今回は、公衆Wi-Fiの認証に関する発明を紹介します。
従来、MVNOが提供するSIMカードでは公衆無線LAN(公衆Wi-Fi)の認証ができない問題があります。
この発明では、MVNOスマホからAPN情報を取得して無線LANの認証に利用します。これにより、MVNOが提供するSIMカードで公衆無線LAN(公衆Wi-Fi)の認証ができるようになります。
特許第6205391号 西日本電信電話株式会社
出願日:2015年7月2日 登録日:2017年9月8日
MVNOが提供するSIMカードでは公衆無線LANの認証ができない
スマホが公衆無線LAN(公衆Wifi)を利用してインターネットに接続するときに認証が行われます。
この認証の方式として、スマホの携帯電話回線のSIMカードの情報を用いた方式(EAP-SIM認証方式やEAP-AKA認証方式)があります。SIMカードは、携帯電話ネットワークでの加入者IDを記録したカードで、スマホ等の内部に挿入されています。
このEAP-SIM認証方式などでは、MNO(移動体通信事業者)の認証サーバを使って、そのスマホを認証し、公衆無線LANに接続させます。
MNOから携帯電話回線を借りて事業を行うMVNO(仮想移動体通信事業者)が提供するSIMカードに入っている情報は、MNOを特定する情報であり、MVNOを特定する情報ではありません。そのため、MVNOが提供するSIMカードを内蔵しているスマホは、公衆無線LANに接続することができないという問題があります。公衆無線LANに接続しようとすると、MNOの認証サーバを使って認証しようとして失敗するためです。
MNO: Mobile Network Operator 移動体通信事業者、いわゆる大手携帯キャリアのことでNTTドコモ、au、ソフトバンクなど。
MVNO: Mobile Virtual Network Operator 仮想移動体通信事業者、楽天モバイルなど
EAP-SIM: Extensible Authentication Protocol-SIM
EAP-AKA: Extensible Authentication Protocol-Authentication and Key Agreement
MVNOスマホからAPN情報を取得して無線LAN接続認証をする
この発明のアクセスポイント(基地局)は、スマホを認証するときに、スマホからAPN情報を取得します。APN情報というのは、MVNOの接続先を特定する情報です。
そして、アクセスポイントは、取得したAPN情報に従って、MVNOの認証サーバを使ってEAP-SIM又はEAP-AKAの認証をします。
このようにすることで、MVNOが提供するSIMカードを内蔵しているスマホも、EAP-SIM又はEAP-AKAの認証を利用して公衆無線LANに接続できるようになります。
移動体通信事業者の所有する通信ネットワークを借りて通信サービスを提供する仮想移動体通信事業者の通信サービスを利用する利用者端末に対して、通信サービスへの加入者を特定する情報を用いて通信サービスの利用を許可するための認証を行う認証方式を利用した場合でも、利用者端末の認証を行うことができるアクセスポイント等を提供する。
【請求項1】
移動体通信事業者の所有する通信ネットワークを借りて通信サービスを提供する仮想移動体通信事業者の前記通信サービスを利用する利用者端末に対して、前記通信ネットワークへ接続するための認証を行うアクセスポイントであって、
前記利用者端末に対して、前記認証の認証方式に基づいたリクエストである認証リクエストを送信する認証処理部と、
前記仮想移動体通信事業者を特定する第1情報の抽出依頼のフラグである要求情報を前記認証リクエストに含める要求処理部と、
を備え、
前記認証リクエストに対する応答から得られる前記第1情報に基づいて特定される前記仮想移動体通信事業者に対応する認証サーバに対して前記通信サービスの利用を許可するための認証を要求する認証要求であって、前記第1情報を含む認証要求を、前記認証要求を送信するプロキシ機能を有するサーバへ送信する送信部をさらに備えるアクセスポイント。
今日のみどころ
NTTドコモなどの大手携帯キャリアの回線を借りてサービスを提供するMVNOの普及と、携帯電話回線とWifiの両方を利用できるスマホなどの端末が携帯電話側のIDを用いてWifi認証をする技術とが掛け合わされると、MVNO端末だとWifi認証ができないという新たな問題が生まれます。この問題がこの発明の背景にあります。
時代にあわせてサービス形態や技術が進化することで新しい問題が生まれ、それを新しい発明によって解決するという流れです。新しい発明が生まれる王道パターンといってもいいかもしれません。すばらしい。