【特許紹介】カップヌードルの特許発明(日清)を紹介/容器付スナック麺の製造方法

 今回は、みんなだいすきな日清の安藤百福氏のカップヌードルの特許発明を紹介します。1975年(昭和50年)の特許です。

 従来、容器に入れる麺塊を揚げるとき、内部に熱が浸透しにくい問題、外面が焦げる問題があります。

 この発明では、カップ状型で揚げることで、上面が平坦、上部が密、下部が疎の麺塊を形成します。これにより内部に熱が浸透し、外面が焦げる問題を回避できます。その他、食欲増進の効果などもあります。



 ※特許の本の紹介。
 特許の申請(出願)をする技術者や研究者が知っておかないといけない特許の知識がわかりやすくまとめられている良著です。

容器に入れる麺塊を揚げるとき、内部に熱が浸透しにくい、外面が焦げる問題

 従来の即席麺は、厚さ約2cm程度にプレス成型した麺の塊(麺塊)を用いていました。

 この麺塊を容器に入れるとすると、厚さ6cmの麺塊を用いる必要があります。

 しかし、6cmの厚さの麺塊は、湯熱処理、つまり麺を油で揚げる処理の際に熱が内部に浸透しにくく、また、中央部を完全に揚げようとすると外面が焦げてしまうという問題があります。

カップ状型で揚げることで、上面が平坦、上部が密、下部が疎の麺塊を形成



 この発明は、容器付スナック麺の製造法に関する発明です。

 まず、揚げる前の麺を、蓋が開閉するカップ状の型に入れます。

 そして、そのカップ状の型を油に投入することで、湯熱処理、つまり揚げる処理をします。これにより、このカップ状の型の中で麺が浮き上がり、上面が平坦であり、上部が密で、下部が疎である麺塊ができます。

 次に、この麺塊よりわずかに内径が大きなカップ状の容器に、この麺塊を詰めます。

 そして、麺塊の上面つまり平坦な面の上に調味料と具をのせて、カップ状の容器を密封して完成です。

カップ内で麺が動揺しない効果、食欲増進効果、お湯による復元が早い効果

 このような麺塊の形状によりさまざまな効果があります。

 麺体の側面がカップ状容器の内側面と密接するので、カップ内で麺が動揺しなくなり、麺塊が崩れることがないという効果があります。

 麺塊の上面が平坦で密になっているので具がカップの内部に落ちず、上面の上で復元するので食欲を増進する効果があります。

 また、お湯が麺塊の内部まで十分に浸透するので、復元が早いという効果もあります。

 そして、発明の効果として「傾向食品或いはレジャー食品または備蓄食品として大衆の食生活上に貢献するところ頗(すこぶ)る大である」という記載があり、少し独特の表現で味がありますね。

 特許第924284号(特公昭50-38693号) 日清食品株式会社(発明者:安藤百福)
 出願日:1971年3月23日 公告日:1975年12月11日

【課題】
 密度の大なる麺塊は喫食するに当つて容器に入れ、熱湯を注いだ時に熱湯の浸透が悪く麺線が復元しにくい等の欠点を克服する。
【請求項1】
 小孔を形成せる金属もしくは同質の蓋を開閉自在に装着した通液性のカツプ状型に略1/2~8分目容積となる様に麺線を投入した後蓋を閉鎖して湯熱処理槽に浸漬することにより、上面が平坦にして上部が密で下部が疎なる状態の麺塊に成形し、これを型より取り出し、乾燥させた後、型と同型でこれより僅かに内径の大なるカツプ状容器に充填し、上部空間に適宜の調味料、具等を添入して密封することを特徴とする容器付スナツク麺の製造法。

 ※課題と請求項1については特許公報を参照して私が手入力をしているので、特許公報と異なる部分があれば特許公報を優先してください。

今日のみどころ

 みんなだいすきなカップヌードルの特許発明です。なにかと話題になることが多いですが、しっかり請求項を読んだことがなかったので、この機会に紹介しました。(この特許はすでに存続期間が満了しているので、特許権は存在していません。)

 湯熱処理によって、麺塊の上部を平坦にすることと、麺の粗密を適切にすることとの両方を一石二鳥で実現できるのがおもしろい特徴です。

 もっと興味がある方は、大阪府池田市の「CUPNOODLES MUSEUM(安藤百福発明記念館)」に行ってみましょう。自分だけのカップヌードル(のカップ)を作ることができたり、チキンラーメンの製造の体験もできたりして、大人も子供も楽しいです。カップヌードルの発明の内容の展示もあります。

 特許図面をみていると、お湯を入れる前のカップヌードルを容器ごと縦に切って断面を確認したくなりますね。