スマホの通信系アプリの挙動からCPU周波数を制御して電力抑制する発明 富士通

 スマホやタブレットなどで通信系アプリの動作が遅くなって消費電力が増大する問題を解決する発明です。

 この発明のスマホ等は、CPUの動作周波数の範囲の上限を変化させたときの通信量の変化に基づいて、CPUの処理能力が通信のボトルネックになっているかどうかを判定して、CPUの動作周波数の制御をします。これにより消費電力の増大を抑制します。

 特許第6048030号 富士通株式会社
 出願日:2012年9月21日 登録日:2016年12月2日



 ※特許の本の紹介。
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通信系アプリの動作が遅くなって消費電力が増大する問題

 スマホなどの携帯通信端末の消費電力削減に関する発明です。スマホは、複数のアプリを並行して実行することができます。スマホが実行するアプリには、通信によりデータを送受信しながら動作するアプリもあれば、通信をしないアプリもあります。

 スマホのCPUの処理能力は限られています。スマホが並行して実行するアプリの数が増えるとアプリの動作スピードが遅くなります。

 通信によりデータを送受信するアプリの動作が遅くなると、スマホの稼働時間が長くなり、スマホの消費電力が高くなるという問題があります。

動作周波数の範囲の上限を変化させたときの通信量の変化に基づく制御

 この発明のスマホは、CPUの動作周波数がある範囲内で可変になっており、また、その動作周波数の範囲の上限が制御可能であることを前提としています。

 そして、CPUの負荷が高いときには、動作周波数が変動する範囲の上限を変化させて、通信量が変化したかどうかを判定し、その結果に基づいて動作周波数を制御します。具体的には以下のようにします。

  • 通信量が増加した場合、CPUの処理能力が通信のボトルネックになっていると推測されるので、CPUの処理能力をさらに上昇させます。
  • 通信量が減少した場合、CPUの処理能力が通信のボトルネックになっていないと推測されるので、CPUの動作周波数の制御を一旦終わります。
  • 通信量が変化しない場合、CPUの処理能力が通信のボトルネックになっていて、そのボトルネックが解消したと推測されるので、動作周波数を直前の設定値に戻します。

 このようにして、動作周波数の範囲の上限を制御することで、通信のスループットを低下させずに、消費電力を抑制します。

【課題】
CPUの動作周波数を制御して、通信のスループットを低下させることなく、消費電力を抑制することができる携帯端末装置の制御方法、制御プログラム、携帯端末装置を提供する。
【請求項1】
 通信に関連するアプリを実行し、且つ処理の負荷に応じて動作周波数が上限値内で変化するCPUを有する携帯端末装置の制御方法に於いて、前記携帯端末装置が、
 異なる時刻における無線回線の通信量を測定し、
 前記CPUの負荷が第1閾値よりも大きいと判定され、且つ前記通信量の変動が第2閾値よりも小さいと判定された場合、
 前記CPUの動作周波数の前記上限値を変化させ、
 前記動作周波数の前記上限値を変化させることによって前記通信量に変化が生じたかどうかを判定し、
 前記通信量に変化が生じたかどうかの判定結果に基づき、前記動作周波数の前記上限値を決定し、
 前記CPUの負荷が前記第1閾値よりも大きいと判定され、且つ測定された前記通信量に基づいて、前記通信量の変動が前記第2閾値以上であると判定された場合、前記動作周波数の前記上限値を決定することを抑制する、携帯端末装置の制御方法。

今日のみどころ

 スマホのCPUの動作周波数を制御することで、通信するアプリの動作を制御して消費電力を低減させる発明です。この制御をするときに、動作周波数の上限を実際に少し変化させてみて、それに応じた通信の状況から、CPUの処理能力が通信のボトルネックになっているかどうかを判断する点がおもしろいところです。

 少し刺激を与えて、それに対する反応を見ることで状態を識別して、その後の対応を決めるという考え方です。このような方針での制御は、他の分野や状況でも使えそうです。応用を考えてみましょう。