googleの検索キーワードのオートコンプリート機能で候補が多いのは「耐障害性」で以下のように表示されました。「障害耐性」では、1つも表示されませんでした。
耐障害性 可用性
耐障害性 可用性 違い
耐障害性 システム
耐障害性 raid
耐障害性 aws
耐障害性 高可用性
耐障害性 信頼性 違い
Wikipedia
Wikipediaで検索した結果、「耐障害性」及び「障害耐性」ともに、この言葉そのものの項目はありませんでしたが、その他の項目の説明に使われていました。「耐障害性」の方が多くの語の説明に使われていました。
→対称型マルチプロセッシング、RAID、ブレードサーバ、ソフトウェア設計など 全34件
「障害耐性」が説明に使われている語
→ネットワーク・トポロジーなど 全2件
特許情報プラットフォーム J-PlatPat
特許文献での使われ具合をJ-PlatPatで確認した結果、「耐障害性」が優勢でしたが「障害耐性」もまずまずの健闘を見せています。
障害耐性 515件
※検索対象は、公開特許公報 (特開・特表(A)、再公表(A1))、特許公報 (特公・特許(B))、公開実用新案公報 (実開・実表・登実(U)、再公表(A1))、実用新案公報 (実公・実登(Y))です。
特許技術者としての視点
私は、特許技術者としての経験上から以下のような印象を持っています。
まず、表現される意味は、それほど変わらず、違いはあまりないと思います。どちらも、障害が起こっても正しく動作する性能、とか、障害に耐える度合いのような意味に読み取られると思います。
どちらが使われるかという観点では、IT技術の分野や通信の分野で使われる場合「耐障害性」の方が使いやすいと思います。技術の分野では耐衝撃性、耐摩耗性、耐光性など、「耐○○性」という言葉が使われる例があるためです。
また、特許の分野でいうと、「耐障害性」は、1つの語と認識され、複合語と認識されることが少ない点もよいと思います。「障害耐性」の方は、「障害」と「耐性」の二語の複合語と認識されることがあり、このような造語が好まれないケースがあるからです。
一方、一般的には「障害耐性」でも充分に意味が通じると思いました。何かに耐える性能という意味をもつ「耐性」のうちの1種という捉え方ができると思います。
今日のみどころ
「耐障害性」と「障害耐性」との使い方としては、技術業界・特許業界では「耐障害性」が優勢、一般的には「障害耐性」でも十分使えると言えると思いました。
「耐障害性」や「障害耐性」の技術内容に興味がある方は以下でチェックしてみてください。