【コラム】人間の仕事が奪われるのはAIよりRPA/仕事する人間も進化する

 AIが仕事を奪う、という話もあったけど、今度はRPAが仕事を奪うという話もでてきた。なんだろう。どういうことなんだろう。

 今回は、AIやRPAが人間の仕事を奪うのか、奪うとすれば人間は何の仕事をすればいいのか、というようなことについて考えます。

 私は特許事務所で特許の出願書面の作成などの仕事をしています。AIやRPAは、特許の対象になる技術でもあり、また、仕事に使っていくツールにもなるので、ちょくちょく調べる機会があり、詳しくなってきました。

 実際に特許の調査の一部にAIが導入されつつあります。

 この記事をよめば、人間の仕事を奪うかもしれない技術の1つであるRPAを理解し、RPAが導入されていくときに人間は何をしていけばいいかを考えるきっかけを得られると思います。

 参考になる本の紹介もあります。



 ※特許の本の紹介。
 特許の申請(出願)をする技術者や研究者が知っておかないといけない特許の知識がわかりやすくまとめられている良著です。

人間の仕事を奪うのはAIよりRPA

 AI(artificial intelligence、人工知能)(*1)の機能が向上して人間の仕事を奪うのではという話も聞くようになってきました。ここでいうAIというのは、最近特に機能が向上したディープラーニング等の機械学習の技術だと思います。

 でも、機械学習の技術を実際の業務に活用するためにはけっこう工夫が必要です。AI(機械学習)の判断のプロセスは、機械学習によって決められたパラメータで制御されていて、人間からはわからないブラックボックスになっています。

 一方、AI(機械学習)よりも、人間の仕事を奪うのに近いのがRPA(Robotic Process Automation)だといえます。

 RPAとは、ソフトウェア(アプリ)のロボットがコンピュータを操作して、人間の代わりにコンピュータを使って仕事をする自動化の技術の総称です。RPAの場合は、人間が教えた操作をします。この点で、判断のプロセスがブラックボックスであるAIとは対照的です。

 今回は、RPAが人間の代わりに仕事をするときに、人間は何をしていけばいいのか、ということについて考えます。

 結論としては、人間は、RPAのロボットと協力しつつ、人間ならではの仕事をするようになるという話です。

本紹介『RPAの威力 ~ロボットと共に生きる働き方改革~

 本題に入る前に、この記事は、RPAについて書かれた書籍『RPAの威力 ~ロボットと共に生きる働き方改革~』に書かれている内容を参考にしながら、私の考えもあわせて説明します。

人間の仕事がAIに奪われる話

 AI(人工知能))の機能が向上して人間の仕事を奪うのではという話も聞くようになってきました。

 機械学習の技術は、大量のデータから学習して、新しいデータについての判断をするように作られています。いい感じで学習することができると、人間の判断と同じような結果を得ることができることもあります。人間ならうっかりやってしまうミスを減らせる可能性もあります。

 AIは、たしかに、びっくりするような結果を出すこともあります。とくにニュースで話題になるようなものは、見せ方も工夫されています。

 なので、そういう結果を見せられると、AIが人間の仕事を奪うのではと思ってしまう人もいるのかもしれません。

AI(機械学習に基づく人工知能)が人間の仕事を奪う事態にはなりにくい理由

 でも、機械学習の技術がきちんと機能するには、AIが何をするかを上手に決めて、しかも、いい感じで学習したモデルを使う必要があります。

 AIが何をするかを決めたり、いい感じで学習させたりするのは簡単ではないです。ニュースで話題になるやつは、この部分を専門家が裏で上手にやって、最終的な出力の部分だけを上手に見せているので、いい感じに見えるという面もあります。

 このように、機械学習の技術を実際の業務に活用するためには、どの仕事を切り出してAIにまかせるのか、どんな学習をさせたAIをそこに使うかなどについて、工夫が必要です。

 AIを買ってきたらすぐに人間の代わりに仕事をし始めた、ということにはならない。なので、AIが人間の仕事を奪う事態にはなりにくい、そう簡単にはならないと思われます。

 *1: AIという言葉自体があやふやで、単なるコンピュータ処理をAIと呼んでいる人もいる感じがします。そういうひとにとっては、AIの機能が向上したというのは、コンピュータの機能が向上したことを意味しているようで、だいぶ話がずれしまいます。

人間によるコンピュータの操作を置き換えるのがRPA

 RPAとは、人間の代わりにロボットがパソコンを操作して、計算などをさせる技術です。人間の代わりに動くロボットをデジタルレイバともいいます。

 でもペッパー君みたいな実体のあるロボットがマウスやキーボードを触って操作するのではなく、RPAのロボットは、パソコンの中にソフトウェア(アプリ)として動いています。

 なので、外から見れば、パソコンが勝手に動いて仕事を進めているように見えます。

 人間がパソコンの画面を見ながらワードやエクセルを使って数値を計算させたり、別のファイルにコピーしたりする単純作業は、ロボットの方が得意です。与えられるデータが整っていれば、ロボットは、ミスなく、大量に、休みなく処理できます。

ロボット(デジタルレイバ)のほうが単純作業が得意なのは明らか

 パソコンでの単純作業に関しては人間よりRPAの方が得意なのは間違いないと思います。

 人間はミスをすることがあるし、夜は寝ないといけないし、体調が悪くなれば休まないといけないから。
 
 なので、効率よく作業を進めることを考えれば、このような単純作業は、RPAのロボットによって置き換えれらる可能性があります。

 例えば家電製品や自動車などのものづくりの工場ではすでにロボットが大活躍していますが、デスクワークでもこのような位置づけのロボットが仕事をするようになると考えるとわかりやすいと思います。

人間とRPAとの関係について押さえるべきポイント3点

 RPAがデスクワークの仕事に導入される流れはどんどん進んでいくと思われます。デスクワークの単純作業は、ロボットがやるようになる、ロボットに奪われていくと思われます。

 そのようなときに、人間がやる仕事はなくなってしまうのか、または、どんな仕事があるのか。

 本『RPAの威力 ~ロボットと共に生きる働き方改革~』で述べられている内容のうちで、RPAが導入されたときの人間の仕事について押さえるべきポイントを以下の3点に絞ってシェアします。

  • 人間はロボット(デジタルレイバ)にできない仕事をする
  • 人間の仕事としてなくならないもの
  • 人間が発揮すべき能力

 以下で順番に説明します。

人間はロボット(デジタルレイバ)にできない仕事をする

 まず、パソコンを使ったデスクワークの単純作業をロボットに任せたとしても、ロボットに任せられない仕事もあるので、人間には、ロボットに任せられない仕事が残ります。

 なので、人間は、ロボット(デジタルレイバ)にできない仕事をすることになります。

 具体的にいうと、人間がロボットに仕事をさせるときには、仕事をルール化する必要がでてきます。うまくルール化できた仕事は、ロボットに任せられます(P.46)。

 でも、ルール化できないところ、または、ルール化するのがとても大変なところしにくいところが残る。この部分を人間がするようになる。

 ルール化できないところの一例として、トラブル時のリカバリーの仕事があります(P.70)。自力で仕事を進められなくなっているロボットを人間が助ける形になります。

 こうすることで、人間とロボットが仕事を分担しつつ協力していくことができます。また、人間が仕事をルール化する過程で自ら考えて行動することで、生産性向上につながるという効果もあるようです(P.46)。

人間の仕事は、ロボットに任せられずに残る仕事

 つまり、ロボットが効率よくできる仕事はロボットに任せ、ロボットに任せられずに残る仕事を人間がすることになります。

 具体的に言えば、パソコン上での単純作業の仕事は、ロボットに置き換えられていきます。

 一方、そのロボットが仕事できるようにデータを準備したり、ロボットがトラブルで止まったときのリカバリの仕事が人間の仕事になります。

 だから、パソコン上での単純作業の仕事をしている人は、その単純作業をロボットにさせるとした場合のルール化など考えるようにしていくとよいかもしれません。

人間の仕事としてなくならないもの

 人間の仕事としてなくならないものとして、(1)高度なスペシャリストとしての仕事、(2)クリエイティブな事業推進者としての仕事、(3)RPA等の活用に向けた業務の標準化を行う仕事、が挙げられています(P.195)。

 具体的には、経理などの業務の中での意思決定、提案型の営業や商品企画、RPAやAIなどの最新技術の活用に向けた業務の標準化などが挙げられています。

人間の意思決定にかかわる仕事や、新しい物事を発想する仕事はなくならない

 つまり、人間の意思決定にかかわる部分や、新しい物事を発想する仕事は、人間の仕事としてなくならないということです。

 ロボットは、人間がルール化した単純作業を繰り返し行うだけなので、言い換えれば、人間の意思決定の代わりをすることはないし、新しい物事を発想することもないからです。

 なので、いま現在、ロボットでもできるような仕事をしている人は、人間の仕事としてなくならない上記の仕事をするように変わっていく必要があります。急に変わるのは難しいですが、日々、単純作業に邁進するだけではなく、意思決定をする側に立って考えてみたりするとよいかも。

人間が発揮すべき能力

 人間が発揮すべき能力として、(1)人間の心の機微を読んだコミュニケーション、(2)イノベーション、革新的なコンセプトの創造、(3)ビジョニングとリーダーシップの発揮、が挙げられています(P.197)。

 人と対話して人を動かす能力や、新しいことを発想したりする能力を発揮しないといけないということだといえます。

 ロボットは上述の通り、人間から指示された単純作業を行うことが得意ですが、一方、臨機応変に対応したり、新しいことを発想したりするのは難しいからです。

人間が発揮すべき能力は、人間らしい能力、人間ならではの能力

 上記の能力は、そもそも、とても人間らしい能力であり、言い換えれば、人間ならではの能力です。これらが、人間が発揮すべき能力だというのは当然と言えば当然だと思います。

 ロボットは、ロボットが得意な仕事をし、人間は、人間らしい能力、人間ならではの能力を発揮する。このような協力関係を上手に作れれば、RPAをうまく使って効率よく仕事を進めることができたことになります。

まとめ:RPAが導入されると、人間に残るのは人間ならではの仕事

 このように、RPAが導入されると、ロボットができる仕事はどんどんロボットがやるようになり、そのような仕事はロボットに奪われていきます。

 人間に残るのは、人間ならではの仕事です。人間ならではの、意思決定や発想を使った仕事であり、ルール化できず、ロボットに任せられない仕事です。

 なので、人間ならではの仕事の比率をどんどん上げて、RPAが導入されてもなくならない仕事をしていくようにしましょう。

 RPAによって、仕事する人間のほうも進化して、RPAを利用して効率よく仕事を進めていけるようになれます!これが理想ですね。

今日のみどころ

 本『』を紹介しながら、人間の仕事がRPAに置き換えられたときに、人間は何をするか、人間はどう進化しないといけないかについて説明しました。

 人間ならではの仕事をしてくようにして、進化していきましょう!

 本文中で紹介した本のリンクを以下に貼っておきます。ご参考まで。

安部 慶喜(アビームコンサルティング株式会社) (著), 金弘 潤一郎(アビームコンサルティング株式会社) (著)