すれ違い通信での受信漏れを防ぐ特許発明(カシオ)を紹介

図1

 今回は、すれ違い通信に関する発明を紹介します。

 従来、すれ違い通信で受信漏れが発生してしまう問題がありました。

 この発明では、データの受信履歴を使ってサーバで受信漏れを判定します。これにより、すれ違い通信での受信漏れを防ぎます。



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すれ違い通信で受信漏れが発生してしまう問題

 従来、スマホやゲーム機ですれ違い通信によってデータを交換することができます。すれ違い通信では、すれ違った短時間の間にデータ交換が可能です。

 すれ違い通信ではない従来型の無線通信では、通信の接続を確立した後でデータ通信をすることがよく行われますが、すれ違い通信では、省電力化のため接続を確立しないで通信を行います。

 接続を確立しないと、通信の双方向性が保障されず、受信漏れが発生することがあるという問題があります。

データの受信履歴を使ってサーバで受信漏れを判定

図6


図7

 この発明は、複数の端末がサーバと通信するときに、端末でのデータの受信漏れを防ぐことができます。

 複数の端末それぞれは、自分の識別データを他の端末に送信するとともに、他の端末から識別データを受信します。そして、他の端末から受信した識別データをサーバに送信します。

 サーバは、複数の端末それぞれから、端末それぞれが他の端末から受信した識別データを受信します。そして、受信漏れが発生している端末を特定します。

 例えば、サーバは、端末AとCがあるときに、端末AがCからの識別データを受信しておらず、端末CがAからの識別データを受信している場合、端末Aは、Cからの識別データの受信漏れをしていると判定します。

 受信漏れをしている端末を判定したら、サーバは、受信漏れをしている端末に、受信漏れをしたデータを送信します。この例では、端末Aに、Cからの識別データを送信します。このようにして、すれ違い通信での受信漏れを防ぐことができます。

 通信規格は一例として、BLE(Bluetooth Low Energy)が想定されています。

 特許第6036675号 カシオ計算機株式会社
 出願日:2013年12月25日 登録日:2016年11月11日

【課題】
すれ違い通信における受信漏れを抑制することができ、仮想的に通信の双方向性を確保する。
【請求項1】
 端末間で所定の通信プロトコルによる無線通信を行う複数の通信端末と、前記複数の通信端末と所定の通信回線を介して接続されるサーバと、を備える通信システムであって、
 前記複数の通信端末は、
 他の通信端末から送信された当該他の通信端末を識別するための識別情報を受信する第一の受信手段と、
 前記第一の受信手段により受信された識別情報を前記所定の通信回線を介して前記サーバに送信する第一の送信手段と、を備え、
 前記サーバは、
 前記通信端末から送信された識別情報を受信する第二の受信手段と、
 前記第二の受信手段により受信された識別情報に基づいて、前記複数の通信端末のうち、識別情報の受信漏れが生じた通信端末を特定する特定手段と、
 を備えることを特徴とする通信システム。

今日のみどころ

 端末同士のすれ違い通信での受信漏れを防ぐ発明です。端末それぞれが受信したデータをサーバに送って、サーバですれ違い通信の受信漏れがあったことを判定するという流れです。

 サーバが介在してしまうと、すれ違い通信のおいしさが半減するような気もしますが、この課題の解決としてはこれでいいと思います。別の問題がでたら、また別の解決をしたらよいですから。特許はそんな感じでOKです。