【コラム】アプリやソフトをパクられないように守る法律6つを紹介

 みんながスマホを使うようになってきました。スマホのアプリを開発する会社や個人が増えています。

 アプリはみんなが作りやすいようにできていますが、その反面、アプリがパクられてしまう危険もあります。有名なアプリほど、パクられる危険も大きくなります。

 アプリやソフトをパクられないようにするにはどうすればいいんだろう。アプリの開発側の人はそう思いますよね。

 この記事をよむと、法律的な面からアプリのパクリをどのように防止できるかがわかります。

 私は特許事務所で勤務して丸8年、主に特許の実務をしていて、知財系の他の法律の知識もあります。仕事の中でクライアントのお悩み解決のお手伝いをしています。その中で役立った情報をシェアします。

 参考になる本も紹介します。



 ※特許の本の紹介。
 特許の申請(出願)をする技術者や研究者が知っておかないといけない特許の知識がわかりやすくまとめられている良著です。

法律でパクリから守る

 アイデアをパクリから守るための制度があります。特許や商標などの知的財産(知財)に関する法律です(*1)。

 この法律によって自分のアイデアに特許権などの権利が設定されると、他の人がそのアイデアを使うことができなってパクリを防止できます。

 いいかえると、他の人がそのアイデアをもった製品の製造、販売などの行為をした場合に、その行為をやめさせたり(差し止め請求)、過去の行為の分をお金で解決したり(損害賠償請求)することができます。

 この記事では、アプリがパクられないようにするために各法律がどんな面でアプリを保護するかを説明します。また、アプリで電子書籍などのコンテンツを扱う場合や、アプリのアイコンなどの保護についてもかんたんに説明します。

 まずは、各法律の目的などを説明します。

 *1:特許法は、正確には、産業財産権法というくくりの中の1つです。産業財産権法には、特許法、実用新案法、意匠法、商標法の4つが含まれています。また、知的財産権法というくくりもあって、この中に、著作権法、不正競争防止法などが含まれています。アプリのパクリを防止するのに使える法律は上記6つです。

特許法、実用新案法:技術的なアイデアである発明のパクリを防止

 あなたのアイデアに特許権が設定されていると、そのアイデアをもつアプリを他の人が製造したり、提供したりすると、特許権侵害になります。

 他の人は、あなたの特許権を侵害してしまうと、やめさせられたり、お金を払わされたりしてしまいます。なので、他の人は、あなたのアイデアに関する製品を製造したり販売したりしないようにします(*2)。

 実用新案権も同様です。

 *2:実際には特許権の侵害に該当しないと主張して争いになることも多いです。

意匠法:物品の形態などの外観デザインのパクリを防止

 あなたが考えた物品の形態などの外観デザインに意匠権が設定されていると、その外観デザインをもつ物品を他の人が製造したり提供したりすると意匠権侵害になります。また、画像も一定要件を満たせば外観デザインとして守られます。

 なので、他の人は、特許権の場合と同様の理由で、あなたの考えた外観デザインをもつ物品を製造したり販売したりしないようになります。

商標法:商品やサービスのマーク(商標)のパクリを防止

 あなたが使用している(または、今後に使用する)しるし又はマーク(商標)に商標権が設定されていると、そのマークを付けた商品を他の人が製造したり提供したりすると商標権侵害になります。

 なので、他の人は、特許権の場合と同様の理由で、製品にマークを付けたり、マークを付けた製品を販売したりしないようになります。

著作権法:音楽や美術など創作した表現(コンテンツ)のパクリを防止

 あなたが創作したコンテンツを他の人が公表したり複製したりすると著作権侵害になります。著作権の場合、出願又は申請といった手続きをせずに権利が発生します。

 他の人は、あなたが創作したコンテンツを公表したり複製したりしないようになります。

不正競争防止法:他人の不正な行為(パクリ)を防止

 不正競争防止法では、あなたが使用する商品等の表示や、商品の形状などの模倣をやめさせることができます。権利を設定せずに差止請求や損害賠償請求をします。

 具体的にどんな場合にどの法律を使えるか、以下でかんたんにまとめます。

アプリをパクらせないように保護できる法律はこれ

 アプリをパクらせないように保護できる法律は、特許法、実用新案法、意匠法、商標法、著作権法、不正競争防止法です。

 特許法と実用新案法は、アプリが実行する機能のパクリを防止できます。ここでいう機能というのは、アプリのプログラムで実現している機能のことで、例えば、操作の仕方、数値の計算、画像の加工、画面への表示などです。

 意匠法は、一定要件を満たす画像のパクリを防止できます。一定要件というのは、操作のための画像である等の要件が定められています。

 商標法は、マーク(商標)がアプリで無断で表示されたり、そのアプリの広告に表示されたりするのを防止できます。不正競争防止法でも、商品などの表示を保護できることがあります。

 著作権法は、アプリのプログラムコードのパクリを防止できます。また、アプリの中の音楽や表示画像のパクリを防止できます。

アプリのアイコンのパクリも防止

 アプリのアイコンは、著作権の対象としての創作物と認められれば、著作権法で保護されます。また、アプリのアイコンが、このアプリのマークとして使われる場合には、商標法と不正競争防止法でも保護されます(*2)。

*2:不正競争防止法では、商品形態としての保護と商品等表示の保護がありますが、商品等表示の保護を受けられます。

アプリのパクリの防止について参考になる本

 今回紹介したアプリのパクリの防止について参考になる本はこちら。

特許、実用新案、意匠、商標、著作権、不正競争防止法(つまり産業財産権法や知的財産権法)という複数の法域にわたって、どのような場合にどの権利が使えるかということが具体的に説明されています。このような本はあまり多くないので貴重です。

 今回紹介したアプリはこの本のほんの一部でして、他にも音楽や漫画のこと、パロディは認められるかといった話題も事例を交えて紹介されていて、とても勉強になります。

 あと、写真やイラスト、文章、プログラムなどのパクリを防止する著作権の部分を重点的に解説した本がこちら。

 なお、書籍が発行されてから時間がたつと制度が少しずつ変わっていきます。実際に争いに発展しそうな場合は、弁護士や弁理士などの専門家に相談するのがおすすめです。

今日のみどころ

 アプリのパクリを法律を利用して防止するための方法について紹介しました。

 けっこう難しい面もありますが、専門家に依頼するために少しは知っておきたい知識ではあります。

 本文中で登場した書籍のリンクを以下に貼っておきます。ご参考に。



吉川 達夫 (著), 飯田 浩司 (著), 森下 賢樹 (著) 中央経済社 (2004/12)