車両の走行情報を管理するサーバにおいて、同一の車両から送信された2つの走行情報のどちらを採用すればよいか判断できない問題を解決する発明です。
この発明のサーバでは、走行開始と走行終了の時刻の時間差から、2つの走行情報の適切な一方を選択します。ドライバの車両に対する愛着を向上させることにつながる発明です。
特許第6023039号 本田技研工業株式会社
出願日:2013年12月20日 登録日:2016年10月14日
車両から送信された2つの走行情報のどちらを採用すればよいか判断できない問題
自動車などの車両の現在位置などの情報(走行情報)をサーバに送信し、サーバが道案内の情報などを自動車に提供するシステムがあります。
従来、自動車に搭載された通信機によって走行情報をサーバに送信することができていました。また、近年、スマホなどの携帯端末が普及したことで、自動車からスマホを経由して走行情報をサーバに送信することもできるようになっています。このように、自動車の走行情報をサーバに送信するのに2つの経路が存在する状態になっています。
このとき、2つの経路でサーバに送信された走行情報が同一にならないことが生じます。具体的には、例えば、エンジンスイッチをオンした後に携帯端末を車両に接続すると、車両情報を取得するタイミングが遅くなるなどの要因によるものです。
このように同一の車両から同一でない2つの走行情報が送信された場合、サーバは、どちらの走行情報を採用すればよいか容易に判断することができないという問題があります。
走行開始と走行終了の時刻の時間差から適切な一方を選択
この発明のサーバでは、同一の車両の走行情報が2つの経路でサーバに送信された場合、2つの走行情報が同時期のものであるかを判定し、適切な一方を決定します。この判定には、2つの経路でサーバに送信された同一の車両の走行情報に含まれる走行開始時刻の時間差と、走行終了時刻の時間差とが用いられます。
具体的には、走行開始時刻の時間差と、走行終了時刻の時間差とがそれぞれ所定時間(具体例は5分)以内であれば、2つの走行情報が同時期のものであると判定します。この場合、携帯端末経由で送信された走行情報を採用します。また、上記時間差のいずれかが所定時間を超えていた場合には、2つの走行情報は別の走行情報であると判定して、携帯端末経由で送信された走行情報を採用します。その他、いろいろなケースでどちらの走行情報を採用するかが規定されています。
このようにすることで、サーバは、2つの走行情報のうち適切な一方を採用します。このように取得された走行情報は、例えば統計処理がなされて車のログ情報としてドライバに提供されます。「ドライバに対して車両やドライブに対する愛着を向上させる」狙いがあります。
車両及び携帯無線端末から送信されてきた走行情報について、どちらの走行情報を採用すべきかをサーバ側で容易に判断することが可能となる。
【請求項1】
車両と携帯無線端末との両方から同一の前記車両の走行情報を受信する手段としてサーバを機能させるためのプログラムであって、
前記サーバは、
前記車両の走行の開始時刻及び終了時刻を含んだ前記走行情報を前記車両及び前記携帯無線端末からそれぞれ受信する通信部と、
前記通信部が前記携帯無線端末から受信した走行情報を第1の車両情報として記憶する第1の記憶部と、
前記通信部が前記車両から受信した走行情報を第2の車両情報として記憶する第2の記憶部と、
同一の前記車両の走行情報について、前記第2の記憶部から前記第1の記憶部へのコピーの実行が可能な制御部と、
を有し、
前記プログラムは、
前記第1の車両情報及び前記第2の車両情報に重複する走行時間が存在し、且つ、前記第1の車両情報及び前記第2の車両情報の各開始時刻の時間差と、前記第1の車両情報及び前記第2の車両情報の各終了時刻の時間差とが、どちらも所定時間内である場合には、前記第1の車両情報及び前記第2の車両情報が、同一の前記車両の同時期の走行情報であると判断し、前記第2の記憶部から前記第1の記憶部への走行情報のコピーを実行せず、
一方で、前記第2の記憶部に前記第2の車両情報が記憶され、且つ、前記第1の記憶部に記憶された前記第1の車両情報に、重複する前記走行時間が存在しない場合には、前記第2の記憶部から前記第1の記憶部への走行情報のコピーを実行する
ように前記制御部を機能させることを特徴とするプログラム。
今日のみどころ
課題は、技術の進歩によってどんどん解決されていきます。しかし課題がなくなってしまうかというとそうではなく、課題がなくなることはありません。技術の進歩がまた新たな課題を生むからです。課題を上手に設定することも、発明の効果を際立たせる技の一つといえそうです。
最近ではスマホが普及して通信の自由度が高まったことによって、たくさんの課題が生じています。どんどん発明して課題を解決していきましょう。
あと、「ドライバに対して車両やドライブに対する愛着を向上させる」狙いは、ホンダらしいですよね。すばらしい!