【特許紹介】2つのモジュールを用いてユーザにパーソナライズした人工知能(AI)の特許発明(SELTECH)

 今回は、人工知能(AI)に関する特許を紹介します。今日も一緒に勉強しましょう!

 従来、人工知能(AI)モジュールが外部から不正アクセスされるという問題があります。

 この発明では、2つの人工知能モジュールを用いて不正アクセスに対する防御をするとともに、人工知能モジュールをユーザにパーソナライズします。



 ※特許の本の紹介。
 特許の申請(出願)をする技術者や研究者が知っておかないといけない特許の知識がわかりやすくまとめられている良著です。

人工知能(AI)モジュールが外部から不正アクセスされる問題

 さまざまな分野で人工知能(AI, Artificial Intelligence)が使われています。

 人工知能(AI)は、既存のデータに基づいて機械学習などの方法で学習をし、推論や判断を行うことができます。既存のデータは、外部から通信によって取得することになります。

 しかし、外部との通信可能にすると、不正アクセスがなされる可能性があり、不正アクセスに対する防御をする必要があります。

2つの人工知能(AI)モジュールを用いてユーザにパーソナライズする


 この発明のシステムでは、仮想化環境で2つの人工知能モジュールが動作します。また、CPUがメモリの特定の領域(保安領域)にアクセスできるモード(セキュアモード)と、その保安領域へのアクセスが禁止されるモード(ノーマルモード)で動作します(このような動作モードの管理は、例えばARM系のCPUではTrust Zone機能で実現されます。)

 そして、1つ目の人工知能モジュールは、ノーマルモードで動作していて、オープンな環境からのアクセスに対応します。1つ目の人工知能モジュールは、仮に乗っ取られたとしてもダメージが少ない情報を扱います。

 2つ目の人工知能モジュールは、セキュアモードで動作していて、1つ目の人工知能モジュールの動作を監視する機能を持っています。そのほか、2つ目の人工知能モジュールは、個人情報、お金に関する情報、暗号化に関する情報など、仮に乗っ取られるとダメージが大きい情報を扱います。

 このように2つの人工知能モジュールにより不正アクセスに対する防御をします。

 さらに、1つ目の人工知能モジュールが、ユーザに対する応答と失敗を判断し、ユーザに対する応答を成功に導くためのデータを自動収集してパーソナルデータベースを自動構築します。

 これにより、人工知能モジュールがユーザにパーソナライズされます。

 なお、「人工知能モジュール」は、機械学習モジュールとそれに関連する機能を含んでいます。機械学習モジュールとしては、決定木学習、各種ニューラルネットワークなど、さまざまなものが含まれます。

 特許第6329333号 株式会社SELTECH
 出願日:2018年1月17日 登録日:2018年4月27日

【課題】
 外部からの不正アクセスに対して防御する。
 (フレキシブルにパーソナライズが可能な人工知能モジュールを提供する)
【請求項1】
 オープンな環境における情報交換をアシストまたは自律的に行う機能を含む第1の人工知能モジュールと、
 前記第1の人工知能モジュールの動作をモニターし、前記情報交換に伴う処理をクローズドな環境で自律的に行う第2の人工知能モジュールとを有し、
 前記第1の人工知能モジュールは、ユーザーに対する応答の失敗と成功とを判断するユニットと、
 ユーザーに対する応答を成功に導くためのデータを前記オープンな環境から自動収集してパーソナルデータベースを自動構築するユニットとを含む、システム。

今日のみどころ

 仮想化技術と、CPUの実効環境の分離技術を使って2つの人工知能(AI)モジュールを動かします。

 いろいろな高度な技術が組み合わさってます。明細書には、この請求項に関する記載とともに、他の分野に適用した場合の内容も書かれていて、技術の名称などの専門用語がもりだくさんで、とても勉強になります。

 あと、分割出願を利用していることもあり、課題と請求項がいまひとつ対応していない感じがありますが、まあ、これでも特許になるんだということがわかります。