今回は、Wi-Fiに関する特許発明を紹介します。いつもどおり一緒に勉強しましょう。
従来、無線ステーションが省電力状態でデータの受信が遅れる問題があります。
この発明では、ARPレスポンスを転送したあとに、DTIM間隔を短くし、データがあると報知して、ステーションが稼働状態を続けるようにします。これにより、無線ステーションのデータの受信が遅れることを回避できます。
無線ステーションが省電力状態でデータの受信が遅れる問題
Wi-Fiなどの無線LANが使われています。Wi-Fiでは、無線ステーション(端末,STA)の消費電力を低減させるために、無線ステーションが省電力状態と稼働状態とを切り替えながら動作しています。
無線ステーションは、省電力状態では無線通信をまったくできず、定期的に稼働状態になってデータを送信したり受信したりします。
無線アクセスポイントは、無線ステーションあてのデータがあるときには、データがあることを示す情報を含むビーコン(TIMビーコン、DTIMビーコン)を送信します。無線ステーションは、稼働状態でこのビーコンを受け取ると、その後データの受信のために稼働状態を続けます。
しかし、無線ステーションは、省電力状態ではこのビーコンを受け取ることができないので、データの受信が遅れてしまうという問題があります。
DTIM間隔を短くし、データがあると報知して、ステーションが稼働状態を続ける
この発明の無線アクセスポイントは、無線ステーションから別の無線ステーションへ送信されるARPレスポンスパケットを転送した場合に、無線ステーションあてのデータがあるかないかにかかわらず、データがあることを報知します(例えばMoredataビットを使用)。
さらに、無線アクセスポイントは、DTIM間隔を短く変更して、DTIMビーコンを短い周期で送信するようにします。少し時間が経過したらDTIM間隔を長く変更します。
無線ステーションは、DTIM間隔が短く変更され、しかも自分あてのデータが無線アクセスポイントにあることを報知されているので、しばらく稼働状態を続けるので、この間にデータを受信することができます。これにより、無線ステーションがデータを受信するまでの遅れが解消されます。
特許第5938831号 サイレックス・テクノロジー株式会社
出願日:2012年8月30日 登録日:2016年5月27日
省電力ステーションを自身に接続している無線子機として擁するアクセスポイントであって,省電力ステーションの消費電力を低減しつつも遅延の少ない無線通信を行う。
【請求項1】
無線ステーションに対するデータ通信が存在する旨のビーコンを,所定の時間間隔にて無線ステーションに向けて送信するビーコン送信手段と,
前記所定の時間間隔を変更する変更手段と,
前記変更手段による所定の時間間隔の変更を指示する,指示手段と,を備え,
前記指示手段は,
自身に接続している無線ステーションから送信されたARPリクエストに対する応答(ARPレスポンス)を当該無線ステーションに応答後,データ通信の存在の有無にかかわらず,データ発生を擬制して報知し,かつ前記所定の時間間隔を,当該応答前の時間間隔(t4)よりも短い時間間隔(t5)に変更し,
その後,所定時間経過後,前記所定の時間間隔を,当該所定時間経過前の時間間隔(t5)よりも長い時間間隔(t6)に変更する,
旨の指示をする,無線アクセスポイント。
今日のみどころ
Wi-Fiの普及が進んでいます。特にスマホでWi-Fiを利用する場合、省電力状態を利用するのでデータの受信が遅延してしまう。こういうときに、消費電力の低減と、データ受信の遅延の解消を両立させるという発明です。
メリットとデメリットがあるときに、特定の状況ではデメリットをなくしてメリットだけにする、こういう方針で考えると、うまい解決策が出ることがあります。