【特許紹介】前方の一部を強調した画像を見せて視覚を補助する装着型表示装置の特許発明(ソニー)

図1

 今回は、メガネのように装着する表示装置に関する発明を紹介します。

 従来の表示装置は、ユーザの視覚の補助などをするものではありませんでした。

 この発明の表示装置は、前方を照らして画像を撮影し、一部を強調してユーザに見せる"スカウター"型表示装置です。これにより、ユーザの視覚の補助をすることができます。

 特許第6137113号 ソニー株式会社
 出願日:2014年10月24日(分割の原出願日2006年9月27日) 登録日:2017年5月12日



 ※特許の本の紹介。
 特許の申請(出願)をする技術者や研究者が知っておかないといけない特許の知識がわかりやすくまとめられている良著です。

従来の装着型表示装置は視覚の補助などをしない

 ユーザの目の前に装着される眼鏡型や頭部装着型の表示装置があります。このような表示装置は、ユーザの目の前の景色(外景)とともに画像をユーザに見せるタイプのものと、外景は遮断して画像のみをユーザに見せるタイプのものがあります。

 しかし、従来の表示装置では、ユーザの視覚の補助や、視覚能力の拡大という観点での制御を行うものはありませんでした。

前方を照らして画像を撮影し、一部を強調してユーザに見せる"スカウター"型表示装置

図2

図6

 この発明の表示装置は、ユーザの目の前に装着される透過型の表示装置です。この表示装置には、ユーザの目の前の景色(外景)を撮影するカメラが搭載されており、ユーザから見える外景に重ねて画像を表示します。

 表示する画像は、表示装置が備えている照明によって前方を照らします。また、周囲の明るさの情報をセンサ又はWi-Fiなどの通信によって得ます。そして、カメラで撮影した外景の画像の一部を、周囲の明るさに応じて強調表示した画像です。そのため、照らさない場合よりも鮮明な映像をカメラで撮影することができ、その鮮明な映像を表示してユーザに見せることができます。

 例えば、外景が図6の(a)のように不鮮明な文字になっている場合に、表示装置は、前方を照らして撮影することで図6の(b)のような鮮明な画像を撮影して表示します。ユーザは、通常であれば図6の(a)のような不鮮明な文字を見るところ、表示装置により図6の(b)のような鮮明な文字を見ることができます。

【課題】
ユーザの視覚の補助や拡張を実現する。さらには、視覚の補助や拡張を実現する表示動作や撮像動作の制御に関して、外界の状況(周囲の環境、被写体、日時、場所等)に応じて、的確な動作制御が行われるようにする。
【請求項1】
 頭部装着型の表示装置であって、
 外景に重ねて視認される画像を表示する表示部と、
 外景を撮影する撮像部と、
 周囲環境センサ、画像解析部又は通信部の少なくとも1つ以上を有し、それぞれから周囲の明るさに関する情報を取得する外界情報取得部と、
 前記撮像部により撮影された撮影画像から対象物を検出する画像処理部と、
 前記撮像部による撮像方向に対して照明を行う照明部と、
 前記表示部により、前記外景に重なって前記外景の一部を強調する強調表示画像を周囲の明るさに応じて画質を調整して表示させると共に、前記外界情報取得部で取得された周囲の明るさの状況を判定できる情報に基づいて、ユーザの視認対象が視認し易い状態となるように前記照明部による照明動作の制御を行う制御部と
 を備えた表示装置。

今日のみどころ

 最近では、このタイプの表示装置を使ったVR(仮想現実)やAR(拡張現実)のアプリケーションが流行っていますが、この出願の出願日(分割の原出願日)が2006年というのが少し驚きです。2006年の段階でこのようなアイデアが検討されていたということがわかります。カメラや表示装置などのデバイスは2006年当時に既に存在していたわけですが、それらを組み合わせてうまくアプリケーションの形に作り上げています。あと、分割出願を経て、11年ごしで特許をとるあたり、いまでも重要な技術と考えられているんでしょうね。
 このタイプの表示装置って、漫画のドラゴンボールのスカウターを現実のものにしたという感じですよね。映画とか漫画とかから発明の着想を得ることもたまにありますね。