放送連携アプリをキャッシュに保存してアプリの起動を高速化する発明 NHK

 放送と通信とを連携して受信する受信装置でのアプリの実行速度低下の問題を解決する発明です。

 この発明の装置は、受信装置では、アプリが放送に連携しているか否かを示す情報に基づいて、アプリの保存先を変更します。これにより、装置上でアプリケーションを迅速に起動させることができます。

 特許第6043089号 日本放送協会
 出願日:2012年5月18日 登録日:2016年11月18日



 ※特許の本の紹介。
 特許の申請(出願)をする技術者や研究者が知っておかないといけない特許の知識がわかりやすくまとめられている良著です。

アプリの実行速度低下の問題

 放送と通信との連携に関する発明です。放送と通信とからデータを受信する受信装置(テレビやセットトップボックスなど)は、放送波でデジタル放送を受信するとともに、通信ネットワーク経由でアプリ(アプリケーション)をダウンロードして動作させます。
 
 アプリは、放送に連携して動作するアプリと、連携しないで動作するアプリとがあります。

 テレビなどが備えるハードディスクなどの記憶容量は一般にPCなどに比べて小さいので、アプリの実行速度が低下してしまうという問題があります。記憶容量を大きくしようとすれば製造コストが高くなってしまうという別の問題が生じます。

放送連携アプリをキャッシュに保存し、非連携アプリをHDDに保存する

 この発明の受信装置は、起動させるアプリが保存されるキャッシュ上の領域「アプリケーションキャッシュ」の他に、ネットワークから取得したアプリのプログラムを一時保存しておくHDD上の保存領域「アプリケーション記憶手段」をもっています。

 そして、放送に連携して動作するアプリを外部からダウンロードしたときには、アプリケーションキャッシュに保存します。アプリケーションキャッシュに保存されているアプリは、短時間で起動させることができます。

 また、放送に連携しないで動作するアプリは、外部からダウンロードしてアプリケーション記憶部に保存しておき、その所在アドレスを、アプリケーション記憶部を指すように書き換えておきます。そして、放送に連携しないで動作するアプリを起動させたいときには、アプリケーション記憶部からアプリのデータを取得してアプリケーションキャッシュに書き込んだ後に起動させます。このとき、アプリを外部から取得する必要がないので、短時間で起動させることができます。
 
 このようにして、放送と通信ネットワークとの両方から連携してデータを受信する受信装置でアプリの起動を速くすることができます。

【課題】
装置上でアプリケーションを迅速に起動させることのできる放送通信連携受信装置を提供する。
【請求項1】
 デジタル放送を受信すると共に当該装置上で動作するアプリケーションを通信ネットワークから取得する放送通信連携受信装置であって、
 前記アプリケーションを記憶するキャッシュと、
 前記アプリケーションを当該装置上で起動させるための情報であるアプリケーション起動情報を記憶するアプリケーション起動情報記憶手段と、
 前記アプリケーションのための前記アプリケーション起動情報に記載された所在アドレスから通信ネットワークを介して当該アプリケーションを取得するアプリケーション取得手段と、
 前記アプリケーション取得手段で取得したアプリケーションを前記キャッシュに書き込むキャッシュメモリ書込手段と、
 アプリケーションが前記キャッシュに格納されているか検索するキャッシュメモリ検索手段と、
 前記キャッシュにアプリケーションが格納されていないと判断した場合、前記アプリケーション取得手段を制御して当該アプリケーションを取得する蓄積情報判断手段と、
 前記アプリケーションを実行するアプリケーション実行手段と、
を備え、
 前記アプリケーション取得手段が外部からの操作に応じて当該装置上で動作するアプリケーションを取得した場合、当該操作に応じたアプリケーションを蓄積するアプリケーション記憶手段と、
 前記アプリケーション取得手段が前記操作に応じたアプリケーションを前記アプリケーション記憶手段に格納した場合、前記アプリケーション起動情報記憶手段に記憶されている該当するアプリケーション起動情報に記載された所在アドレスを前記アプリケーション記憶手段におけるメモリアドレスに書き換える所在アドレス書換手段と、
をさらに備え、
 前記アプリケーション取得手段は、前記デジタル放送の番組に連動したアプリケーションを取得した場合、当該番組に連動したアプリケーションを前記キャッシュメモリ書込手段を通じて前記キャッシュに書き込むことを特徴とする放送通信連携受信装置。

今日のみどころ

 放送とネットワークとの両方からデータを受信する受信装置のアプリの起動を速くする発明です。アプリが放送に連携するものか、そうでないかに応じてアプリの保存場所が変更されるのがポイントです。

 一般に記憶装置の記憶容量の大きさとアクセスの速さとは、トレードオフの関係になっています。なにかの処理の高速化などの検討をするときには、データの保存場所をキャッシュとHDDとのどちらにするのが適しているかを検討してみると、新たな発想が生まれるかもしれませんね。