【特許紹介】食材片のサイズに応じた加熱調理時間をAIで推定する調理支援システムの特許発明(NTTデータ)を紹介

 今回は、調理を支援するシステムに関する発明を紹介します。今日も一緒に勉強しましょう。

 従来、レシピと異なるサイズにカットされた食材片の加熱調理時間を提示できない問題があります。

 この発明では、実際に調理者によってカットされた食材片のサイズに応じた加熱調理時間をAIで推定して提示します。これにより、レシピと異なるサイズにカットされた食材片の調理時間を提示できるようになります。



 ※特許の本の紹介。
 特許の申請(出願)をする技術者や研究者が知っておかないといけない特許の知識がわかりやすくまとめられている良著です。

レシピと異なるサイズにカットされた食材片の加熱調理時間を提示できない問題

 調理を支援する調理支援システムがあります。調理支援システムは、調理の工程や食材の量を含むレシピを提示して調理を支援します。

 例えば、対象人数に応じて食材の量を自動的に変更してくれるシステムがあります。

 しかし、従来のシステムでは、調理者が誤ってレシピと異なる大きさに食材をカットしてしまった場合、そのカットしたサイズの食材の加熱調理時間を提示することができないという問題があります。

実際に調理者によってカットされた食材片のサイズに応じた加熱調理時間をAIで推定


 この発明の調理支援システムは、調理者が誤ってレシピと異なる大きさに食材をカットしてしまった場合に、そのサイズに応じた加熱調理時間を提示します。

 まず、調理者によりカットされた食材片のサイズを特定します。具体的には、食材片とともに、大きさの基準となる物、例えば、調理者の人差し指を撮影した画像を取得して、食材片のサイズを特定します。

 次に、機械学習によって生成された識別モデルを適用して、いわゆるAIで、食材片のサイズを特定します。具体的には、画像の中の人差し指を識別モデルによって識別して、その人差し指と食材片のサイズを比較することで、食材片のサイズを特定します。

 次に、その食材片の最適な調理時間を推定します。このとき、食材片のサイズが基準より大きい場合には、基準の調理時間より長い時間が設定されます。

 このようにすることで、調理者が実際にカットした食材片の大きさに応じた調理時間を提示することができます。

 特許第6692960号 株式会社エヌ・ティ・ティ・データ
 出願日:2019年3月29日 登録日:2020年4月17日

【課題】
実際の調理の状況に応じて適切な調理時間を推定することを目的とする。
【請求項1】
 調理者により食材がカットされて生成された食材片のサイズを特定する第1特定部と、
 前記特定された食材片のサイズを入力として、機械学習により生成された推定モデルを用いて、前記食材片の最適な加熱調理時間を推定する推定部と、
 前記推定された加熱調理時間を前記調理者に通知する通知部と
 を備える調理支援システム。

今日のみどころ

 実際に調理者によってカットされた食材片のサイズに応じて加熱調理時間をAIで推定して提示してくれるシステムです。

 請求項1の記載を見てわかりますが、とてもとてもシンプル。これが特許になるんだなと感心してしまいます。拒絶理由通知もなかったようです。

 機械学習(AI)を用いる技術は、詳細を表現しにくい(表現できない)部分があるので、詳細な処理がない請求項になってしまうという特徴があります。これまで機械学習が使われていなかった分野の特許を狙う場合には、このようなシンプルな請求項でチャレンジするのもよさそうです。