端末側とネットワーク側の速度比でスリープ制御するモバイルルータの特許発明 NTTBP

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 アクセスネットワークを経由してインターネットに接続するとともに、無線端末と接続し、無線端末にインターネット接続を提供する無線中継装置でのスリープ制御に関する発明です。この無線中継装置は、モバイルルータに相当するものです。

 この無線中継装置は、複数のアクセスネットワークのいずれかの通信速度と、無線端末との通信の通信速度との比に基づいてスリープ期間の長さを算出してスリープ制御します。これにより消費電力量の削減の効果があります。

 特許第4527162号(特開2010-21878) エヌ・ティ・ティ・ブロードバンドプラットフォーム株式会社
 出願日:2008年7月11日 登録日:2010年6月11日



 ※特許の本の紹介。
 特許の申請(出願)をする技術者や研究者が知っておかないといけない特許の知識がわかりやすくまとめられている良著です。

無線中継装置の通信IFの速度の差に起因した無通信期間の電力消費が問題

 一般に、携帯電話回線(3G,3.5Gなど)又はWiMaxなどのアクセスネットワークの通信速度は、比較的近距離で使用するWi-Fiの通信速度より低いです。そのため、無線端末が無線中継装置を経由してインターネットにアクセスするとき、アクセスネットワーク側の帯域使用率に比べて近距離通信側の帯域使用率が低くなり、近距離通信側の通信帯域に空きができます。

 通信帯域が空いている期間中は、データ通信を行わないのに通信可能な状態を維持しており、この期間中の電力消費が余剰であるといえます。つまり、無線中継装置の通信インタフェースの速度の差に起因した無通信期間が生じているといえます。

無線IFの通信速度比から無通信期間を算出してスリープ制御

 本発明の無線中継装置は、データ通信を行わないのに通信可能な状態を維持している期間を通信速度比から求めて、その期間の分だけスリープ状態にするよう制御します。

 また、無線中継装置がスリープ状態に入ることを無線端末に通知し、スリープ期間中に無線端末が通信フレームを送信することを抑制することで、通信の失敗を防ぎます。これにより、無線中継装置の消費電力量を削減することができます。

【課題】
無線端末と接続し、移動中あるいは移動先においてサービスされている無線インタフェースに関わらず無線端末に通信をさせる無線中継装置を提供することにある。
【請求項1】
外部のネットワークに接続して通信を行い、それぞれが異なる通信規格により通信する第1の通信インタフェース部を複数備える第1の通信部と、
無線端末に接続して通信を行う第2の通信インタフェース部を備える第2の通信部と、
前記複数の第1の通信インタフェース部の中から1つの第1の通信インタフェース部を選択するインタフェース選択部と、
前記第1の通信部と前記第2の通信部とに接続され、選択された前記第1の通信インタフェース部と前記第2の通信インタフェース部との間の通信データの中継を行う中継機能部と、
を具備し、
前記中継機能部は、
選択された前記第1の通信インタフェース部の通信速度と、前記第2の通信インタフェース部の通信速度とに基づいて通信速度比を算出し、該通信速度比を前記第2の通信インタフェース部に出力し、
前記第2の通信インタフェース部は、
前記通信速度比に基づいてスリープ期間を算出して、該スリープ期間を前記無線端末に送信して、スリープ状態になる
ことを特徴とする無線中継装置。

今日のみどころ

 無線中継装置のアクセスネットワーク側と無線端末側との通信速度の差に着目し、この差から生じる通信不能期間の分の電力消費を削減する発明です。また、上記差は、アクセスネットワーク側と無線端末側との通信速度の比から求められます。

 3G、3.5G、WiMaxといった携帯電話回線のほか近年ではLTEによるインターネット接続もできるようになっています。また、モバイルルータの他にも、インターネットに接続した携帯端末が、他の携帯端末のインターネット接続を中継する通信形態(テザリング)もあります。そのため、この発明のようなモバイルルータの消費電力の低減のための技術が適用されうる場面は今後も多くあると思われます。

 なお、請求項1の通信速度比に関する技術は、第4実施形態に記載されています。