【特許紹介】グループ鍵の更新に失敗してもブロードキャスト受信できる特許発明(パナソニック)

 今回は、Wi-Fiなどでのブロードキャスト送信に使われる暗号鍵(グループ鍵)に関する特許を紹介します。

 従来、グループ鍵の更新に失敗するとブロードキャスト受信できない問題があります。

 この発明では、グループ鍵の更新に失敗した端末を見つけてユニキャストで最新のグループ鍵を送信します。これにより、その端末がブロードキャストを受信できるようになります。



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グループ鍵の更新に失敗するとブロードキャスト受信できない問題

 Wi-Fiなどの無線通信で、1対1の通信であるユニキャストと、1対多の通信であるブロードキャストやマルチキャストが使われます。
 
 無線通信のデータは暗号化されていますが、ユニキャストとブロードキャストの暗号化には別々の鍵が使われます。ブロードキャストの暗号化に用いられる鍵であるグループ鍵(*1)は複数の端末で共通であり、一定時間ごとに更新されます。

 しかし、端末によっては更新が失敗することがあり、その場合、更新が失敗した端末だけがブロードキャストの通信パケットを受信できないという問題があります。

 グループ鍵:GTK(Group Transient Key)ともよばれます

グループ鍵の更新に失敗した端末を見つけてユニキャストでグループ鍵を送信


 この発明の無線ネットワークでは、端末が最新のグループ鍵を持っているかどうかを制御装置によって確認します。この確認のときには、端末が送信する通信パケットに含まれる識別子が最新のグループ鍵に対応した識別子かどうかを判定します。

 鍵の更新は、複数の端末に対して制御装置から一斉に鍵を送信することでなされます。この通信にロスがあると、一部の端末のグループ鍵の更新が失敗し、つまり、更新されずに古いままになります。

 グループ鍵の更新が失敗すると、グループ鍵の識別子の判定によって、最新のグループ鍵をもっていない端末を見つけることができます。その場合、その端末に対してユニキャストで最新のグループ鍵を送信します。

 このようにして、更新が失敗した端末を見つけて、その端末に新しいグループ鍵をユニキャスト送信することでグループ鍵を更新します。これによりこの端末もブロードキャストを受信できるようになります。

 特許第6108235号 パナソニックIPマネジメント株式会社
 出願日:2014年1月10日 登録日:2017年3月17日

【課題】
グループ鍵の更新に失敗した場合であっても通信を行うことができる鍵情報制御装置、鍵情報更新装置、プログラム及び記録媒体、鍵情報更新方法、鍵情報更新システムを提供する。
【請求項1】
 複数の通信機器を含むネットワークにおいて使用されるグループ鍵を制御する鍵情報制御装置であって、
 前記グループ鍵が更新される度に変更される鍵識別子を変更し、前記鍵識別子及び新たなグループ鍵を生成する鍵管理手段と、
 前記通信機器から送信された情報のうち前記鍵識別子を参照して、マルチキャスト通信によって送信したグループ鍵を受信していない前記通信機器を検出する通信品質検出手段と、
 前記鍵管理手段により生成された前記鍵識別子及び前記グループ鍵をマルチキャスト通信によって複数の通信機器に送信するマルチキャスト通信手段と、
 前記通信品質検出手段によりグループ鍵を受信していない前記通信機器が検出された場合に、当該通信機器に、再送機能付きユニキャスト通信によって前記グループ鍵を送信するユニキャスト通信手段と
 を備える鍵情報制御装置。

今日のみどころ

 Wi-Fiで使われているグループ鍵の更新に関する特許発明です。

 グループ鍵は、Wi-Fiの通信で普通に使われているのですが、あまり有名でないというかマイナーなので特許も少ないような気がします。Wi-Fiの通信でなにか問題が起きたときにグループ鍵に関する動作が原因であることもあるので、グループ鍵のことも知っておきましょう。

 グループ鍵の動作を変えることで解決できれば特許になることが多いかもです。