【コラム】自分一人で特許の手続をするのにおすすめなのはこんな人/気を付けることも紹介

【コラム】自分で特許の手続をするのにおすすめなのはこんな人/気を付けることも紹介

 自分のビジネスを特許で守りたい。でも特許をとるには結構お金がかかるらしい。自分一人で特許の手続をすることはできないのかな。

 自分一人で特許の手続をすること自体は、法律上はまったく問題ないのですが、実際には難しいです。どんな場合におすすめかを説明します。

 私は、特許事務所でクライアントの権利化のお手伝いの仕事をしていて、正直なところ一般の人が個人で特許の手続をするのは大変だろうという思いがあります。でも、それでも一人で手続きをするとしたらどんなところに気を付けないといけないか、お伝えします。

 もし自分一人で特許の手続をすることに挑戦するのなら、この記事を読んで、どんなことに気を付けないといけないか知っておきましょう。参考になる書籍の紹介もします。

 それでは本題にはいります。



 ※特許の本の紹介。
 特許の申請(出願)をする技術者や研究者が知っておかないといけない特許の知識がわかりやすくまとめられている良著です。

自分一人で特許の手続をするのは難しい/気を付けないといけないことがありすぎ

 このサイトを通じてアマゾンや楽天ブックスで購入された本で『一人で特許の手続きをするならこの1冊 (はじめの一歩)』という本があり、ちょっと内容に気になったので入手して読んでみました。

 一般に、特許の手続を発明者が自分一人でするのは難しいと言われています。自分一人で特許の手続をすること自体は、法律上はまったく問題ないですが、気を付けないといけないことがたくさんあるからです。ありすぎです。

 そのため、特許の専門家である弁理士(特許事務所)に依頼して手続きを代理でしてもらうことが多い。

 でも弁理士に依頼すると高額な費用がかかるので、一人で(発明者が自分で)特許の手続をしましょうというのがこの本の趣旨です。

 この本を読んだポイントをまとめて紹介します。

  • 特許の出願の手続の解説として参考になる
  • 特許や実用新案の出願に必要な、技術の記載方法についての記載はあまりない
  • 技術の記載方法に自信がある方におすすめ

 それぞれについて以下で説明します。

特許の出願の手続の解説として参考になる

 特許を取得するには、特許庁に手続きをする必要があります。特許法という法律や、特許法施行規則などの規則にのっとって細かく規定されているので、専門性が高いです。

 レアなケースも含めてさまざまな手続きが決められているので、これらの手続きを一般人が行うのは、普通は難しいと思います。

 そのため、他の人の発明についての手続を業務としてすることができる弁理士がいます。弁理士業務は弁理士資格をもっている人しかできません(*1)。

 *1:発明をした人が自分で手続きをする場合には資格はいらないです。

どんな書類が必要かを知ることができる

 この本は、特許などの出願の手続の際に、どんな書類が必要なのかを知ることができるという点で参考にすることができると思います。

 一般的な特許出願の場合に用意すべき書類や、その書き方がわかりやすく示されています。

 ただ残念なのが、発明の内容の記載の仕方、つまり技術の説明の仕方についてあまり詳しい説明がないことです。

特許の技術の説明の仕方についての記載があまりない

 特許の書類は、出願人の氏名などの事項とともに、技術の内容の説明を記載する必要があります。

 特許の書類での技術の内容の書き方には、いろいろなノウハウがあって、これだけで1冊の本が書けるほどです。例えば、有名なところでは『技術者のための特許実践講座 技術的範囲を最大化し,スムーズに特許を取得するテクニック』という書籍があり参考になります。

 そして、特許の書類に書かれている技術の内容は、特許の心臓部。この書き方次第で権利の範囲が広くなったり狭くなったりして特許の価値が変わります。

 上手に権利を作ることができれば、自社の事業を守る存在になりますが、一方、へたをすると、類似の製品を簡単に相手に作られてしまうという事態になってしまいます。

 「一人で特許の手続をするならこの一冊」には、明細書の書き方については半ページ、権利範囲を定める特許請求の範囲の書き方については3ページの記載がありますが、これだけ読んで明細書や特許請求の範囲を上手に書けるようになるのは難しい。

 なので、この本だけを参考にして特許の手続ができる人というのは、ある程度限られてしまうことになると思います。

技術の内容の説明や中間処理に自信がある方におすすめ

 上記のとおりなので、特許の技術の説明部分(具体的には、明細書、特許請求の範囲、図面)の書き方を知っていて作成した経験がある人は、この本を参考にして一人で特許の手続をすることができるようになる可能性があります。

 このような経験がない人は、まだやめておいたほうがよいかも。

 経験のある人もない人も、特許の手続については、こちらの本が参考になります。

 あと、自分一人で特許の手続をする場合には、出願のあと特許になるまでの間に必要な手続き(中間処理といいます)も自分でする必要があります。具体的には、審査請求をすること、審査の結果として審査官から通知される拒絶理由への応答などが必要になります。

 この本は、出願のことに着目して書かれていることもあり、出願の後、特許にするための手続があまり書かれていませんでした。中間処理、とくに審査請求をするのをわすれないようにしましょう。

 以下のような本を参考にしてこちらも自分でやるのもよいと思います。

今日のみどころ

 書籍『一人で特許の手続きをするならこの1冊 (はじめの一歩)』を読んでポイントをまとめました。そのうえで、実際に自分一人で特許をとる場合にさらに必要な手続きも紹介しました。

 特許を上手にとってビジネスを守りましょう。

 以下、この記事で紹介した書籍のリンクです。ご参考に。

稲葉 慶和 (著), 鈴木 伸夫 (著) エイバックズーム; 2版 (2014/3/7)