特許について「アイデア特許」という言葉がちょいちょい使われますが、どんな意味なのか。
正式に決まっている用語ではないので、人によってイメージが違うかもしれません。
今回は、「アイデア特許」という言葉について説明したあと、その「アイデア特許」の出願をして特許を上手にとる方法も紹介します。企業の知財部や技術部門に有益な情報です。
私は、過去に通信系のエンジニアとして発明をする立場にいたことがあり、いまは特許事務所でクライアントのいろいろな段階の発明を出願し、特許をとるお手伝いをしています。両方わかる立場から解説します。
「アイデア特許」という用語はないけどちょいちょい使われる
企業や個人が特許をとって、事業そのものを守ったり、利益を得たりしています。特許は、技術アイデアについて認められます。
特許について、「アイデア特許」という言葉が使われます。
「アイデア特許」という言葉は、正式に決まっている用語ではないので、意味も定まっていません。なにか、特許にいくつか種類があって、そのうちの1つの種類のことを言っているのかなという感じがしますが、そのような決まりはありません。
でもちょいちょい使われます。
そこで、この記事では、以下のことを説明します。企業の知財部や技術部門の方に有益な情報です。
2.「アイデア特許」を上手にとるにはどうしたらよいか
3.「アイデア特許」の出願を上手に依頼するにはどうしたらよいか
1.「アイデア特許」の言葉はどんな意味で使われるのか。
「アイデア特許」という言葉は、思いつきのアイデアについての特許、とか、まだよく検討していない段階のアイデアについての特許、というニュアンスで使われることが多い模様。
「ジャストアイデア(just an idea)」という言葉もありますが、それと似たような感じかもしれません。
思いつきのアイデア、検討が不十分な段階のアイデア
私は特許事務所で仕事をしていて、クライアントの発明者の方から発明についての説明をうけることがあります。そのときに、「これはアイデア特許なんですが、、」のような感じで言われることがあります。
もしかすると誤解があるかもしれないので説明しますと、特許は、まだ製品になっていない技術のアイデアについても普通に認められます。
仮に、製品になっていない技術のアイデアでは特許をとることが難しいと考えている人が、そのようなアイデアについて出願しておきたいという場合、「これはアイデア特許になるんですが、、」という言葉が出てくるような気がします。
つまり、製品段階までいけばいろいろな検討ができるけど、まだそこまでいっていなくて、検討が不十分な段階という気持ちが入っていると思います。
「アイデア特許」で特許とりましょう
思いつきのアイデア、検討が不十分なアイデアでも、書面に表現できれば特許をとることはもちろんできます。むしろそのような段階で他社より先に出願する方が有利です。
他社の社員も同じ社会で似たような情報を浴びながら生活しているので、似たようなアイデアを着想している可能性があります。なので、少しでも早く出願することに気を付けるとよいかも。
以下で、「アイデア特許」を上手にとるためにはどうすればよいかを紹介します。
2.「アイデア特許」を上手にとるにはどうしたらよいか
アイデア特許をとるといっても、書面の書き方や手続は、他の特許と同じです。技術の内容を記載した書面と、発明者や出願人などの情報を記載した書面を特許庁に提出します(*1)。
「アイデア特許」について出願の準備をするにあたって、他の出願と異なるのは、技術の内容を記載した書面を準備するのが難しいということがあるかもしれません。。
思いつきであったり、検討が不十分であったりする段階では、出願するのに十分な資料の準備ができていないと思います。
でも発明者も忙しくて、なかなか資料を作成できる状態にない。もしかすると、資料の書き方がよくわからなくて困っているのかも。
ではどうすればよいか。そんなときには、信頼できる、経験豊富な特許事務所が頼りになります。
*1: なお、特許の制度や、手続きについては、この基本書がお勧めです。最新の法改正に対応しており、この本1冊で充分な知識が得られます。
特許事務所に依頼 必要な内容を補って出願にもっていく
このような出願案件は、特許の専門家である弁理士/特許事務所に依頼するのが特におすすめです。
特許事務所には、さまざまな企業や個人から、日々、さまざまな段階の発明の出願の依頼が来ています。特許事務所の中の人は、日々、そのような依頼を適切に処理しています。
ある程度、技術としてまとまっているものももちろんあります。一方、図面1枚とか、3~5行くらいの説明しかないものもあります。このようなのが、上記でいう「アイデア特許」にあたるものです。
そのような発明の案件を1つ1つ、必要な内容を補って出願できる状態にもっていくのが特許事務所の仕事です。
実施例(実施の形態)の記載もまかせる
特許をとるには、新規性や進歩性という特許要件を満たさないといけないのですが、新規性や進歩性が認められるポイントは1つあればOKです。「アイデア特許」に含まれているアイデアに新規性や進歩性が認められればそれで特許が認められるということです。
でも、出願するためには、そのポイントだけではなくて、そのポイントの前提になる技術や、その周辺の技術をある程度、書面に書いておく必要があります。「実施の形態」又は「実施例」といわれる部分です。
この記載がなかなか面倒ですよね。
その面倒な記載をするのも特許事務所の仕事です。ポイントの説明に必要な「実施の形態」又は「実施例」の記載をいれて、出願できる状態にもっていきます。だいたいいい感じに仕上げてくれます。
3.「アイデア特許」の出願を上手に依頼するにはどうしたらよいか
「アイデア特許」の出願を上手に依頼するには、そのポイントを明確に、特許事務所に伝えることが重要だと思います。
図面1枚や、3~5行で説明した文章もあれば渡します。
特許事務所の担当者がその分野の出願に慣れていれば話が通じやすいと思います。
なお、その技術のポイント以外の部分、従来の技術と同じ部分については、あまり多くの情報はいらないかもしれません。そのような情報の準備に時間をかけるのはもったいないからです。「アイデア特許」のポイントを明確に際立たせることにもつながります。
今日のみどころ
上記の通り「アイデア特許」という言葉は、人によってイメージが違うかもしれないので、使う時には少し注意が必要です。
アイデア段階の特許を早期にとっておくことは、事業を守るために重要になることも多いので、たくさん出願してたくさん特許とりましょう!