【コラム】特許の「公開」とは何か/特許の「公開」ってすごいことなの?そうでもないの?

【コラム】特許の「公開」とは何か/特許の「公開」ってすごいことなの?そうでもないの?

 新聞やニュースサイトなどで「○○社の特許が公開された」と話題になることがあります。しかし、特許の公開ってどういうことなのか知っていますか。

 せめて、特許として認められてすごいことなのか? そうでもなくて誰でもできることなのか?くらいは知っておいたほうがいいですね。

 特許の公開にはどんな種類があるか、どんな効果があるか、以下で説明します。



 ※特許の本の紹介。
 特許の申請(出願)をする技術者や研究者が知っておかないといけない特許の知識がわかりやすくまとめられている良著です。

特許の手続きの中で「公開」されるものは2つ

 特許の公開では「公報」が発行されますが、公報には「公開公報」と「特許公報」の2つがあります(*1)。どちらも「公報」という語が含まれているので混乱しやすいです。

 これらの公報が特許をとるまでの流れの中のどの時点で発行されるかということと、これらの公報の違いを説明します。

 特許をとるまでの流れについては、既にさまざまなサイトで詳しく説明されています。ここでは、「公開公報と特許公報の違い」を説明するのに必要なことに絞って説明します。


*1 「公開公報」は「公開特許公報」とも呼ばれます。「特許公報」は「特許掲載公報」とも呼ばれます。

公開公報に掲載されるのは審査前の情報

 公開公報は、特許の出願をした後、一定期間が経過すると自動的に発行される公報です。特許法上の「出願公開」(64条)により発行されるものです。

 公開公報に掲載される情報は、発行時点での明細書等です。出願された時点の明細書などがそのまま公開されることが多いです。審査前なので、特許権が成立するかわからない記載があることが多いです。また、特許をとれないかもしれない技術を含めたなるべく広い権利範囲を狙う記載があることもあります。不明確な記載が含まれていることも多いです。

 この時点では、出願人がこの出願によって本当に特許権をとろうとしているかどうかも不明です。

 公開公報に掲載された発明は、いちおうこんなアイデアが検討されたということがわかる程度です。これが特許になるかならないか、特許をとる意思があるか否か、将来の製品に搭載されるか、まだまったくわかりません。

特許公報に掲載されるのは審査後の特許権の内容

 特許公報は、出願後に審査官によって審査され、審査の結果、特許査定が得られた発明が掲載された公報です。特許法上の、特許権の設定登録後に発行される「特許公報(66条)」に相当します。

 特許公報が発行されるのは、審査の結果、特許査定が得られた後です。特許公報に掲載される情報は、特許査定がなされた明細書等で、実際に特許権になったものです。出願人が審査のために費用を支払ったもので、新規性などの特許要件を満たすものになっており、不明確な記載が明瞭化されたものです。

 特許公報に掲載された発明は、必要な補正がなされ、審査官が特許要件を満たすと判断したものです。不当に広い権利範囲の記載や、不明確な記載はなくなっています。また、出願人がある程度高い費用を支払って特許権を成立させたものです。

公開公報と特許公報との違い

 以上まとめると、公開公報と特許公報は、特許の手続きの流れの中でこのような順番で行われます。

特許出願 → 公開公報 → 特許査定 → 特許公報

 公開公報と特許公報との違いで重要なものは以下の2点です。

 1点目は、掲載された発明が審査を受けたものか受けていないものかという点です。公開公報には、出願人が検討したアイデアが掲載されているのは確かですが、特許をとれるかどうかはわからない発明が記載されています。好き勝手な願望が記載されているかもしれません。

 これに対して、特許公報には、特許要件を満たした発明が記載されています。出願時に不当に広い権利範囲を狙う記載や不明瞭な記載がある場合には、審査官から通知がされるので、このような記載はなくなっています。

  • 公開公報:審査を経ていない発明が掲載。好き勝手な願望も可能。
  • 特許公報:審査を経た発明。特許要件を満たした発明つまり特許発明が掲載。不当に広い権利範囲や不明瞭記載はNG

 2点目は、掲載された発明について特許権が成立しているか、成立していないかという点です。公開公報は、特許権成立前の情報なので、真に権利化を狙っているものもあれば権利化不要のものもあります。一方、特許公報は、特許権が成立した発明のみが掲載されます。

  • 公開公報:権利化を狙っている発明と権利化不要の発明が混在。
  • 特許公報:特許権が成立した発明のみ。

 このように、「公開公報」が発行されただけでは特許はとれていません。「公開公報」は、出願後に自動的にされるものですので、形式を整えた書面で出願すれば、普通に行われるものです。特許事務所に依頼して形式が整った書面を作成してもらうこともできるので、お金があれば(技術力がいまひとつでも)公開公報の発行がなされます。そういう意味では、公開公報はあまりすごくない公報といえます。

 一方、「特許公報」は、審査官が審査し、必要な補正をしたものです。お金があるだけでは、特許公報まで進むことはできません。お金と技術の両方があって、特許発行に発行に進むことができます。そういう意味では、特許公報に掲載された発明は、特許が認められた、すごい発明ということができます。

 特許要件を満たした発明つまり特許発明を公開しているのは、「特許公報」のほうです。(*2)

今日のみどころ

 単に「特許が公開された」という情報だけでは、「公開公報」か「特許公報」かがわからず、特許権が成立しているのかどうかが判断できません。特許権が成立したか、成立していないかは、とても大きな違いです。正確な判断をするようにしましょう。

 本サイトで紹介しているのは特許公報です。審査官によって特許要件を満たすことが審査されたものなので、勉強の材料として適切です。特許公報(特許掲載公報)を使って一緒に勉強しましょう!