車両センサより車車間通信を優先してドライバに報知する運転支援装置の特許発明(マツダ)を紹介

図2

 今回は、運転支援装置に関する特許を紹介します。

 従来、車両センサと車車間通信の両方の報知のタイミングが不適切になる問題があります。

 この発明では、車車間通信で検知した車両を優先してドライバに報知します。ドライバが目視できない車両の検知をする車車間通信を優先するためです。これにより、ドライバへの報知のタイミングを適切にします。

 特許第6238016号 マツダ株式会社
 出願日:2014年12月2日 登録日:2017年11月10日



 ※特許の本の紹介。
 特許の申請(出願)をする技術者や研究者が知っておかないといけない特許の知識がわかりやすくまとめられている良著です。

車両センサと車車間通信の両方の報知のタイミングが不適切になる問題

 車の安全のためのいろいろな技術が開発されています。

 その1つに、他の車両から位置や速度を通信(車車間通信)を用いて受信して、他の車両の存在をドライバに報知する技術があります。

 また、車両がセンサを使用して、自車両の周囲に位置する他の車両を検知してドライバに報知する技術もあります。

 これらの技術が同時に機能すると、両方の報知がドライバになされることがあります。しかし、報知のタイミングなどが制御されないので、報知のタイミングが不適切になることがあるという問題があります。

車車間通信で検知した車両を優先してドライバに報知

図3

 この発明の運転支援装置は、他の車両を検出する車両センサと、他の車両の位置や速度を車車間通信で受信する受信部をもっています。

 そして、車車間通信によって他の車両と衝突する可能性があると判定した後には、車両センサによって検出した他の車両の存在を低い報知レベルでドライバに報知します。

 また、他の車両との衝突を回避するための運転操作がなされると、その後には、車両センサによって検出した他の車両の存在を、それまでより高い報知レベルでドライバに報知します。

 このようにして、車車間通信による報知と、車両センサによる報知を適切なタイミングで行います。

ドライバが目視できない車両の検知をする車車間通信を優先

 このように、運転支援装置は、車車間通信によって他の車両を検知したときに優先的にドライバに報知します。これは、車両センサでは車両に比較的近い、ドライバが目視できる車両の検出ができるのに対して、車車間通信ではドライバが目視できない車両の検知ができるので、車車間通信による報知の方を優先するためです。

 一例として、車両が信号機のない交差点に接近したときに、このような優先制御がこの機能を発揮します。

【課題】
車車間通信及び車載センサによって検出された他車両に関する情報を、それぞれ適切なタイミング及び報知レベルでドライバに報知することができる車両用運転支援装置を提供する。
【請求項1】
 ドライバの運転を支援する車両用運転支援装置であって、
 自車両周辺の他車両を検出する車載センサと、
 他車両からその車両の位置、進行方向、及び車速を含む他車両情報を受信する車車間通信部と、
 上記他車両情報に基づき、自車両と他車両とが衝突する可能性を判定する衝突可能性判定手段と、
 上記車載センサにより検出された他車両及び上記他車両情報に基づき自車両と衝突する可能性があると判定された他車両の存在を報知する情報を出力する出力手段と、
 上記他車両情報に基づき自車両と衝突する可能性があると判定された他車両の存在を報知した後、当該他車両情報に基づき自車両と衝突する可能性があると判定された他車両との衝突を回避するための運転操作が行われるまでは、上記車載センサにより検出された他車両の存在を報知する情報を上記出力手段により第1の報知レベルで出力させ、上記他車両情報に基づき自車両と衝突する可能性があると判定された他車両との衝突を回避するための運転操作が行われた後、上記車載センサにより検出された他車両の存在を報知する情報を上記出力手段により上記第1の報知レベルよりも高い第2の報知レベルで出力させる報知制御手段と、を有することを特徴とする車両用運転支援装置。

今日のみどころ

 1つの課題を解決する複数の解決策があるときに、それらの解決策の1つを選択したり、両方の解決策を組み合わせたりするのも、特許発明として認められるパターンの1つです。

 既存の解決方法をうまく組み合わせるというだけなので、あまり評価しない考えもあるかと思いますが、大丈夫です。立派な1つのアイデアです。