【特許紹介】ブロックチェーンでデータ処理権限を分散させながら利便性を維持する特許発明(UFJ銀行)

図1

 今回は、ブロックチェーンでのデータの処理に関する発明を紹介します。

 従来、データの処理権限の分散とユーザの利便性のトレードオフの問題があります。

 この発明では、複数の通信端末からトランザクションの承認を得たら、トランザクションのデータをブロックチェーンへ追加します。これにより、データ処理の権限を分散させながらユーザの利便性を向上させることができます。



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データの処理権限の分散とユーザの利便性のトレードオフの問題

 ブロックチェーンなどで管理する文書や画像などのデータの利用を、セキュリティなどを考慮して、ユーザの役割や権限によって制限することが行われています。例えば、特定のユーザにデータの閲覧や編集をさせないように制御されています。

 このような制限を行う場合、処理の権限を集中させるとデータの安全性が向上しますが、同時にユーザの利便性が低下するという関係(トレードオフの関係)があります。

 そのため、データを処理する権限を分散させながらユーザの利便性を維持することができないという問題がありました。

複数の通信端末からトランザクションの承認を得たらブロックチェーンへ追加

図4


図6

 この発明は、複数の通信端末のグループ内でデータの閲覧を許容するシステムで、不正処理を防ぐものです。

 サーバは、新しいトランザクションを実行するときに、複数の通信端末に承認の要求を送信します。この承認の要求には、新しいトランザクションのデータと電子署名などが含まれています。

 承認の要求を受けた通信端末は、受信したトランザクションのデータの正当性を電子署名を用いて検証し、検証できたら承認の信号を送信します。

 サーバは、一定の割合(例えば、1/2や2/3)に相当する通信端末から承認の信号を受信したら、その新しいデータをブロックチェーンのサーバ全体に送信して、ブロックの生成、ブロックチェーンへの追加をします。ブロックの生成は、PoWやPoSを使う従来のブロックチェーンのしくみと同じです。

 このようにすることで、データを処理する権限を分散させるとともに、ユーザの利便性を向上させることができます。

 特許第6341491号 株式会社三菱UFJ銀行
 出願日:2017年2月21日 登録日:2018年5月25日

【課題】
データの処理権限を分散させ、データを共有する複数のユーザに対する利便性を維持しつつ、データを安全に管理・利用することができる信号処理方法、およびこの信号処理方法を実行するためのプログラムを提供する。
【請求項1】
 複数のノードにより構成されるグループにおいて共有されるデータに対するトランザクションの実行に対する承認要求信号を前記複数のノードの少なくとも一つに送信する手順と、
 前記承認要求信号を受信した前記複数のノードのうちの一定割合に相当するノードより承認信号を受信する手順と、
 受信した前記承認信号の承認に基づき、前記トランザクション、および前記トランザクションの電子署名をブロックチェーンネットワークにブロードキャストし、前記トランザクションに関する情報を含むブロックをブロックチェーンに追加することによって前記トランザクションを実行する手順とを含む信号処理方法。

今日のみどころ

 ブロックチェーンに格納するデータの処理の権限を分散させる発明です。

 こういうのは実際にどのような場面で役に立つのかいまいちつかみきれていませんが、特許的にはそれでいいと思います!勉強になってます。