2個のアンテナで送受信して取得した衝突率でチャネル変更する特許発明 NEC通信システム テレコグニックス

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 周囲の電波の状況に基づいて無線通信を行う際のパラメータを変更する無線通信機に関する発明です。

 この発明の無線通信機は、2個のアンテナを備えており、2個のアンテナにより実際に送受信するパケットから衝突率を導出し、無線通信のパラメータ(通信チャネル、パケットサイズ、又は、通信ルート)を変更します。これによりデータの伝送効率を向上させます。

 特許第5773423号(特開2013-5097) 日本電気通信システム株式会社 株式会社テレコグニックス
 出願日:2011年6月14日 登録日:2015年7月10日



 ※特許の本の紹介。
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通信しようとするチャネルの実際の干渉状況を事前に知るのは困難

 従来、実際に無線通信をする前に、通信チャネルの電波の干渉状況をスペアナ機能、又は、フレームキャプチャ機能等により取得する技術があります。しかし、上記の技術では、無線通信の電波を実際に送信及び受信するときの干渉状況を知ることができないという問題があります。

 つまり、通信をしようとしている通信チャネルにおける実際の通信品質を、通信をする前に知ることが困難であるという問題がありました。そのため、実際に通信を開始した後で、干渉の影響により通信品質が低い通信チャネルであることが判明することもあり得ます。

2個のアンテナにより実際に送受信するパケットから衝突率を導出

 この発明では、無線通信機が2個のアンテナを備えています。無線通信をする前に一方のアンテナによりテスト用のパケットの送信をし、そのテスト用のパケットを含む周囲の電波を他方のアンテナにより受信して、パケット衝突率を算出します。そして、このように実際にパケットを送受信して算出したパケット衝突率に基づいて無線通信を行う際のパラメータ(通信チャネル、パケットサイズ、又は、通信ルート)を変更します(請求項1)。

 これにより、実際の通信を開始する前に、テスト用パケットに対する外部からの干渉の影響を知ることができ、それに対処することによってデータの伝送効率を向上させることができます。また、干渉の状況を詳しく3つ(Good, PA, Gray)に分類し、異なる対処方法をとる点も特徴といえそうです。

 さらに、上記とは別に、テスト用パケットの送受信ではなく、データ通信パケットの送受信からパケット衝突率を算出すること発明も含まれています(請求項5)。

【課題】
他の通信との干渉を抑制し、データの伝送効率を向上させることを可能にした無線通信機、ネットワーク、無線通信方法、およびその方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを提供することを目的とする。
【請求項1】
複数のテスト用パケットを無線で送出するデータ送受信部と、
前記複数のテスト用パケットと同じ周波数チャネルで空間電波信号の電力をセンシングし、センシングした空間電波信号のサンプルデータを出力する信号センシング部と、
前記信号センシング部から出力されるサンプルデータを、該サンプルデータが時系列にプロットされたデータである時系列サンプルデータに変換する計算処理部と、
前記時系列サンプルデータに基づいて前記複数のテスト用パケットと他の通信との干渉によるパケット衝突があると判定すると、パケット衝突の回数と前記複数のテスト用パケットの送信数とからパケット衝突率を算出する衝突検出部と、
前記データ送受信部がデータ送信を行う際のパラメータを、前記衝突検出部の算出結果に基づいて調整する制御部と、
を有する無線通信機。

今日の見どころ

 従来、無線通信可能な通信チャネルの電波の状況をスペアナ機能、又は、フレームキャプチャ機能等により無線通信をする前に取得することで、無線通信をするチャネルを選択、決定する技術は存在すると思います。しかし、実際に無線通信をするときに生ずる干渉の影響を正確に見積もることは難しいようです。

 そこでテスト用パケットを実際に送信及び受信することで干渉の影響を取得し、さらに、詳しく分析して適切な対処をすることをポイントとしています。よく検討されていると思います。また、明細書内に処理の詳細な説明、実験データなども含められており、地道な研究がなされていることがうかがえます。