いまは企業でエンジニア(研究職、開発職など)をしているけど、将来もこの仕事を続けていけるのかな。この記事ではこんな不安をもっている方に、私の経験を踏まえたアドバイスをします。
この記事を読めば、エンジニアとして活躍している自分の将来の仕事の選択肢として「特許の仕事」があることがわかります。
私はネットワーク系のメーカでの研究職のエンジニアから特許事務所の転職して丸8年が経過し、いまでもエンジニア時代の知識や考え方を生かして仕事をすることができています。
私の場合、スキルアップとは別のきっかけで急に転職をする必要がでてきて特許事務所に転職することになりました。
みなさんも転職をしないといけない事態は急にやってくるかも。そのときに備えて「特許の仕事」についてちょっと知っておくとよいかもしれません。
以下で詳細に説明します。
エンジニアは魅力的な仕事
エンジニアは、ソフトウェアやハードウェアを設計して作り上げたり、複数の装置を組み合わせたシステムやネットワークを構築する仕事。エンジニアにもいろいろな種類があります。
IT・ネットワーク系を例に説明すると、例えば、スマホのアプリを使って、インターネットのサイトやSNSからいろいろな情報を得たりコミュニケーションをとったりする場合、そのスマホやそのアプリはエンジニアによって作られたものです。裏で動いているネットワークやサーバもです。
ソフトウェアエンジニア、ハードウェアエンジニア、ネットワークエンジニア、IT系でもいろいろ
IT系のエンジニアといっても、細かく言うとたくさんあります。
スマホのアプリを作るのがソフトウェアエンジニア。スマホ自体を作るのがハードウェアエンジニア。
スマホから通信相手のサーバまでをつなぐ道(ネットワーク)を作るのがネットワークエンジニア。スマホの通信相手であるサーバのソフトを作るのがサーバエンジニア(Webエンジニアとも)。なお、ネットワークエンジニアとサーバエンジニアを含めて、インフラエンジニアという言い方もあるようです。
もちろん完全に分かれているわけではないです。ネットワーク機器やサーバの内部でソフトウェアが動いているので、ネットワークエンジニアやサーバエンジニアはソフトウェアエンジニアである場合もあります。
私は、ネットワークの設計をしながら、ネットワークを制御するためのソフトウェアも作るという仕事をしていましたので、ソフトウェアエンジニアでもあり、ネットワークエンジニアでもありました。
でもエンジニアには体力も精神力も必要
エンジニアの仕事は、快適な環境でキーボードをカタカタ打っているようなのを想像されるかもしれません。一部はその通りかなと思います。基本的には肉体労働ではなくて頭脳労働だと思います。
でも、納期が近づいてくると夜遅くまで仕事をしないといけないこともでてきます。装置を現場に納品してからの検査やトラブル対応では、実際に装置が使われている現場に行って調査をする必要もあります。急に現場にいかないといけなくなることもあります。
そういうときは、体力、精神力ともに必要になってきます。快適な環境でキーボードをカタカタ打っているだけでなくて、厚い場所、寒い場所、作業がしにくい環境で仕事をしないといけないこともあります。
私は新卒から10年間エンジニアとして働いていたときに、40歳代~50歳代の上司が私たちとともに徹夜をしているのをみて、自分にはできるかなと不安になっていました。
そんな不安があったので、40歳代~50歳代になる前に転職したいなとおぼろげながら思って働いていました。
エンジニアの知識や技術をいかせるのが特許の仕事
せっかくエンジニアとしてソフトウェアやハードウェアの技術開発経験をもっているなら、転職のときには、その経験を使える仕事に就きたいですよね。
転職の時点で高く評価されれば一番良いし、そうでなくても、転職先の仕事でうまく活用できれば、高い評価を得たり、即戦力になれたりする可能性が高い。
エンジニアが別の業種に移ることを考えるなら、その選択肢の一つとして特許の仕事があります。
企業で知財部として特許の仕事をするのもよいし、特許事務所で企業の特許の権利化を担当する形もあります。
知財部の仕事や特許事務所の仕事は、エンジニアの経験がない特許技術者よりも有利になれるはずです。
実際に私の経験から、エンジニア経験がない人よりもエンジニア経験がある人の方が、以下のような利点があります。
- だいたいの技術標準を体感として知っている
- エンジニアが考えている思考の筋道や知識のバックグラウンドが想像できる
- 技術を特許にすることができてうれしいって感じられる
以下で私の経験も交えて紹介します。
だいたいの技術標準を肌感覚として知っている
特許の技術を理解するときに、だいたいの技術標準をすでに知っていると有利です。
エンジニアは、自身で研究開発をした経験から、現時点の技術で、どのくらいのことができて、どのくらいのことができないのか、自分の肌感覚として知っていますよね。
こういう感覚は、エンジニア経験があるからこそ。そして、エンジニア経験があれば、もとの経験をベースにして、技術の進歩に合わせてアップデートしていけると思います。
反対にいうと、エンジニアの経験がないとなかなかわからないこともあります。インターネット上にたくさんの情報がありますが、情報が多すぎて、この技術の現状はこれくらいの水準、という感覚はなかなかわからないものです。
例 Wi-Fiの11a/b/gから11acや11axへアップデート
例えば、私が開発をしていたときには、無線通信のWi-Fiの規格はIEEE802.11a/b/gなどが使われている時期で、その次に高速なIEEE802.11nという規格の研究が進んでいました。私はその当時に、IEEE802.11a/b/gの規格を勉強して身に付けていていました。
いまは、IEEE802.11nが普通に使われるようになり、さらに高速なIEEE802.11acやIEEE802.11axなどが使われ始めています。
こうなったときにも、Wi-Fiの基本的な部分であるIEEE802.11a/b/gの技術は残っているので、自分の知識がそのまま使えます。そして、新しい技術の部分を、いままでの知識に付け加えていく感じで勉強していけば、比較的楽に知識のアップデートをしていけます。
このようにして、エンジニア時代の技術の知識から、だいたいの技術標準の知識をアップデートしていくことができます。
エンジニアが考えている思考の筋道や知識のバックグラウンドが想像できる
特許の発明をするのはエンジニアが考えている思考の仕方、筋道が想像できると有利です。エンジニアが使っているツールや環境環境がわかるのも有利です。
エンジニアのすべての人が技術を上手に表現できるとは限らないです。開発した技術はすばらしいけど、それを上手に表現できないエンジニアがいます。今から思えば私がそうでしたし。
特許の仕事では、資料をもらったり話を聞いたりしてエンジニアの発明を理解して、書類を作ります。でも、エンジニアから出てくる情報が、矛盾しているように見えたり、つながりがわからなかったりすることがあります。
そんなとき、エンジニアとしての考え方が身についていると、こう考えているんだろうなっていうエンジニアの思考の方向性がだいたい想像できます。
ツールや開発環境も想像できる
また、同じ業種のエンジニアは、同じようなツールを使って開発を進めていることが多いです。ソフトウェアエンジニアであれば、ソフトウェアの開発ツールやデバッグツール、ネットワークエンジニアであれば、ネットワーク用の信号計測器、パケットキャプチャツールなどがあります
エンジニアが話す言葉から、あのツールのことを言っているんだなとわかると、エンジニアの話をよりよく理解できます。
そうすると、エンジニアから出てくる情報をつないで上手なストーリにすることができます。
技術を特許にすることができてうれしいって感じられる
もとエンジニアにとっては、特許を取ることができて嬉しいっていう感じを得られる利点があります。
エンジニア時代に自分の発明で特許をとった経験がある人も多いと思います。審査官に特許が認められるとうれしい。でも自分の発明はそんなに多くでないですよね。年に数件くらいでしょうか。
特許の仕事に移ると、自分ではない、他のエンジニアの発明の特許化のお手伝いをすることになります。
仕事のペースはさまざまですが、月に数件~数十件の案件を処理して、特許をとることができます。(残念ながら特許にならないものもあります。)
技術が特許になるとうれしいって感じられるのもエンジニア経験があってこそだと思います。
他のエンジニアの発明であっても、自分がかかわった出願で特許をとれるとうれしい。たくさんの『うれしい』を得られます。
エンジニアの次の仕事としての特許の仕事
このように、エンジニアから特許の仕事に移ると、有利に仕事を進めていける可能性があります。
エンジニアとして働いているけど将来は他の仕事に移りたいと思っているひとは、特許の仕事を視野に入れてみてもいいかもしれません。
なお、実際に転職のためのアクションをとろうと思うひとは、「リーガルジョブボード」がおすすめ。特に仕事をしながらの転職活動は時間もないので、プロの助けは頼りになります。知財に特化した転職サイトです。
今日のみどころ
エンジニアの次の仕事としての特許の仕事がいいよっていう話をシェアしました。
特許事務所は、特許をとる現場っていう感じがしておもしろいですよ。