周囲の無線通信のアイドル時間が長いとスマホアプリを起動許可する特許発明(ATR)を紹介

図7B

 今回は、スマホアプリの起動の制御に関する発明を紹介します。

 従来、スマホなどの受信信号強度だけでは通信できるか判断できないという問題がありました。

 この発明では、周囲の無線通信のアイドル時間が長い場合に、スマホアプリの起動を許可するように制御します。これにより、周囲の無線通信の通信品質に基づいて、アプリを起動させることができます。

 特許第6118968号 株式会社国際電気通信基礎技術研究所
 出願日:2013年3月21日 登録日:2017年4月7日



 ※特許の本の紹介。
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受信信号強度だけでは通信できるか判断できない

 スマホなどの無線LAN(Wi-Fi)通信をする装置は、通信相手の基地局からの電波の受信信号強度(RSSI)を品質の目安としています。例えば、スマホや携帯電話の画面上のアンテナの本数として表示しています。

 しかし、実際の通信品質は、基地局からの電波の受信信号強度だけでは正しく判断できないことが知られています。通信回線の混雑によって通信機会が得られなかったり、通信ロスが発生したりします。

 そのため、基地局からの電波の受信信号強度だけでは、スマホ上のアプリ(アプリケーション)による通信ができるかどうかが判断できないという問題がありました。

アイドル時間が長い場合にスマホアプリを起動許可

図1


図7B

 この発明では、スマホなどの通信装置は、他の無線通信装置からの電波の受信待ち(キャリアセンス)をし、アプリ(アプリケーション)の通信をすることができるか判断し、そのアプリを起動させるかどうかを制御します。

 この判断は、具体的には、他の通信装置からの電波を受信しない時間(アイドル時間)が、バックオフ時間より長いかどうかによりなされます。バックオフ時間というのは、無線通信での衝突回避のための待ち時間です。つまり、アイドル時間のうちに、自装置が出力しようとする通信パケットが送信し終わるようにすることができる場合に、その通信パケットを送信できると判断します。

 これにより、基地局から受信する電波の受信信号強度だけでなく、実際の通信の混雑の度合いに応じて通信品質を判定し、その通信品質で動作できるアプリを起動させることができます。

【課題】
、無線通信を行う装置において、アプリケーションによる通信を行うことができるかどうかを判断する。
【請求項1】
無線LANによる無線通信を行う通信部と、
無線通信に関する通信状況を、キャリアセンスにより無線通信のアイドル状態の期間に関する情報として、前記通信部を介して取得する取得部と、
アプリケーションが記憶される記憶部と、
前記取得部が取得した通信状況を用いて、前記アプリケーションによる通信を行うことができるかどうか判断する判断部と、
前記判断部による判断結果に応じた出力を行う出力部と、
前記記憶部で記憶されている前記アプリケーションの起動の指示を受け付ける受付部と、前記受付部が起動の指示を受け付けた前記アプリケーションを起動する実行部と、を備え、
前記判断部は、前記受付部により前記アプリケーションの起動の指示を受け付ける前に、前記アイドル状態の期間が、前記無線LANのバックオフ時間よりも長いことに応じて、前記記憶部で記憶されている前記アプリケーションによる通信を行うことができると判断し、
前記受付部は、前記判断部の判断結果に応じて前記出力部により通信可能であると表示された前記アプリケーションに対する起動の指示を受け付ける、通信可否判断装置。

今日のみどころ

 携帯電話の電波強度表示のアンテナが3本立っている、「バリ3」の状態なのに通話がうまくできないということがあります。電波強度だけで判断するとこのようなことになってしまうという例です。

 昔からある課題だと思いますが、新しい判断基準を加えてスマホアプリの挙動と絡めることで現代版になっているような感じがします。