監視対象の動きを検出すると音等を出力するドアホンシステムの発明 パナソニック

 監視カメラをドアホンシステムと組み合わせた従来構成では、通行人が通るたびにアラームが出力され、不必要に多くのアラームが出力されるという問題を解決する発明です。

 監視対象の動き検出をするとともに、威嚇動作を示す情報を子機により転送することで、不必要に多くのアラームが出力されるのを抑制し、広い範囲を監視対象とすることができます。

 特許第5906561号 パナソニックIPマネジメント株式会社
 出願日:2014年8月6日 登録日:2016年4月1日



 ※特許の本の紹介。
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外壁のシールド効果により監視カメラ映像を屋内に転送するのが困難

 建物の外に設置した監視カメラでの映像を屋内へ転送する場合、建物の外壁が電波をシールドする効果をもつので、無線で転送するのが困難であるという問題があります。

 そこで、従来、監視カメラをドアホンシステムと組み合わせる構成があります。ドアホンシステムでは、親機と子機とが有線ネットワークで接続されており、子機が屋外に設置されています。子機と監視カメラとを無線で接続して、監視カメラが撮影した映像を無線で子機に送信したあと、子機から親機へ有線で送信します。そして、監視カメラに人が検出されたら親機がアラームを出力します。

 この構成をそのまま公共の駐車場に適用すると、通行人が通るたびにアラームが出力され、不必要に多くのアラームが出力されるという問題があります。この問題は、従来のドアホンシステムは、広い範囲を監視対象とすることができないという問題につながります。

監視対象の動きを検出し、子機が威嚇動作情報を転送

 この発明のドアホンシステムは、監視対象(例えば車や郵便受け)に磁石などで取り付けられて監視対象の動きを検出する機能をもつ無線装置を使用します。無線装置は、監視対象の動きを検出すると、動きを示す情報を無線(*1)で子機に送信します。子機は、受信した情報を親機に転送します。このようにして、監視対象の動きを示す情報が親機に届けられます。

 親機は、予め定められたテーブル(対象情報テーブル)を参照し、監視対象の動きを示す情報に対応した威嚇動作(例えばスピーカで音を出す)を選択し、その威嚇動作を示す情報を子機に送信します。子機は、無線装置に転送すべき情報を無線装置に転送します。無線装置は、子機により転送された威嚇動作を示す情報を受信して、威嚇動作を実行します。

 この一連の流れにより無線装置は、監視対象が検知した動きに基づいて音を出すなどの威嚇動作をします。これにより、従来技術における不必要なアラームが抑制されます。

*1 無線通信の通信規格の例は、1900MHz帯のDECT準拠方式です

【課題】
より広い範囲を監視対象とすることができるドアホンシステムおよび監視方法を提供する。
【請求項1】
 1つまたは複数の無線装置と、ドアホン親機と、玄関子機と、を有するドアホンシステムであって、
 前記無線装置は、
 動きを検知する動きセンサ部と、
 前記動きセンサ部が前記動きを検知したとき、動き検知情報を前記玄関子機へ無線通信により送信する動き検知情報生成部と、を有し、
 前記玄関子機は、
 前記無線装置から無線通信により受信した前記動き検知情報を前記ドアホン親機へ送信し、前記ドアホン親機から情報を受信する室内側通信部と、
 前記ドアホン親機から受信した情報が当該玄関子機への送信情報か前記無線装置への転送情報かを判断し、前記受信した情報が前記転送情報である場合には前記転送情報を前記無線装置に転送し、前記受信した情報が前記送信情報である場合には前記送信情報に含まれる音声データをスピーカから出力させる情報中継部と、を有する、
 ドアホンシステム。

今日のみどころ

 車や郵便受けを監視するとともに、不要なアラームを抑制することで広い範囲を監視対象とするドアホンシステムの発明です。本来のドアホンシステムの機能に、動きの検出によって監視対象を監視する機能を付加したものと考えることができます。

 これを実現するための子機の情報転送処理が特許のポイントになっていると考えられます。中間処理において、監視対象を広くすることと、子機による情報転送処理との関係を意見書で丁寧に説明することで進歩性が認められたと考えられます。進歩性欠如に対する反論では、特に、丁寧に説明することが大事ですね。