特許の書面は文字がぎっしりで長くて読みにくいです。でも仕事のために読まないといけない、読んで理解してアクションを起こさないといけない。そんな人もいます。
特許の大事なポイントを理解するためには、コツがあります。特許の書面の全体を読む必要はないんです。
特許の書面の中で、特許の内容を理解するために読まないといけない部分と、その読む順番、考え方を紹介します。30分から1時間くらいでポイントをつかめるようになります。
私は日々、仕事で特許の書面を作ったり、他の人が作成した書面を読んだりしています。読みにくいとは思いながらも、なるべく短時間で仕事を進める必要から、だんだんできるようになってきました。
その方法を紹介します。
特許の書面は文字がぎっしりで長くて読みにくい
特許の書面は文字がぎっしり。分量も多く、表現もわかりにくいので読みにくいです。(ここでの特許の書面とは、特許の内容を説明する「特許公報」をさしています。)
短いものだとA4で10ページ前後ですが、30ページくらいのものもよくあります。50ページを超えると長いという印象をもちます。*1
このような書面から大事なポイントを短時間で読み取るのは、一見難しいと思いますよね。
でも、特許の大事なポイント理解するには全部を読む必要はなく、大事な部分をしっかり把握すれば大丈夫です。
以下で、重要でないところを流しつつ、大事なポイントを短時間で読み取る方法を説明します。
*1:特殊なものだと100ページを超え、数100ページのものもあります。私は業務で数100ページの書面を担当したこともあります。図面が数100枚あるもの、数式が1000以上あるものも扱ったことがあります。
特許でいちばん大事な部分が請求項(特許請求の範囲) しかし読みにくい
特許の書面は、「特許請求の範囲」、「明細書」というようにいくつかの書類に分かれています。また、「明細書」は、「背景技術」、「発明が解決しようとする課題」、「発明を実施するための形態」など、いつくかのパートに分かれています。
その中で「特許請求の範囲」の書面に、この特許のポイントがかいてあります。とくに請求項1が大事です。請求項1は、特許の権利の範囲を決めるもっとも重要な部分です。
なので、請求項1の内容を理解することができれば、この特許の大事な部分を理解したといえます。
しかし、請求項は究極によみにくい。初見ではほとんどの場合、理解できないと思います。漢字ばっかりで、見慣れない「前記」「当該」「該」のような言葉がたくさん含まれているから。
そこで、請求項1の内容を理解するためにどうするか、何ができるか、紹介します。
特許の請求項1の理解のための特許の読み方【順番が大事】
特許の理解、つまり請求項1の理解のための特許の読み方は、以下の流れになります。このような順番で進めていくと特許の内容を効率よく把握できます。これが、特許の大事なポイントを理解するためコツです。
2.請求項の内容、とくにポイントとなる部分を把握する。
3.そのポイント部分に係る詳細な内容を読んで理解を深める。
詳しく説明していきます。
請求項1の理解のために:背景技術と課題を理解する
請求項1の内容の理解のために、明細書の「背景技術」と「発明が解決しようとする課題」(以降「課題」ともいう)をよむのが有効です。
背景技術は、この特許が生まれるもとになった状況を説明しています。この発明に至るスタート地点ともいえます。
課題は、この特許によって到達したい状況、つまりゴール地点を説明しています。
特許は、背景技術をスタート地点として、課題を解決する、つまりゴール地点に至るまでの道筋を示しているものです。
なので、特許の内容、つまり、道筋を理解するために、まず、スタート地点とゴール地点が何かを理解します。これにより、スタート地点とゴール地点の間の道筋を理解しやすくなります。
背景技術と課題を把握、また請求項を読む、くりかえし
明細書の背景技術と課題を把握して、もう一度請求項を読んでみます。
すると、背景技術と課題を把握する前よりは意味がわかるのではないかと思います。スタート地点とゴール地点を意識できたからだと思います。
さらに背景技術及び課題と、請求項をいったりきたりして、見比べながら考えてみましょう。請求項の内容でどうして課題を解決できるんでろうかと、自問自答しながら進めるのもよいと思います。
明細書の発明の詳細な説明を読んで理解を深める
次は、明細書の「発明の詳細な説明」の部分を読みます。ここが、請求項の内容をわかりやすく説明している部分です。図面を参照しながら説明されているので、図面もみましょう。
ただ、「発明の詳細な説明」の部分は長いので、まずは、特許のポイントである請求項1に関係ある部分がどこか意識しながら読むのが良いと思います。請求項1と似た表現がある部分に印をつけるなりして注意しておくと後で整理しやすいです。
反対に、特許のポイントである請求項1にあまり関係なさそうな部分は流してよいかもしれません。「なお」や「例えば」で始まる文や、「~であってもよい」で終わる文は、特許のポイントでない可能性が高いといえます。
このときも請求項1をチラ見しながら進めます。明細書を読んでいるのも、その目的は、「請求項1を理解する」ことだからです。
請求項1の内容を理解できたらひとまず終わり
明細書の発明の詳細な説明を読んで請求項1の内容を理解できたら、ひとまず目的達成です。いったん終わりにしましょう。
この段階で、この特許のポイントは理解できているはずです。「この特許のポイントはどこなの?」と聞かれたときにこたえられるようになっているはずです。
あとは、必要に応じて興味があるところを読んでいきましょう。
特許のポイントを理解する方法の失敗例
このように効率よく特許の内容を理解できないうちは、私もなかなかうまくできませんでした。
・先行文献を読んだら理解が進むかと思って読んだけど、先行文献もわからずに終了。
・図面を見たら少しはわかったけど、全体としてどんな目的の特許なのかわからない。
いまでもうっかりしていると、内容を把握しないまま読み進めてしまっている自分に気づくことがあります。
まずいなって気づいたら、ちょっと気分を変えて、ちゃんと内容を把握することを意識して進めましょう。
特許のポイントを説明する方法
おまけとして、特許のポイントを他人に説明するときのおすすめの方法を紹介します。
特許を人に説明するというのも難しいものです。細かい内容を全部説明するのは現実的ではないので、大事なポイントをつかんでそこを重点的に説明することになります。
そこで、上記で説明した特許の読み方の流れをそのまま、人に説明するときに応用することができます。
2.次に、請求項の内容、とくにポイントとなる部分を説明します。
3.そのあと、そのポイント部分に係る詳細な内容を説明していきます。
このようにすると短時間で相手にポイントを伝えることができ、しかも、自分がよく理解しているということも一緒に伝えることができます。
相手が上司である場合など、短時間でたくさんの業務をしなければならないひとなど、効率を意識している相手には特に有効な方法です。実践してみてください。
今日のみどころ
読みにくい特許公報から、短時間でポイントをつかむ方法を紹介しました。
また、おまけとして、特許のポイントを短時間で他人に説明する方法も紹介しました。
おすすめの方法なので実践してみてください。