【特許紹介】火災警報システムのサブシステムのチャネル選択確率を上げてノイズを回避する特許発明(パナソニック)

図2

 今回は、火災警報システムに関する特許を紹介します。

  従来、他の通信システムの近くに配置されると無線信号が干渉する問題があります。

 この発明では、火災警報システムで自装置のサブシステムから信号を受信する閾値を最も小さく設定します。これにより、自装置のサブシステムのチャネルを選択する確率を上げてノイズを受信するのを回避することができます。



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他の通信システムの近くに配置されると無線信号が干渉する問題

 火災が発生したという情報を無線通信によって伝達する火災警報システムがあります。

 火災警報システムは、各住戸に設置されるセンサを備えた子機と、複数の子機から信号を受ける親機とで構成されていて、子機と親機とが無線通信をして情報を伝達します。

 しかしながら、火災警報システムが他の通信システムの近くに配置されると無線信号の干渉が起きます。無線通信のチャネル(周波数帯)を変えると衝突を回避できますが、チャネルの数に限りがあります。そのため、無線信号の干渉によって情報の伝達がうまくいかないことがあるという問題があります。

自装置のサブシステムから信号を受信する閾値を最も小さく設定

図3


図1

 この発明の火災警報システムは、1つの親機と複数の子機とを含むサブシステムの集まりとして構成されています。

 子機は、まず複数のチャネルのうちから1つのチャネルを選択して信号の受信をします。受信した信号に所定のビットパターンが含まれていれば、その信号から情報を取得します。

 子機は、受信した信号に所定のビットパターンが含まれていない場合には、別のチャネルを選択してその別のチャネルの信号レベルを計測し、信号レベルがある閾値以上であるときに電波の受信を開始します。

 この閾値は、サブシステムごとに定められていて、しかも自装置が属するサブシステムの閾値として最も小さい値が設定されているのが特徴です。言い換えれば自装置が属するサブシステムの閾値より、他のサブシステムの閾値の方が高く設定されているということです。

 このようにすることで、子機が他のサブシステムの信号よりも、自装置が属するサブシステムのチャネルを選択する確率を高くすることができ、電波のノイズなどを誤って受信することが低減できます。

 特許第5838350号 パナソニックIPマネジメント株式会社
 出願日:2012年2月8日 登録日:2015年11月20日

【課題】
無線信号の干渉が生じている場合においても、当該無線信号で伝送される情報の受け取りを可能とする。
【請求項1】
 予め用意された複数の周波数チャネルから1つを選択する変更手段と、
 前記変更手段で選択された前記周波数チャネルを通じて電波を受信するように構成され、前記電波を受信すると受信された前記電波を復調してビット列を取得する受信手段と、
 前記受信手段で取得された前記ビット列が所定のビットパターンを含んでいるか否かを確認し、前記ビット列が前記所定のビットパターンを含んでいれば前記受信された電波が所定の情報を含む目的の無線信号であると判定し、前記ビット列が前記所定のビットパターンを含んでいなければ前記受信された電波が前記目的の無線信号ではないと判定する検出手段と、
 前記受信された電波が前記目的の無線信号であると前記検出手段が判定すると前記ビット列を復号化して前記所定の情報を取得する情報取得手段と、
を備え、
 前記変更手段は、前記受信された電波が前記目的の無線信号ではないと前記検出手段が判定すると、選択した周波数チャネルとは異なる周波数チャネルを前記複数の周波数チャネルから選択するように構成され、
 前記受信手段は、前記変更手段で選択された前記周波数チャネルにおける電波を検知すると、前記電波の信号レベルを測定するように構成され、
 前記受信手段は、前記信号レベルがキャリア検知のしきい値以上であれば、前記電波の受信を開始するように構成され、
 前記しきい値は、前記複数の周波数チャネルのそれぞれに対応付けられており、
 前記複数の周波数チャネルは、予め関連付けられた無線機に対応する所定の周波数チャネルを含み、
 前記所定の周波数チャネルに対応するしきい値が最も小さい
ことを特徴とする無線機。

今日のみどころ

 無線通信を利用した火災警報のシステムで、無線通信の干渉を回避する技術の特許です。

 電波の干渉を回避するアイデアはたくさんあるので、特許をとるのがむずかしいと考えがちです。でも、適用するシステムならではのアイデアが含まれていると特許が認められやすいです。

 なので、既存のアイデアがたくさんありそうな分野の場合、この「ならでは」の部分を深堀りして、その効果とともにしっかり考えるのがオススメです。