【特許紹介】すれちがい端末の位置と時刻を共有する特許発明(京セラ)

図2

 今回は、すれ違い通信によって端末の位置を知る技術に関する発明です。

 従来、すれちがい端末の情報をネットワーク経由でアップロードすると、ネットワーク障害時に利用できないという問題があります。

 この発明では、すれちがった端末のIDと位置と時刻をWi-FiやBlutoothなどの近距離無線通信で取得して、その後に別のすれちがい端末に送信します。これにより、端末がいつどこにいたのかを知ることができます。



 ※特許の本の紹介。
 特許の申請(出願)をする技術者や研究者が知っておかないといけない特許の知識がわかりやすくまとめられている良著です。

すれちがい端末の情報をネットワーク経由でアップロードするとネットワーク障害時に利用不可

 スマホや携帯電話などの端末がいつどこにいたのかを知りたいニーズがあります。

 従来、すれ違った端末との近距離無線通信をする端末が、すれ違った端末の情報をネットワーク経由でアップロードすることで、所定のエリアを移動している端末の位置を推定する技術があります。

 このような技術では、災害時などネットワークに障害が発生した場合に、相手の端末の位置情報を取得することができないという問題があります。

すれちがった端末のIDと位置と時刻を、別のすれちがい端末に送信

図1


図3

 この発明では、ネットワークやサーバを介さずに端末同士で、端末がいつどこにいたのかを知ることができます。

 端末は、他の端末とすれちがって近距離無線通信(Wi-Fi, Bluetooth, ZigBee, RFIDなど)をしたときに、すれちがった相手の端末のIDを取得します。また、そのときの端末の位置情報と時刻情報を履歴データとして記憶します。

 その後、別の端末とすれちがうと、自機のIDとともに、記憶していた履歴情報を別の端末に近距離無線通信によって送信します。

 履歴データは、その端末が過去にすれちがった端末と、そのすれちがいの位置および時刻を示すデータです。なので、このように履歴データをやりとりすることによって、いろいろな端末が、いつどこで別の端末とすれちがったかが、端末同士で共有した状態になります。

 このようにして、ネットワークやサーバを介さずに端末同士で、端末がいつどこにいたのかを知ることができます。

 特許第6251060号 京セラ株式会社
 出願日:2014年1月29日 登録日:2017年12月1日

【課題】
広域の通信網にアクセスすることなく、他の無線端末(すなわち他のユーザ)がいつどこにいたのかを知ることが可能な無線通信システム、無線端末および無線通信方法を提供する。
【請求項1】
 GPS衛星から自身の位置情報を取得する複数の無線端末を有する無線通信システムにおいて、
 前記無線端末は、他の無線端末と直接無線通信を行う近距離通信の機能を備え、第1の無線端末とすれちがった時に、前記近距離通信によって前記第1の無線端末のID情報を取得し、前記第1の無線端末とすれちがった時の位置情報、時刻情報および前記第1の無線端末のID情報を含むすれちがい情報を履歴データとして自端末の記憶部に記憶し、
 次に第2の無線端末とすれちがったときに、自端末のID情報と前記履歴データを前記第2の無線端末に送信することを特徴とする無線通信システム。

今日のみどころ

 すれちがい通信によって、端末の過去の位置がわかるようにする技術です。

 端末同士の近距離通信で端末のIDをやりとりするアイデアは従来あると思いますが、それに位置情報と時刻情報と絡めて、端末の位置の特定に利用しているのが新しいのだと思います。

 けっこうシンプルでありがちなアイデアではあると思うのですが、位置情報と時刻情報とのからみでうまく特許をとれているのかなと思います。上手だなと思います。