【解説】そもそもAIって何?数式いっさいなしの説明/AIをこれから勉強するとっかかりに

 もはや日常語と言えるほどにまで生活に浸透したAI、日本語で言えば「人工知能」。

 AIでできること、できないこと。AIでなくなる仕事、なくならない仕事は何か。というように、将来ひとの仕事を奪うなどという脅威論もまことしやかにささやかれ一種のブームのようになっています。

 しかし、これだけ日々話題になりながら、そもそもAIとは何なのか、どうやって人の仕事を学習して賢くなり、タスクをこなすのか分からない人。いっぱいいますよね。

 今回は、AIとはそもそも何なのかということについて数式なしで解説します。これを読めば、AIとは何なのか理解するとっかかりがつかめるかも。数学が得意でない方も大丈夫です。

 AIの勉強に役立つ本も紹介します。



 ※特許の本の紹介。
 特許の申請(出願)をする技術者や研究者が知っておかないといけない特許の知識がわかりやすくまとめられている良著です。

そもそもAIって、エーアイ、人工知能、アーティフィシャル・インテリジェンス

 そもそもAIっていう言葉が何かというところから説明します。

 AIの読み方はエーアイ、なんの略かというとArtificial(人工) Intelligence(知能)の略語です。カタカナ的な読み方は「アーティフィシャル・インテリジェンス」です。

 この「AI」という言葉は、何十年か前からたびたびブームになって登場してくる言葉です。なので、少し前の時代のAIのことをいっているのか、この記事で説明するようなニューラルネットワークなどを使うAIのことをいっているのか、ここがかみ合わないと、人との話がうまくいかないので注意しましょう。

AIとは「統計的に予測する機械」

 最近いろいろなAIの登場が話題になっています。

 例えば囲碁のチャンピオンを破ったAI(AlphaGo)のことや、画像に何が映っているかを見分けるAI、はたまたAIスピーカーのように、言語を理解するAIなど、AIは多方面に花開いていることがわかります。

 AlphaGoのように囲碁の棋譜から学習するAIは「ディープニューラルネットワーク(DNN)」という原理を下地にしています。

 似たような感じで、画像認識のAIは「畳み込みニューラルネットワーク(CNN)」、言語理解のAIは「リカレントニューラルネットワーク(RNN)」という原理を下地にしています。

 言葉だけでも難しくて理解しにくいですが、これらにはたった一つの共通する、そしてとても単純な原理があります。

 それは、これらはいずれも「統計的な原理のもと」動作(予測)している、ということです。先に挙げたDNNやCNN、RNNは、いずれも統計学(機械学習理論)の分野に属する用語です。

 つまり、AIとは「統計的に予測する機械」なのです。

AIは統計的にパターンを学習し目標動作を達成するよう訓練される

 
 もう少し詳細に踏み込むと、AIは学習するときにデータを必要とします。そしてそのデータから、「統計的に」パターンを学習し、目標とする動作を達成するよう訓練されるのです。

 例えばAlphaGoでは、さまざまな囲碁の対局の棋譜がそのデータにあたります。AIは、これらの棋譜から勝ちパターンを統計学の原理に基づいて認識し、囲碁に勝つことを得意とするように訓練されて賢くなっていくのです。

 このデータは教師データと呼ばれます。学習のための教師であり、先生・お手本のような存在です。過去に先生がやったことを覚えて、同じようにできるように訓練されて、育っていきます。

近年の情報技術の発達によって実現

 最近とくに話題にのぼるようになったAIは、統計学的に理論上可能であったが、技術的な面から実現できなかった予測方法が、近年の情報技術の発達によって可能となったことから生まれた、とも言えます。

 もっとくわしい理解のためには統計学の深い知識が必要ですが、AIとは統計学に基づくものだ、と理解していれば、テクノロジー関連のニュースがより理解しやすくなるかもしれません。

 この記事を読んでさらに興味がわいた方は、「機械学習理論」や「深層学習」、「自然言語処理」などのキーワードで検索し、より深い知識を学んでみてください。

AIをブラックボックスとして使うだけでも特許になる

 技術開発がさかんになると、特許の出願も増えていきます。

 AIの技術でおもしろいのは上記のように学習によって賢くなっていくところなのですが、そういうところはすごく数学的に(情報処理的に)難しい部分です。一方、AIの技術をうまく利用して新しい技術を開発する場合には、そこまで難しいことを考えなくても大丈夫なことが多いです。

 効率よくAIの学習をするためのデータの選び方とか、どのような目標を達成するようにAIを訓練するかといった部分も、工夫できることがたくさんあります。こういうところも特許のネタになります。

 言い換えると、AIの技術自体はいままでと同じだけど、AIの学習の使うデータが新しい。このようなアイデアでも立派な技術アイデアなので、特許要件をみたせばちゃんと特許になります。

AI/機械学習を学ぶ本の紹介

 いままでAIや機械学習をあまり知らなくてこれから学んでいこうとする人は、まずは基本の流れを系統立てて学習するのがおすすめです。機械学習を学ぶための本を紹介します。

 ネット上によい情報がたくさんあるのですが、基本知識や用語の理解がわからないと使いこなせない場合も多いからです。まず最初に技術全体をざーっととらえておくと、その後の理解が進みます。

 まず、入門編だとオライリー社の「ゼロから作るDeep Learning ―Pythonで学ぶディープラーニングの理論と実装」がオススメです。

 その上のレベルだとインプレス社の「[第2版]Python 機械学習プログラミング 達人データサイエンティストによる理論と実践 (impress top gear)」がオススメです。

 理論寄りのものだと丸善出版の「パターン認識と機械学習 上」とパターン認識と機械学習 下 (ベイズ理論による統計的予測)がおすすめです。

今日のみどころ

 AIや機械学習について、いっさい数式なしで概念的な説明をしました。

 インターネットのWebサイトで知識を得るもよし、本を2~3冊買ってじっくり勉強するもよしです。いまのうちにある程度おえておきましょう。