無線通信に可聴周波数帯域の信号を入れ、人の耳で確認可能にする特許発明 シャープ

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 ガスや水道等の無線テレメータ(スマートメータ)システムに関する発明です。可聴帯域を逸脱した周波数帯域での無線通信は耳による確認ができないという問題を解決する発明です。

 この発明では、親機と子機との無線通信の「縁組」の際に可聴音周波数帯域の変調信号を用います。これにより、無線通信を人が耳で確認することができるようになります。

 特許第5784979号(特開2012-244465) シャープ株式会社
 出願日:2011年5月20日 登録日:2015年7月31日



 ※特許の本の紹介。
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可聴帯域を逸脱した周波数帯域での無線通信は耳による確認ができない問題

 従来、通信装置を設置する際には、親機-子機間の無線通信が行われているかを確認するために無線レシーバにより無線信号を音に変換することが行われています。この音を人間が聴くことで親機-子機間の無線通信が行われていることを確認することができます。つまり、無線通信を耳で確認することが行われています。

 無線通信の電波の周波数が人間の可聴周波数帯域であれば人間に聴取されることが可能ですが、可聴周波数帯域を逸脱すると人間が聴取することができなくなります。こうなると、上記の方法で親機-子機間の無線通信の確認をすることができなくなります。これが解決すべき問題です。

縁組動作の一部に可聴帯域の信号を入れることで解決

 この発明の無線データ通信システムでは、縁組動作をするときの無線通信の一部に可聴周波数帯域の信号を入れるようにします。このようにすると、可聴周波数帯域の信号を無線レシーバで音に変換すると人間が聴くことができる音になり、親機-子機間の無線通信の確認をすることができます。

 これにより、縁組動作のときの無線通信の電波が変換された音を人間が聴いて、縁組動作の成否確認をすることができます。

(用語)
縁組:通信に必要な情報を交換し、各端末間で通信を可能とする作業。
FSK:Frequency Shift Keying 周波数偏移変調

【課題】
設置工事の電波での縁組動作時に縁組の動作確認を従来からの低速無線機器の設置と高速無線機器の設置が混在する場合においても、耳だけで縁組の成否確認ができるようにした無線データ通信システムの提供を目的とする。
【請求項1】
 センタ側装置と、これに通信回線を介して接続された無線親機と、該無線親機との間で無線通信を行う複数の無線子機とから構成され、前記子機は、前記親機を通じてセンタ側装置とデータ通信を行う無線データ通信システムであって、前記親機および前記子機は、可聴音周波数帯域を超える通信速度でFSK通信するシステムにおいて、前記親機と前記無線子機間で無線通信を利用して縁組動作するときに、少なくとも一つの電文に可聴音周波数帯域の変調信号を有することを特徴とする無線データ通信システム。

今日のみどころ

 人間は電波を視認することができませんが、電波を音に変換する装置を介在させれば、電波の存在を音として認識することができます。この装置の介在を利用する前提で、人間が聞こえる音の周波数帯域(可聴周波数帯域)の電波を用いた無線通信を使用します。

 本来的には、音の周波数と電波の周波数とは直接関連をもたないと考えがちですが、この無線通信システムがこれらの周波数を関連付ける働きをしている点がおもしろいです。