今回は、ドローンのWi-Fiに関する発明を紹介します。今日も一緒に勉強しましょう。
従来、ドローンなどの空中で通信するWi-Fi通信装置は送信機会が得られにくいという問題がありました。
この発明では、ドローンなどのWi-Fi通信装置が地上通信装置からの電波の受信品質を測定し、送信機会が得られるように飛行高度を決定します。これにより、送信機会が得られるようになります。
特許第6201214号 株式会社KDDI総合研究所
出願日:2013年12月25日 登録日:2017年9月8日
空中でのWi-Fi通信装置は送信機会が得られにくい問題
従来、無人航空機システム(UAS)が利用されています。UASは、パイロットが登場せずに、無人で空を飛ぶ自律飛行が可能な航空機システムです。ここ数年で有名になったドローンもUASの一種です。
UASには、地上の通史装置との間でWi-Fiで通信するものもあります。Wi-Fi通信では、他の通信装置が出す電波の検出を試み(キャリアセンス)、他の通信装置が電波を出していないときに電波を出す制御を行います(CSMA/CA)。
Wi-Fiで通信するUASが上空を飛行している場合、地上の通信装置とUASとの間に障害物が少ないので、地上の通信装置が出す電波がUASに届きやすい場合があります。その場合、UASは、他の通信装置からの多くの電波を検出するため、送信機会が得られにくいという問題があります。
地上通信装置からの電波の受信品質を測定し、送信機会が得られるように飛行高度を決定
この発明では、UASの無線通信の状況に基づいて、飛行体の飛行高度を制御します。
UASは、通信相手の通信装置からの電波の受信品質を測定します。そして、電波の受信品質に基づいて、UASが送信機会を得られるか否かを判定します。送信機会が得られないと判定される場合には、送信機会が得られるように飛行高度を決定します。
例えば、送信機会が得られない場合には、飛行高度を上げることで地上の通信相手からの距離を大きくします。こうすると地上の通信相手からの電波が通信とみなされなくなり、送信機会が得られるようになります。反対に、送信機会が得られる場合には、飛行高度を維持または下げます。
このようにして、送信機会が得られないUASが、送信機会を得られるようにします。その結果、通信システム全体としてのスループットの向上、通信時間&飛行時間の短縮、UASの燃料又は電力消費の削減の効果が得られます。
なお、請求項では「飛行体」という広い表現を用いているので、自律飛行するドローンだけでなくラジコンヘリ、気球、アドバルーンなども権利範囲に入る可能性があります。
無線通信装置を搭載した飛行体の飛行高度を制御することによって、飛行体からの送信機会を確保し、スループットの向上、通信時間の短縮、飛行時間の短縮および飛行体の燃料消費またはバッテリ消費の削減を図ることができる飛行高度制御装置、飛行高度制御方法およびプログラムを提供する。
【請求項1】
無線通信装置を搭載する飛行体の飛行高度を制御する飛行高度制御装置であって、
前記飛行体に搭載されている無線通信装置および地上の無線通信装置の間で行なわれる無線通信で使用されているチャネルの品質を測定する無線品質測定部と、
前記測定したチャネルの品質に基づいて、前記飛行体に搭載されている無線通信装置の送信機会が得られるか否かを判断し、前記送信機会が得られる前記飛行体の飛行高度を決定する飛行高度決定部と、を備え、
前記飛行体を前記決定した高度で飛行させることを特徴とする飛行高度制御装置。
今日のみどころ
災害などで通信手段が失われた場合に、Wi-Fiのアクセスポイントを搭載したドローンを飛ばして、通信接続を確保することも行われます。このようなドローンに適用され得る発明です。
多数のWi-Fiアクセスポイントが地上(地面付近)だけでなく空中に設置されるようになっています。そのため、Wi-Fi通信可能なエリアが、地上だけの二次元的な広がりだけでなく、高さ方向を含めた三次元的な広がりを持つようになってきています。この新しい通信インフラを利用してどんなサービスができるか考えてみましょう。