【特許紹介】認証情報を含めたウェイクアップ信号で端末を起動させるWi-Fiアクセスポイントの特許発明(NEC通信システム)

 今回は、スリープ状態のWi-Fi端末を起動(ウェイクアップ)させる技術に関する特許を紹介します。

 従来、Wi-Fiアクセスポイントと端末との接続に時間がかかるという問題があります。

 この発明では、Wi-Fiアクセスポイントから端末に認証情報を含むウェイクアップ信号を送信します。端末は、ウェイクアップ信号に含まれる認証情報を用いてアクセスポイントと通信できるので、接続までの時間を短くできます。



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Wi-Fiアクセスポイントと端末との接続に時間がかかる問題

 スマホとアクセスポイントとの通信にWi-Fiが使われています。

 Wi-Fiなどの通信システムにおいて、通常はWi-Fi通信の設定をOFFにしておいて、Wi-Fi通信を利用できるときだけ設定をONにするウェイクアップシステムがあります。

 Wi-Fi通信の設定をONにしているだけで受信待ちのための待機電力を消費するので、ウェイクアップシステムによって消費電力を抑制する効果があります。

 しかし、Wi-Fi基地局(アクセスポイント)が端末(スマホ)との通信を接続するためには、端末による通信チャネルのスキャン、接続や認証のための通信などを行う必要があり、通信ができるようになるまでにある程度の時間がかかるという問題があります。

Wi-Fiアクセスポイントから端末に認証情報を含むウェイクアップ信号を送信

 この発明の基地局は、ウェイクアップ信号を周囲に送信することで、このウェイクアップ信号を受信した端末のWi-Fi通信をONにして、当該基地局に接続させる動作をします。

 このウェイクアップ信号の中に、基地局と端末との認証に使われる認証情報が含められています。認証情報は、具体的には、ESSID(無線通信の識別子)、MACアドレス、ユーザ名とパスワードなどが用いられます。

 端末は、基地局からウェイクアップ信号を受信すると、受信したウェイクアップ信号に含まれる認証情報を用いて基地局との認証を行います。

 従来の端末は、端末が基地局と接続した後に基地局から取得する認証情報を用いて基地局と接続するようになっています。この発明では、認証情報がウェイクアップ信号に含まれているので、接続後に基地局から認証情報を取得する必要がないので、そのように認証情報を取得する時間を省くことができます。

 このようにして、端末が基地局との通信を開始するために要する時間を短くすることができます。

 特許第6168624号 NEC通信システム株式会社
 出願日:2014年9月5日 登録日:2017年7月17日

【課題】
ウェイクアップ信号を用いるシステムにおいて、通信が確立するまでに時間がかかるという問題、を解決する基地局を提供する。
【請求項1】
 無線端末に対して当該無線端末に装備された所定の機能を起動させるウェイクアップ信号を含む送信信号情報を基地局に帰属させる処理を経ずに無線通信にて送信するウェイクアップ信号送信部を備え、
 前記ウェイクアップ信号送信部は、前記ウェイクアップ信号に、当該ウェイクアップ信号の送信先である前記無線端末が前記所定の機能を用いて無線通信にて接続するための接続情報を加えて前記送信信号情報として前記無線端末に送信し、
 前記ウェイクアップ信号送信部は、前記ウェイクアップ信号と前記接続情報とに、前記無線端末と前記基地局との間で行われる認証処理に必要となる認証処理情報を加えて前記送信信号情報として送信する、
 基地局。

今日のみどころ

 Wi-Fiのウェイクアップシステムに関する特許発明です。ウェイクアップ信号に認証情報を含めているのがポイントです。

 スマホがWi-Fiアクセスポイントからのウェイクアップ信号でウェイクアップしてそのアクセスポイントに短時間で接続するようになり、しかもWi-FiアクセスポイントがないときはWi-FiをOFFにしておくことができるようになります。

 特許的には、比較的わかりやすい短い言葉で、余計な言葉もなく請求項1が作られていてとても上手だと思います。不要な限定のない、広い権利範囲をカバーできていると思います。