すれ違い通信の相手の位置に基づく表示位置にキャラクタを表示してゲームを面白くする特許発明(スクウェアエニックス)を紹介

図9

 今回は、すれ違い通信に関する発明を紹介します。

 従来、ゲーム機で各プレイヤが行う対戦の回数が限られるという問題がありました。

 この発明では、すれ違い通信で得た相手の位置情報に基づいて、キャラクタの画面上の表示位置を制御します。これにより、ゲームの興趣を高める(ゲームを面白くする)ことができます。



 ※特許の本の紹介。
 特許の申請(出願)をする技術者や研究者が知っておかないといけない特許の知識がわかりやすくまとめられている良著です。

各プレイヤが行う対戦の回数が限られる問題

 無線通信が可能なゲーム機で行うためのRPG(ロールプレイングゲーム)が提供されています。このようなRPGでは、近くにあるゲーム機と無線通信によって情報をやりとりすることで、他のプレイヤと対戦したり、目的を達成したりしてゲームを進めていきます。

 複数のプレイヤ(ゲーム機)が集まっている場所でゲーム機同士で対戦をする場合、各プレイヤが行う対戦の回数が限られてしまうという問題がありました。

 1対1対戦をする場合、まだ対戦をしていないプレイヤにとっては対戦相手を探してから対戦しないといけないためです。

すれ違い通信で得た相手の位置情報に基づいて、画面上の表示位置を制御

図1


図9

 この発明のゲーム機(ビデオゲーム処理装置)は、近くに位置している他のゲーム機と近距離無線通信で接続し、近距離無線通信によってプレイヤ情報を受信します。プレイヤがゲーム機をもって移動しながら、すれ違い通信によって近くのプレイヤの情報を受信します。

 受信したプレイヤ情報は、このプレイヤ情報を受信したときのゲーム機の位置情報を対応付けて、記憶されます。

 そして、ゲーム機は、プレイヤ情報を受信したときの位置情報に基づいてゲームを制御します。具体例として、この位置情報に基づいて対戦相手の画面上の表示位置を変更するというようなアイデアがあります(明細書の段落0089)。

 このようにすることで、画面上のキャラクタの配置を工夫してゲームの興趣(きょうしゅ)を高めることができます。(ゲームを面白くすることができます。)

 特許第5558509号 株式会社スクウェア・エニックス
 出願日:2012年3月23日 登録日:2014年6月13日

【課題】
通信によって取得可能なゲーム情報の利用制限を緩和させ、通信機能をより有効に利用できるビデオゲームを提供する。
【請求項1】
 表示装置の表示画面にゲーム画面を表示してビデオゲームの進行を制御するビデオゲーム処理装置であって、
 前記ビデオゲームに関する所定情報を記憶する記憶手段と、
 自装置の近隣所定範囲内に存在する通信相手となる他装置を探索して自動的に無線接続し、該他装置から端末間における近距離無線通信によって配信された当該他装置に記憶されたプレイヤ情報である他プレイヤ情報を受信する他プレイヤ情報受信手段と、
 該他プレイヤ情報受信手段により受信された他プレイヤ情報と、当該他プレイヤ情報を受信した際の自装置の位置を示す受信位置情報とが対応付けされるように前記記憶手段に記憶された所定情報を更新する更新手段と、
 前記受信位置情報と配置優先度とが関連付けされた特定の配置規則に従って、前記ビデオゲームの進行を制御する制御手段とを含む
 ことを特徴とするビデオゲーム処理装置。

今日のみどころ

 ゲーム機がすれ違い通信を利用してやり取りした情報によってゲームの進行が変わっていくというアイデアです。近距離無線通信を利用することと、位置情報を使うことを掛け合わせると技術のおもしろみが出やすくなって、よいと思います。

 あと、ゲームに関する発明は、ゲームの内容をそのまま請求項に記載すると特許の保護対象からはずれることがあり得ます。この特許では、「ビデオゲーム」、「ゲーム画面」、「ゲームの進行を制御する」などの表現を使って情報技術として表現することで、特許の保護対象に入れる工夫をしていると思います。参考にしましょう。

 また、ゲームを面白くすることを「ゲームの興趣を高める」と表現しています。「興趣」とは、なかなか出てこない表現ですね。勉強にあります。

 もう1点、分割出願であることもあり、課題と解決方法と効果のつながりが少々不自然ですが、これくらいは許容範囲ということでしょう。いろいろな面で参考になる特許です。