【ご提案】AI/機械学習系の特許ネタを出すポイント

 最近、AI、機械学習、ディープラーニングみたいな言葉がはやってるみたい。こんな分野で新しいビジネスをしたい。特許もとりたい。

 でも、AI/機械学習の特許なんてもう遅いのかも。早くから研究している人が特許を押さえているんじゃないか?特許をとるのはあきらめるか?

 そんな悩みをもっているあなた。悩ましいですよね。私もそう思います。

 私は特許事務所で働く特許技術者で、クライアントの発明の出願のお手伝いをさせていただいています。数年前からAI/機械学習系の特許出願が多くなってきているのを感じています。

 この記事では、いまからAI/機械学習系の技術の特許をとるとすればどんな感じで考えていけばいいのか、その考える方向性を提案します。

 AI/機械学習系の特許の技術開発をしている人や、新しいアイデアを出したい人の参考になると思います。AI/機械学習系でアイデアの検討に役立ちそうな本の紹介もあります。



 ※特許の本の紹介。
 特許の申請(出願)をする技術者や研究者が知っておかないといけない特許の知識がわかりやすくまとめられている良著です。

AI/機械学習系で特許をとるには、まだ公開されていないアイデアを検討して

 最近、AI、機械学習、ディープラーニングみたいな言葉がはやってるみたい。こんな分野で新しいビジネスをしたい。製品やサービスを他の人にマネされないように特許もとりたい。

 特許は、すでに世の中に公開されたアイデアについてはとれません。なので、研究論文として発表されたアイデアや、インターネット上で公開されたアイデアについては特許をとることができません。

 特にAI/機械学習に関する技術は、研究の論文がすでにたくさん発表されています。インターネット上に公開された技術情報もたくさんあります。なので、いまから特許をとるのは無理かも、とも思うかもしれません。

まだ公開されていないアイデア、いままでにアイデアを生む出す工夫が必要

 AI/機械学習に限らず、ある程度の情報がすでに公開されている分野で特許をとるためには、すでに公開されているアイデアから一歩踏み込んだり、新しい組み合わせをしたりして、いままでにないアイデアを生み出す工夫が必要です。

 いままでにないアイデアだと認められれば、特許が認められます。そのアイデアならではの効果があればもっとよいです。実際に出願されているアイデアも、そのような感じのものが多いです。

 この記事では、AI/機械学習系で特許をねらうとすれば、どんな方向でアイデアを検討すればよいか、提案します。

AI/機械学習系をビジネスに生かすための知識の本

 その前に、そもそもAI、機械学習などの言葉の意味がよくわかっていないという人におすすめの本を紹介します。私も先日入手して読みました。

 この本では、AI/機械学習の技術面というよりは、AIをビジネスで活用していくための方法についてメインで説明されています。AIの技術面に強い専門家と、仕事上の課題とに基づいてAIの使用目的を考えられる視点で考えることが必要と述べられています。

 また、AI/機械学習でなんでも自動化できるわけではなく、自動化できる処理として「分類」「回帰」「クラスタリング」「推論」「探索」の5つを具体例を挙げて説明しています。

 この本を読めば、AI/機械学習関連の言葉の意味を理解し、さらにAI/機械学習をどんなふうに使ってビジネスに役立てることができるか、どんな特許をとるか、具体的な発想につなげられると思います。

機械学習(AI)系の特許ネタを出すポイントの提案

 ここからが本題。AI/機械学習系でいまから特許をねらう方針として、以下の3つ方針を提案します。

  • 複数のAI/機械学習モジュールの組み合わせ
  • AI/機械学習の新しい適用分野
  • 訓練データの工夫、訓練データを増やす、減らす、加工する

 それぞれについて以下で具体的に説明していきます。

複数のAI/機械学習モジュールの組み合わせ

 1つ目は、単一のAI/機械学習モジュールを利用するだけではなく、複数のAI/機械学習モジュールの組み合わせで新しいアイデアを生み出すという案です。

 「稼ぐAI」にも例として記載されていましたが、GAN(Generative Adversarial Network)という技術があります。一例として、アイドル自動生成AIに応用されています。

 GANでは、ジェネレータとディスクリミネータという2つのAIモジュールを持っています。この2つのAIモジュールに顔画像を与えて、ジェネレータには、できるだけ実在しそうなアイドルの顔画像を生成するように学習させます。

 ディスクリミネータには、顔画像を、実在するアイドルのものなのか、ジェネレータが生成したものなのかを判断できるように学習させます。

 このようにすることで、ジェネレータは、より一層、実在しそうなアイドルの顔画像を生成するようになります。

 こんなような感じで、複数のAIモジュールを組み合わせて、互いに関連させることで、1つのAIモジュールではできない機能を実現することができるということです。

 一個のAIモジュールでは解決できない課題をもっている人、もう1個AIモジュールを使うと解決できませんか?

AI/機械学習の新しい適用分野

 2つ目は、AI/機械学習モジュールがいままで利用されていなかった分野に適用する案です。

 特許では技術分野をある程度意識して新規性や進歩性といった特許要件の判断がなされます。

 なので、これまであまりAIモジュールが活用されてこなかった分野でのAI/機械学習を利用する技術アイデアであれば、特許を狙える可能性があります。

 その場合には、学習データや結果として出力される情報が、ある程度、その技術分野ならではの特徴をもっていると、より一層特許を取りやすいと思います。逆に言うと、ただ単に、AI/機械学習を新しい分野に適用した、という程度では、特許をとるのは難しいかもしれないということです。

 では「学習データや結果として出力される情報」に、その技術分野ならではの特徴をもたせるのってどうやるか。それが以下の3つ目の提案です。

訓練データの工夫、訓練データを増やす、減らす、加工する

 3つ目は、AI/機械学習モジュールに学習させる訓練データを工夫する案です。

 工夫というのは、例えば、訓練データに手を加えて増やしたり、訓練データの一部を削除して減らしたり、訓練データを加工してから学習に用いるなどの方法がありえます。

 訓練データの工夫により、いままでよりも学習の効率をよくさせる、短時間で学習させる、学習しすぎ(過学習)によって学習モデルがおかしくなることを防ぐ、という効果がありえます。

 例えば、訓練データが少ないことが問題であるときには、もっている訓練データを少し変形したデータを追加することで増やすとか。これにより学習の精度を上げる効果を狙います。

 別の例としては、膨大な画像の訓練データが存在している場合で、同じような画像がたくさん含まれているときには、その画像の一部を削除することで、学習モデルの訓練データの数を減らすとか。これにより学習にかかる時間を削減する効果を狙う。

 あなたが取り組んでいる技術分野に当てはめてみて具体的に考えてみましょう。

AIが人間の仕事を奪うという話題

 ちなみに、AIが人間の仕事を奪って、人間の仕事がなくなるというような話題がちょくちょく出てきます。もしそうなったらまずいと思って危機感を持っている人も多いかもしれません。

 でも実際にAI/機械学習の技術の中身を知っている人は、あまり気にしていないのが現状だと思います。私も、当面そのような心配はいらないと思っています。

 その理由は、人間がやっている仕事で、そっくりそのままAIに置き換えられる仕事はまだ多くないから。人間てけっこう柔軟な判断をしながら仕事をしていて、それをAIに置き換えるというのはそんなに簡単ではないと思います。

人間と対話したり、人間の柔軟な判断が介在する仕事は、簡単にAIに置き換えられない

 例えば、人間と対話したり、人間の柔軟な判断が介在する仕事は、簡単にAIには置き換えられないです。音声認識技術、構文解析技術などの技術を組み合わせればできるという人もいるかもしれませんが、細かいところは無理だと思います。

 いまのところ人間の柔軟な判断の方がいい。

 いまのAIは、昔から比べればびっくりするような高い精度の結果を出すようになりましたが、まだ人間の補助的な役割といえそう。間違えることもありますし。

 でも、そっくりそのままAI/機械学習の処理に置き換えられる仕事も一部にはあると思います。例えば、決められたところにあるデータから、機械的に何かを判断して処理して、その結果を別に場所に保存する作業とか。

 こういう作業は、今の時点でも、人間がやる必要がない仕事と思われていると思います。こういう作業の仕事は、AIというか、コンピュータに置き換わっていくでしょうね。

今日のみどころ

 いまからでもAI/機械学習系の特許を狙うことはできるということと、AI/機械学習系の特許を狙う場合にどんな感じで進めるとよいかについての提案をしました。

 AI/機械学習系の特許の技術開発をしている人や、特許のネタを出さないといけない人の参考になれば幸いです。

 この記事を書くにあたり参考にした本と、その他参考になる本のリンクです。