Wi-Fiのビーコンを利用して農業機械の状態を送信できる発明 クボタ

図1

 従来、農業機械の状態を無線通信経由で知るにはさまざまな処理が必要があり容易でないという問題がありました。

 この発明では、農業機械がWi-Fiのアクセスポイントになっていて、アクセスポイントの状態をSSIDに含めてのビーコンで送信します。これにより、無線通信を確立せずに農業機械の状態をスマホに送信できます。

 特許第6154712号 株式会社クボタ
 出願日:2013年9月30日 登録日:2017年3月30日



 ※特許の本の紹介。
 特許の申請(出願)をする技術者や研究者が知っておかないといけない特許の知識がわかりやすくまとめられている良著です。

無線通信相手の状態を知るにはさまざまな処理が必要があり容易でない

 圃場(作物を栽培する田畑)でトラクタなどの農業機械が作業したときに、その作業内容をWi-Fiの無線通信で取得することが行われています。

 無線通信でデータ通信を行うには、あらかじめ無線通信の確立をする必要があります。無線通信をしようとする端末がアクセスポイントから送信されるビーコンを受信して、ビーコンに含まれるSSIDを解析し、そのSSIDを用いて無線通信の確立をする必要があります。

 また、無線通信を確立した後に、端末が通信相手であるアクセスポイントの状態を知るには、アクセスポイントから送信される情報を受信して、受信した情報を解析する必要があります。

 このように、端末がアクセスポイントの状態を知るには、無線通信の確立、データ通信の実行、解析処理などのさまざまな処理が必要であり容易でないという問題がありました。

アクセスポイントの状態をSSIDに含めてビーコンで送信

図3

 この発明では、農業機械がWi-Fiのアクセスポイントになっていて、スマホのような端末が農業機械の状態を知りたい状況での発明です。農業機械は、その状態を示すステータス情報をSSIDに付加してビーコン信号に含めて送信します。ステータス情報は、イグニッションのオン/オフ、警告の有無、データの送信準備が整っているか否か、などの情報を含んでいます。

 例えば、初期のSSIDが「KUBOTA」であるとき、イグニッションがオンからオフになるとSSIDが「KUBOTA-S」になり、警告があるときには「KUBOTA-E」になり、データの送信準備が整うと「KUBOTA-G」になります。

 このように、農業機械の状態をビーコンに含めて送信するので、無線通信を確立することなく、農業機械の状態を無線でスマホに提供することができます。これにより、無線通信の確立、データ通信の実行、解析処理などの従来必要だった処理が不要になります。

【課題】
 アクセスポイント装置、即ち、作業機と携帯端末との無線通信が簡単に行えると共に、作業機の状態を簡単に把握することができる作業機用アクセスポイント装置を提供する。
【請求項1】
 作業機に装着されて当該作業機と携帯端末とを無線通信で接続するための作業機用アクセスポイント装置であって、
 前記作業機の状態を取得する状態取得部と、
 前記作業機用アクセスポイント装置を識別するための識別子に、前記状態取得部で取得した作業機の状態を示すステータス情報を付加する情報付加部と、
 前記ステータス情報が付加された識別子を含む送信信号を前記携帯端末に送信する通信部と、
 を備えていることを特徴とする作業機用アクセスポイント装置。

今日のみどころ

 無線通信を確立しないで無線で情報を提供するにはどうしたらよいか。この問題に対して、ビーコンに情報を載せるというアイデアに行き着くのは、簡単そうでなかなか難しいと思います。無線通信に詳しい人ほど難しいかもしれません。SSIDはアクセスポイントのIDを示すものであり、動的に変わる状態に応じて変えるようなものではないという一種の常識が邪魔をしているのかもしれません。

 こういう常識の枠にとらわれずに発想することが問題解決には大事ですよね。このようなシンプルでユニークなアイデアに特許が認めらるのがうれしいです。

 あと、請求項1が結構コンパクトにまとめられているのが良いと思います。発明のポイントの絞り込みができていて、余計な限定のない広い権利範囲が確保できていると思います。