スイッチングハブを含むネットワークに接続された複数のWi-Fi AP(アクセスポイント)間での端末のローミングを適切に行うことができるアクセスポイントに関する発明です。
端末がアクセスポイントに接続すると、端末からの通信に依拠せずに(端末からの通信に無関係に)、端末のアドレスを送信元フィールドにセットした通信フレームをネットワーク(上流のハブ)に送信します。これにより、上流ハブの経路情報を更新させ、端末とネットワークとの通信を早期に可能にします。
特許第5803718号(特開2013-165372) サイレックス・テクノロジー株式会社
出願日:2012年2月10日 登録日:2015年9月11日
端末が通信フレームを送信するまでは、端末宛の通信フレームが端末に到達しない問題
スイッチングハブ(LANスイッチ)などのネットワーク機器は、通信フレームの宛先となっているポートだけにフレームを送信するために、各ポートと、当該ポートの先に接続されている機器の物理アドレスを対応付けたフォワーディングテーブルを保有しています。フォワーディングテーブルは、各ポートが受信する通信フレームにより自動的に学習されます。よって、端末が何らかの通信フレームを送信すればスイッチングハブのフォワーディングテーブルが自動的に更新される仕組みになっています。
しかし、端末がアクセスポイントに接続してから通信フレームを送信するまでの間には、フォワーディングテーブルの学習が行われません。そのため、ネットワーク側から端末を宛先として送信される通信フレームがスイッチングハブにより転送されず、端末に到達することができません。
端末が接続した新たなアクセスポイントが、端末の物理アドレスを有する偽装パケットをブロードキャスト
そこで、本発明では、複数のWi-Fiアクセスポイントのうち、端末がローミングにより接続した新たなアクセスポイントが、端末からの通信フレームがあるかないかに関わらず、偽装パケットをネットワークにブロードキャスト送信します。
偽装パケットとは、端末の物理アドレスを送信元フィールドにセットした通信フレームです。偽装パケットを受信したスイッチングハブは、受信した通信フレームの送信元アドレスに基づいてフォワーディングテーブルを更新します。
これにより、スイッチングハブは、当該端末を宛先とする通信フレームをこのアクセスポイントへ送信するようになり、その結果、端末に到達するようになります。
スイッチングハブおよびアクセスポイントを含むネットワーク環境において,利用システムの種類に関係なく,無線クライアントがローミングをしても,即座にこのローミングに対応した通信経路が反映されるよう動作するアクセスポイントおよびそのプログラムを提供する。
【請求項1】
無線クライアントとの通信が可能な無線インタフェースと,
有線ネットワーク機器との通信が可能な有線インタフェースと,
前記無線インタフェースと前記有線インタフェースとを接続し,一方が受信した通信を他方に転送するブリッジ手段と,を備える無線アクセスポイントであって,
無線クライアントが前記無線インタフェースを介して自身の管理下に接続したことを検出する無線クライアント接続検出手段と,
接続した無線クライアントの物理アドレスを取得するアドレス情報取得手段と,
取得した物理アドレスを送信元とし,前記無線インタフェースを介して受信する前記接続した無線クライアントからの通信に依拠しない通信パケットを生成する偽装通信パケット生成手段と,
前記有線インタフェースを介して,生成した偽装通信パケットを少なくともスイッチングハブを含む有線ネットワーク機器に向けて送信する偽装通信パケット送信手段と,
を備え,
前記偽装通信パケット生成手段が生成する偽装通信パケットは,偽装パケットである旨を示す所定の目印を含む,
ことを特徴とする無線アクセスポイント。
今日のみどころ
スイッチングハブを複数接続したネットワーク(有線LAN)は無線LANが普及する前から利用されており、上記の問題は、有線LANでも生じていたものと思います。ただし、一般に用いられるWindows搭載PC等の端末は、有線LANに接続するとARPパケットなどを送信することが多いので上記の問題は比較的短時間で解消することが多く、あまり重要視されていなかったのではないかと思います。
しかしながら、一般に用いられる端末とは異なる機器では、外部からの通信フレームを受信してはじめて外部への通信フレームを送信するような端末もあります。このような端末では、上記の問題が残ります。
一般に用いられる端末とは異なる機器で生ずる問題の解決方法は、前提が特殊である分、先行技術が少なく、特許をとりやすい可能性があります。特許をとることを重視する場合はこのアプローチも有効です。