無線リンクを少数に絞れる経路を選択するマルチホップ通信システムの発明 パナソニック

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 マルチホップ通信システムの子機(通信ノード)に関する発明です。

 子機は、無線通信と有線通信(具体的には電力線搬送通信)との両方の通信インタフェースを備えています。そして、子機は、親機との通信に用いる通信経路を決定する際に、親機への通信路が1本だけである隣接子機を有するときに無線インタフェースを経由する通信経路を選択します。

 これにより、子機と親機との通信経路を良好な少数の経路に限定することができ、安定な通信ができるようにします。電力線搬送通信(PLC)で電力使用量を電力会社に通知する電力計(スマートメータ)に適用可能な技術です。

 特許第5799236号(特開2014-103676) パナソニックIPマネジメント株式会社
 出願日:2013年12月24日 登録日:2015年9月4日



 ※特許の本の紹介。
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無線リンクと有線リンクのどちらを用いて通信経路を構築するか

 マルチホップ通信システムでは、子機と親機との間でやりとりされる通信データを別の子機が中継することで、専用の中継装置を用いることなく遠距離の子機と親機とが通信することができます。

 また、マルチホップ通信システムに無線通信リンクと有線通信リンクとの両方の通信リンクが含まれる場合、どちらを優先的に用いて通信経路を構築するかが問題になります。

親機との通信経路が1本だけである隣接ノードがあると、無線を使用する経路を選択

 この発明では、親機との通信経路が1本だけである隣接ノードがあるときには、有線及び無線インタフェースのうちの無線インタフェースを使用する通信経路を選択することで、無線通信リンクを少数に絞るようにしています。

 このような工夫をしない場合、無線通信リンクが多数になり、フレームの衝突などによる通信ロスが生じ得ると考えられます。無線通信リンクを少数に絞ることで通信ロスを未然に防ぎ、安定した通信に寄与すると考えられます。
(用語)
PLC(Power Line Communication、電力線搬送通信):電力線を通信回線として利用する通信方法

【課題】
 親機と複数台の子機との間でマルチホップ通信を行うにあたり、信号干渉やパケット衝突を低減しつつ、通信信頼性の高いマルチホップ通信システムを提供する。
【請求項1】
 親機と複数台の子機とをノードとして備え、前記親機と前記子機との間で情報の伝送を行う際に、他の子機による通信の中継を許容するマルチホップ通信システムであって、
 前記子機は、電波を伝送媒体とする無線通信と、配電線を伝送媒体とする電力線搬送通信との2種類の通信方式を選択可能であるハイブリッド子機を含み、
 前記ハイブリッド子機は、
  前記電力線搬送通信でのホップ数が1である隣接する他のノードについて、
  前記親機の側である上位側の通信路が1本である場合に、前記通信方式として前記無線通信を選択し、
  前記上位側の通信路が複数本である場合に、前記通信方式として前記電力線搬送通信を選択する選択処理部を備える
 ことを特徴とするマルチホップ通信システム。

今日のみどころ

 親機と子機との間に複数の通信経路を構築することが可能な状況では、通信経路の選択肢が多く、無駄な経路切り替えが生じたり、他の通信経路の通信との干渉などにより通信が不安定になると考えられます。

 そこで、その通信経路を少数に絞ることで通信を安定化させることができます。この発明では、子機が通信経路を構築するときの処理を工夫することで、通信経路を絞って通信の安定化の効果が得られるようにしています。