通信遅延のコマンド入力への影響を抑制するオンラインゲームの発明 DeNA

 ネットワークの通信遅延によりオンラインゲームの進行に不都合が生じる問題を解決する発明です。

 この発明の通信ゲームシステムでは、ゲームのコマンドが入力されてから実行されるまでに待機時間が設けられています。そして、通信遅延が生じた場合、待機時間を減らすことで通信遅延を吸収します。

 特許第6000484号 株式会社ディー・エヌ・エー
 出願日:2016年3月4日 登録日:2016年9月9日



 ※特許の本の紹介。
 特許の申請(出願)をする技術者や研究者が知っておかないといけない特許の知識がわかりやすくまとめられている良著です。

ネットワークの通信遅延によりオンラインゲームの進行に不都合が生じる問題

 インターネットなどのネットワークを介してオンラインで接続して複数人が参加できる通信ゲームシステムがあります。戦闘などを行うゲームでは、プレイヤがコマンドを入力したタイミングに基づいてゲームの進行が変化するので、コマンドの入力タイミングの先後が重要になることもあります。

 ところで、ネットワークを介した通信では通信遅延が生じます。通信遅延は、ゲーム機とゲームサーバとの間の通信路上での通信機器やケーブルの通信障害や輻輳により生じます。通信遅延の大きさは通信機器の処理負荷や他の通信の量等によって変動します。

 通信遅延が生ずると、コマンドの入力タイミングと、コマンドの実行タイミングの先後が変わってしまう可能性があります。すると、ゲームの進行に不都合が生じることがあります。具体的にいえば、後の攻撃が先に実行されて進行がおかしくなってしまいます。

待機時間を減らすことで通信遅延を吸収することで解決

 この発明の通信ゲームシステムでは、前提として、ゲーム機(ゲスト端末)からのコマンド入力の信号をサーバ(ホスト端末)が受け付けると、所定の待機時間を経過してからそのコマンドを実行するようになっています。

 そして、ゲーム機にコマンド入力がなされると、コマンドの内容と入力時刻(コマンド入力がなされた時刻)とがサーバに送信されます。

 サーバでは、入力時刻と、その入力を受け付けた時刻との差分時間を算出し、待機時間から差分時間を差し引きます(短縮します)。そして、差し引いた後の待機時間を用いてコマンドを実行します。このようにすることで、通信遅延が生じた場合にも、その通信遅延を待機時間で吸収することができます。

 なお、待機時間の間は、ゲームのキャラクタが魔法を詠唱したり、武器を構えたりするようなアニメーションが実行されるようになっており、待機時間が短縮された場合にはそのアニメーションが早送りで実行されるというアイデアも含まれています。

【課題】
通信回線を介して接続されたホスト端末及びゲスト端末を利用して行うマルチプレイゲームにおいて、ホスト端末とゲスト端末との間における通信遅延がゲームのプレイ内容に与える影響を低減する。ホスト端末とゲスト端末間におけるゲーム画面の表示変更処理タイミングのずれを低減する。
【請求項1】
 ゲームの進行に応じて適時プレイヤからコマンドが入力され、コマンドが入力されてから、当該コマンドの内容に応じて決定される待機時間後に当該コマンドを実行する処理を繰り返すゲームを進行させるためのゲームプログラムが実行されるホスト端末と、
 通信回線を介して前記ホスト端末と接続され、前記ゲームをプレイするプレイヤが利用するゲスト端末と、
 を備え、
 前記ゲスト端末は、
 前記ゲームのコマンドを入力するコマンド入力手段と、
 前記ゲームのコマンドが入力された入力時刻を取得する入力時刻取得手段と、
 前記コマンド入力手段により入力されたコマンド、及び当該コマンドの入力時刻を示す情報を前記ホスト端末へ送信するコマンド送信手段と、
 を含み、
 前記ホスト端末は、
 前記ゲスト端末からのコマンド、及び当該コマンドの入力時刻を示す情報を受信するコマンド受信手段と、
 前記ゲスト端末からのコマンドを受信した受信時刻を取得する受信時刻取得手段と、
 前記受信時刻と前記入力時刻との差分に基づいて、当該コマンドの内容に応じて決定された、当該コマンドを実行するまでの待機時間を短縮させる待機時間短縮手段と、
 を含む、
 ことを特徴とする通信ゲームシステム。

今日のみどころ

 通信を介したオンラインゲームは以前からありますが、最近ではスマホで携帯電話回線経由で利用する形態が多いと思います。一方の携帯電話回線は、MVNOによりいろいろな帯域幅でサービス提供がなされ通信遅延もさまざまです。スマホでオンラインゲームをするときの通信遅延を解決することはゲームの楽しさに直結するので重要ですよね。

 技術的には、通信遅延を吸収するための待機時間をあらかじめ設けておき、実際に通信遅延が生じたら待機時間を使って通信遅延の影響を吸収するというシンプルな発想です。

 上にも書いたのですが、待機時間が短縮された場合にアニメーションが早送りで実行されるという技術は、通信遅延の吸収のために待機時間を調整することに関連したおもしろいアイデアだと思います。すばらしい!この技術の請求項も含めておいたらおもしろかったかもしれません。