独立電源のNICからのNICビートを用いて障害箇所を特定する発明 富士通

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 この発明の情報処理システムの装置は、CPUと独立した電源のNICがNICビートを送信します。

 そして、上記装置の通信相手装置は、NICビートを受信しない場合に、ネットワークに障害が発生したことを検知します。NICビートを受信した場合には、少なくともネットワークには障害が発生していないことを知ることができます。

 このようにして、障害が相手装置にあるのか、ネットワークにあるのかの障害切り分けをすることができます。

 特許第5858144号 富士通株式会社
 出願日:2012年3月30日 登録日:2015年12月25日



 ※特許の本の紹介。
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ハートビートを受信しない場合の障害箇所の特定ができない問題

 ネットワークを介して通信する複数のサーバによる分散処理環境が利用されています。オープンソースソフトウェアによるHadoopが一例です。Hadoopでは、マスタサーバとスレーブサーバとの間で通信パケット(ハートビート)をやりとりすることで、相手の生存確認をしています。

 このハートビートを一定時間受信することができない場合、相手装置に障害が発生したのか、又は、相手装置との間のネットワークに障害が発生したのか、障害箇所を切り分けることができないという問題があります。

独立電源のNICがNICビートを送信し、NICビートを受信しないとネットワーク障害と判定

 この発明の情報処理システムの装置は、OS(オペレーティングシステム)を動作させるCPUと、NIC(ネットワークインタフェース)とが独立に電源供給を受けるようになっています。そして、NICは、OSが送信する通知信号を受け取った場合にも、受け取らなかった場合にも、通信パケット(NICビート)を送信します。

 そして、上記装置の通信相手装置は、NICビートを受信しない場合に、ネットワークに障害が発生したことを検知します(請求項1)。NICビートを受信した場合には、少なくともネットワークには障害が発生していないことを知ることができます。

 さらに、OSのハートビートが発生した場合にはOSのハートビートがNICビートに含められます。OSのハートビートが発生しない場合には、そのことを示す情報がNICビートに含められます。このNICビートが相手装置に伝えられることで、通信相手装置は、OSの障害の有無を検知することができます(請求項3)。

 このようにして、障害が相手装置にあるのか、ネットワークにあるのかの障害切り分けをすることができます。

 (用語)
 Apache Hadoop:分散処理のためのオープンソースのソフトウェアフレームワーク。Apache Hadoop[wikipedia]

【課題】
障害発生箇所を切分けることができる情報処理システム、障害検知方法および情報処理装置を提供することを目的とする。
【請求項1】
 第1の情報処理装置と、前記第1の情報処理装置を監視する第2の情報処理装置とを含む情報処理システムであって、
 前記第1の情報処理装置は、
 第1の入出力装置と、
 オペレーティングシステムが動作するプロセッサと、
 前記第2の情報処理装置と通信可能であって、オペレーティングシステムからの通知が得られない場合であっても、前記第1の入出力装置から送信する通知信号を前記第2の情報処理装置に送信する第1の入出力部と、を有し、
 前記第2の情報処理装置は、
 第2の入出力装置と、
 前記第2の入出力装置が、前記第1の入出力装置から前記通知信号を受信しなかった場合に、前記第1の情報処理装置と前記第2の情報処理装置とを接続するネットワークに障害が発生したと検知する障害検知部と、
 を有することを特徴とする情報処理システム。

今日のみどころ

 ネットワークを介して接続される相手装置の状態を確認することは、とても大事なことです。実際の現場には通信相手装置がなく、通信を通じて相手の状態を知る努力をすることになりますが、得られる情報が限定されます。そこで、この発明のように相手の死活情報を得て生存確認をする工夫が重要になります。

 相手装置の状態を確認する方法は、既にさまざまな技術が開発され、現実に用いられています。この特許ではOSとNICとが独立に電源供給されている環境を前提とした技術の新しさに特許性が認められたと推察されます。すばらしい。
 
 なお、この発明の請求項は、平易な言葉を用いて分かりやすく、また、また、限定的な言葉がなるべく少なく書かれていると思います。明細書を書く際の言葉選びの参考になります。