特許の審査で特許要件を満たさないと判断されたときには「拒絶理由通知」という書面が届きます。
普通の人がはじめて拒絶理由通知を読むとびびってしまいます。「あなたの発明には特許を認めない」というような内容で淡々とその理由が述べられているからです。
けっこう口調がこわいので、もうだめかと思ってしまうこともあり、審査官はぜんぜんわかっていない!と怒る人もいます。
この記事では、拒絶理由通知に対応してどうやって対応したらよいか提案します。自分(出願人)が対応することもできるし、他人に対応してもらうこともできます。それぞれ気を付けるといいことを提案します。
私は特許事務所でクライアントの発明の権利化をお手伝いする仕事を7年以上していて、拒絶理由通知に対する対応もたくさんさせていただいています。その経験に基づいてシェアします。
拒絶理由通知の対応は特許成立前の1ステップ/自分でやるか他人でやるか
特許の手続きをしていると、審査官から審査の結果が届きます。新規性などの特許要件を満たさないときには「拒絶理由通知」という書面が届きます。
拒絶理由通知には「あなたの発明には特許を認めない」というような内容で淡々と理由が書かれているので、普通の人がはじめてみたときにはびびってしまうと思います。
しかも、法律の条文番号をところどころに入れながら、異論は認めないというような口調で書かれているので、こわい。反論したくてもどうしたらよいのか。。。
特許の処理に慣れていない人だと、「もうだめだ」とすぐにあきらめてしまうこともあるし、「審査官はぜんぜんわかっていない」と怒ってしまうこともあります。
でも、拒絶理由通知を受けることは、むしろ、特許権の成立のために必要な1ステップだと思ったほうがよいです。きちんと対応すれば特許をとることができることが多いです。
実際には、自分(出願人)でやるか、他人でやるか、このどちらかです。それぞれの場合について紹介します。
拒絶理由通知の表と裏の顔
ここで、拒絶理由通知について一般の書籍ではどのように解説されているかを紹介します。
私がいつも参考にしている本『新・拒絶理由通知との対話第2版』では、拒絶理由通知には「表と裏の顔がある」という説明があります(P.24)。
おもての顔は、拒絶処分を予告する作用。裏の顔は、この理由を解消すれば特許するということを知らせる作用です。
口調が結構こわいので、最初は「おもての顔」、つまり拒絶の予告という意味にしかとらえられないかもしれません。
でも、審査官は「裏の顔」の意味も結構もっていることがわかります。弁理士は審査官と電話で話したり、面接したりすることもできます。そのようなとき、どのように対応すれば特許できる方向に進むか意見を出してくれることもあります。
なので、拒絶理由通知にきちんと対応することは大事です。きちんと対応するかどうかで、特許とれるかどうかが変わってきます。
拒絶理由通知はこんな口調で書かれる。こわい
普通の生活や、ビジネスの中では、相手に気遣ったり変な意味にとらえられないように言葉選びに気を付けますよね。
でも拒絶理由通日にはそんな配慮はありません。法律のような言葉を使って断定口調でいってきます。例えばこんな感じに書かれています。
「○○として周知の技術を用いることは当業者が容易になし得たことである。」
「この出願の請求項に係る発明の発明特定事項と引用発明特定事項との間に差異はない。」
「○○に○○を用いることを想到することは、当業者においては格別の困難性を有さない。」
「請求項の記載により特定される事項は、引用例に記載された事項であるか、又は格別なことではなく、当業者が適宜なし得る事項にすぎない。」
このような感じで、「あなたの発明には特許を認めない」みたいな内容が淡々と書かれています。そんな技術は普通です、特許に値しない、と言われているようにも思えるかもしれません。
確かにこわい、こわすぎてつらい。たえられない。
ちゃんと検討して発明のアイデアを検討したのに。特許事務所に高いお金払って、審査にも高いお金払ったのに。審査官がぜんぜんわかっていないんじゃないか。特許事務所が作成した書面がおかしいんじゃないか、といって怒る気持ちもでるかもしれません。
そこでどうやって対応するか。自分つまり出願人で対応するか、または、他人つまり弁理士や特許事務所で対応するか、があります。
それぞれの場合について気を付けることを以下で説明します。
自分(出願人)で対応する方法:心理的ダメージを受けずに処理する
拒絶理由通知の言葉は、上記の通りこわい感じがするのですが、そのような心理的ダメージをあまり受けないように気を付けて処理します。こわい部分をスルーする感じ。そして、内容をしっかり読み取ります。
拒絶理由は何なのか、新規性、進歩性、明確性などの理由が記載されているので、読み取ります。
また、その理由に該当した詳細な説明も拒絶理由通知に書かれているので、読み取ります。このとき、審査官の考えがおかしいようであれば、それも読み取ります。
そして、その理由を解消できる補正や、意見書での説明を作成します。審査官の考えがおかしいと思われるときは、出願書類の請求項や明細書の記載も見直して考えてみる。請求項や明細書の記載がおかしいこともあるので、補正できる範囲で補正します。
なお、特許の拒絶理由で代表的なものは、新規性、進歩性、不明確などとだいたいきまっていまして、その処理方法もだいたい決まっています。具体的にどのように補正するかはよく検討してください。この点、自分で全部やるのは大変なので弁理士/特許事務所を利用して上手に進めるのがおすすめです。
弁理士や特許事務所で対応する方法:対応の方針を伝えて、詳細はまかせる
自分(出願人)で対応するのは、どうしても大変。とくに、新規性や進歩性についての補正や反論をするのは、技術的な知識や経験も必要なので、弁理士や特許事務所に依頼するのがおすすめです。
新規性や進歩性についての審査は、審査基準にのっとってなされるので、補正や反論をするときにも、審査基準を満たすように考える必要があります。反論の中では、審査基準の中で使われている言葉を使って説明することも有効です。
でもここがなかなか難しい。
こういう部分は特に、いつも特許の仕事をしている弁理士や特許事務所に依頼してしまうのが簡単で成功率が高いです。
弁理士や特許事務所に依頼するときには、あらかじめ大まかな方針を伝えることに気を付けます。
実際に事業をしている製品を守れるようにしたいとか、反論だけでチャレンジしてみたい、狭くなってもいいからとにかく特許をとりたい、というような方針を特許事務所の伝えるのもよいと思います。
弁理士や特許事務所は、必要に応じて話し合いをしながら、補正と反論をしてくれると思います。
対応方法のおすすめは「スリムな意見書」『新・拒絶理由通知との対話第2版』
最後に参考になる書籍の紹介をします。
拒絶理由通知への対応について、元審査官の目線で詳しく説明しつつ、拒絶理由の対する対応の方法を説明しているのが『新・拒絶理由通知との対話第2版』です。
拒絶理由通知への対応では、意見書という書面の書き方も大きなポイントになりますが、『新・拒絶理由通知との対話第2版』で紹介されている「スリムな意見書」の書き方が特におすすめです。
意見書に書かないといけないことはこれ、というように具体的に記載されています。
拒絶理由にしっかり対応できるようになって、クライアントや社員からの信頼を獲得していきましょう!
今日のみどころ
拒絶理由通知にきちんと対応していっぱい特許取りましょう!自分で全部やるのは大変だから弁理士や特許事務所を利用して上手に進めるのがおすすめです。