Eメールの送受信が多い端末ほど次の送受信を遅らせる中継サーバの発明 パナソニック

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 電子メール(Eメール)の送受信の中継を行うサーバ装置に関する発明です。

 このサーバ装置は、情報端末とメールサーバとの間でやりとりされる電子メールの中継を行うときに、過去に中継した電子メールの数量が多い情報端末ほど、次に中継をする機会を遅くします。これにより、情報端末が中継する電子メールの送受信量の差が小さくなるように調整します。

 特許第5799215号(特開2012-129802) パナソニックIPマネジメント株式会社
 出願日:2010年12月15日 登録日:2015年9月4日



 ※特許の本の紹介。
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電子メールの通信量の増大による他の通信の帯域不足

 情報端末とメールサーバとの間での電子メール(Eメール)の送受信を制限なく許可すると、電子メールの送受信の通信量が多くなり他の通信(音声、映像の伝送等)に使用するための通信帯域が不十分になり、他の通信の品質が低下するという問題があります。

 これを回避するためにメールサーバと情報端末との間に電子メールを中継する装置(ローカルサーバ装置)を配置することが従来行われています。
 しかし、この構成ではローカルサーバがメール等の情報を一旦保存する必要があり、情報漏洩、記憶領域の不足などの新たな問題がでてきます。

メール送受信要求の有無の問い合わせの順番により通信量を制御

 そこで、本発明では、ローカルサーバ装置が情報端末に対して電子メール(Eメール)の送受信の要求の有無を定期的に問い合わせるようにすることで電子メールの送受信に係る通信量を制限します。

 このローカルサーバ装置は、情報端末とメールサーバとの中間に位置しています。そして、情報端末とメールサーバとの間でやりとりされる電子メールの中継を行うときに、過去に中継した電子メールの数量が多い情報端末ほど、次に送受信する機会を遅くするように上記問い合わせの順番を変更します。

 これにより、情報端末間の通信量を平準化し、特定の情報端末だけの通信量が多くなることを回避します。

【課題】
構内通信網と広域通信網との間で電子メールを中継し、かつ電子メールの送受信に伴う構内通信網の通信帯域の制限と中継の際の電子メールの蓄積量の抑制とを行う。
【請求項1】
 構内の複数台の情報端末と構内通信網を通して通信する第1のインターフェース部と、メールサーバと広域通信網を通して通信する第2のインターフェース部と、前記第2のインターフェース部を通して前記メールサーバとの間で電子メールの送受信を行うメール送信部およびメール受信部と、前記第1のインターフェース部を通して前記情報端末に対して電子メールの送受信に関する要求の有無を個別に問い合わせる端末管理部とを備え、前記端末管理部は、前記情報端末から電子メールの送受信が要求されるとともに前記情報端末が利用する前記メールサーバのアカウント情報を含むメールサーバ情報を前記情報端末から取得すると、メールサーバ情報で指定された前記メールサーバと前記情報端末との間の電子メールの中継を行う機能を備え、さらに、前記端末管理部は、前記各情報端末が送受信を行った電子メールの数量をそれぞれ記憶した後、送受信を行った電子メールの数量が相対的に大きい前記情報端末については、次に前記要求の有無を問い合わせる順番を相対的に遅らせることを特徴とするローカルサーバ装置。

今日のみどころ

 普通の電子メールは、情報端末とメールサーバとの間で自由なタイミングで通信できるように標準化されています。しかし、この自由があるために、特定の用途で利用する場合に不都合が生じる場合があります。そこで、その特定の用途で用いられる電子メールの場合、そのタイミングの自由度を制限することで問題を解決をしています。

 広く使われる技術は、いろいろな用途に使用できるように汎用的にできています。そして、その汎用的に作られた技術に、機能を付加したり、パラメータを調整したり、その他のカスタマイズなどを行うことで、特定の用途に特化した技術を作ることができます。

 通信関連の技術では、ゼロから新しい技術を作るより、このアプローチをとることの方が多いと思います。効率よく良いものが作れますからね。